私の思いと技術的覚え書き

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Fifth、Seventhとそれぞれbearing付けた名称で何を思い浮かべる?

2022-11-24 | コラム
Fifth、Seventhとそれぞれbearing付けた名称で何を思い浮かべる?
 表題のフィフス(5th)とセブンス(7th)は、5と7の英語読みだが、MTミッションのギヤ段でも、7thはあまりないだろうなどと思う方がいるかもしれない。ここでは、この数値を表す言葉※にベアリングを付しているので、5thベアリング、7thベアリングとした場合、何を思い浮かべるだろう?

 最近、こういう呼び方はあまりにも、そのこと自体が当然化してしまったので、あまり呼ばれなくなってしまった感があるが、クランクシャフトのメインベアリングの数を指しているのだ。ここで、ベアリングじゃなくて、メタルだろうと思う方もいるだろうが、ベアリングとは軸受けのことで、多くが思い浮かべる球とかローラーでなく、平メタル(もしくは昔言葉だと「滑り軸受け」)も含めてベアリングだ。

 ここで、4気筒エンジンなら、クランクシャフトの主メタル(親メタル数という方が通りがいいか)は、各気筒間にメタルを配置して5が最大値と判る。6気筒(L6)では、同じく、7が最大値の数と判る。

 そんなこと当たり前だろうと思う方もいると思うが、およそ1970年くらいまでの小型ガソリンエンジンでは、4気筒であれば3ベアリングというものが多かった。つまり、クランクシャフトの前後端部はそれぞれベアリングで支持するのは当然だが、3つ目は中央となる2番と3番の間に設置されて、12および34間はベアリングなしのエンジンが結構あったのだ。ちなみにトヨタ1600GT(RT55/1967発売)に搭載のエンジンは9R型だが、DOHCヘッドだが3ベアリングのクランク支持だったそうだ。私は9Rの実物は知らぬが、5R(OHV)とかで3ベアリングエンジンは触れてきた。

 さらにもっと前の時代、これは現物を日産ゲストホール(横浜/下記記載リンク)で見ているが、ダットサン初期のころの4気筒エンジンでは、2ベアリングというものだったことを知っている。

日産ゲストホールの記憶 2018-10-12
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/48d5179975e7e9f92
086b8020e9f7af0

 クランク支持の数は、多い方が良い訳だが、これもレシプロ内燃機関で吸入、圧縮、燃焼、排気というサイクルを繰り返すがため、クランクシャフトに受ける応力が絶えず変動することから生じるのだろう。これが、今でのモーターなら、大トルクを発生させるものでも、アーマチュア前後端部を支持する2ベアリングで済んでしまうのだろう。

 それと、クランクベアリングには、メタルが使用されるが、昔のホンダの旧車だとかで、ローラーベアリング(ニードルローラー)の方が高性能だと勘違いしている方がもしかしたらいるかもしれないと思い追記したい。昔の航空機エンジンは、日本軍のはほとんど空冷星型エンジンだったが、欧米にはダイムラーベンツとかロールスロイスとかで、水冷V12エンジン搭載機もあった。これらのエンジンには、ローラーベアリングも使用された様だ。このことは、その方が高性能だからしたのではなく、ベアリングの位置を決める構成部品(ブロックとかクランク)の加工精度の限界として、そうせざるを得なかったと理解している。

 これは、現在の主メタルのオイルクリアランスは、いかほどかを考えてみればある程度想定できると思える。現代車といっても、1970前後以降だが、オイルクリアランス(油隙間:クランクメタル内径とクランク側外形の寸法差は0.05mmというものだ。しかも、それが一つではなく、5ないし7ベアリングとして、相対位置の真直度(ライン)が高精度でないと、単に内径とか外形の寸法が公差内にあっても意味がない。この多数ベアリングのライン出しを可能にする工作技術には、それなりの工作機械が要求されることになる。

 また、このラインだが、エンジン稼働中の動的な変位を考慮する必要も生じて来る。つまり、レシプロエンジンでは、先にも記した通り、絶えずクランクシャフトは曲げとかねじりの応力を受けており、それに十分以上の剛性を持って支持しなければならないというところで、近年の高性能エンジンでは、半割のクラックベアリングキャップが、前から後ろまで連結されたラダー構成とか、ブロック本体が、クランク中心部で上下に分かれるロワブロック構成にして、ベアリング保持剛性を高めている。


 ついでに記すと、今やオーバーヒートとかオイル系のトラブルでエンジン焼き付きでエンジン総分解することは多くはないだろうが、オーバーヒートなどさせてヘッドガスケットが飛ぶという様な故障は多少はあるだろう。このオーバーヒートで、ヘッドガスケットが飛ぶというのは、ヘッドが熱歪することで、ヘッドボルトの軸力低下を起こし飛ぶのだ。この場合、ヘッド下面の歪量を計測し、歪量が限度を超えていれば、ヘッド面研なりの機械加工を行い、場合によって、オーバー厚のヘッドガスケットを使用する場合もあるのだろう。こういう事案では、ブロック上面の歪量を計測確認する要があると共に、ブロック下部のメインジャーナル(ベアリングのはまり込む部位)のラインの点検と不正であれば、ラインボーリングが必要になる。

※最近はこういう数値でバージョンというか世代を表すのにGen(おそらくGenerationの略語)を記したIT商品が目に付く。


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