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中国レストラン屋根崩落0829・ちょっと分析

2020-08-31 | 事故と事件
 先日当ブログでも取り上げた、8/29の中国のレストラン屋根の崩落事故だが、29名も死亡が確認と報じられている。
 この報では、同レストランが2階部分が造築されていたとして、増築部分を中心に調査しているなどとしている。

 ここで、先日のブログで動画から切り取った1枚の画像から、ちょっと分析してみたい。
 当職は建築の専門家ではないが、30年を超える主に自動車を中心とした工学の識見は一定保持している。

 まず、写真から明かなのは、屋根を支えている画像奥側の1階と2階の辺りで壁は、部材はコンクリート製だと見えるが、せん断されていて、その破断面はおおよそ45度程度の角度でスッパリ切れた様相を見せていることに気づくだろう。しかも、およそ日本の建物だと、垂直荷重を受ける柱もしくは壁は、地震による耐力を増すため、コンクリート内には多数の鉄筋を鋳込んであり、せん断面には鉄筋の破断が観察されるハズだが一切見られない。

 コンクリート部材というのは、乾燥固化すると強い圧縮荷重に耐えるが、引張には弱いことが知られており、多くの場合で鉄筋を鋳込んだ鉄筋コンクリートたる複合構造として成型され、地震も含め長い期間の耐性を保証している。つまり、鉄筋が欠落しているというのが1の欠陥だろう。

 2番目に疑われる欠陥だが、2階部分を造築したという部分に関わるのだが、コンクリートのコールドジョントの問題を考慮する必用があるだろう。コールドジョントとは、コンクリート打設を連続的に行った場合は問題ないが、完全硬化してから、その上に追加打設した場合、いわゆる層間密着の欠陥が表れ易いという問題だ。これは、多層塗りで仕上げるクルマの塗装でも、事後の塗膜のハガレとして表出する問題で、主にクリアーの層間密着不良など、経時変化で生じることを見ることは比較的多い。これは、被塗面の油分などもあり得るが、広面積にハガレが生じるのは、セッティングタイムの取り過ぎなど、施工の不手際だろう。

 3番目に疑われることとして応力集中の問題を検討する要があるだろう。応力集中とは、その構造物の断面形状の変化部位だとか、部材の比強度の急変部位に、集中的に応力が働くことで、そこを起点に破壊が進行する現象をいう。この応力集中がコンクリート断面に働いたとして、そこには亀裂が生じ、雨水が浸透するなどして、さらに強度を経時的に落としていくことが考えられるだろう。自動車など機械構造部分でも、反復繰り返し応力を受ける、断面変化の内側角など応力集中から生じる疲労破壊の事例が知られている。有名どころでは、横浜でふそうトラックの前輪が脱落して死傷事故を起こした大事件があった。これは、ホイール取り付けボルトが緩み折損したのでなく、ホイール取付の相手部位であるハブフランジ部が、疲労破壊で断裂したことにより生じたのだった。当時のふそうでは、該当ハブの市場での破壊が起きていることを知りながら、他部品との互換性を維持する(つまり改修費を少なくする)ために、ハブフランジの肉厚は増したものの、内側角に相当するすみRをより小さくしてしまい、さらに疲労限界を下げてしまうという失敗をしていたこともあったのだ。



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