ルポルタージュ・損害調査員 その3【運転者虚偽申告・26才未満不担保】
第3回目のルポルタージュだが、損害調査員(技術アジャスター)の業務を車両の損害額だけだと思っている方が一般人にも自整BP業の方にも多いので、正直私はこのことを「違う」と否定しているところだが、昨今は分業化がますます進んで当の技術アジャスターそのものが、そういう意識でいるからどう云うことだろうと思っているのだ。そんな中、先日もあるBP工場主と会話している中で、今後自整BP業も業務量も少なくなり大変だと云う話しから技術アジャスターの存在価値も問われる時代になるだろうという話しになったのだった。このことに異論はなく、現状の見積屋たる技術アジャスターも、AI見積だとか、そもそも事故数が減って来れば、必用数の要求は落ちるはずだ。現に外資系Net損保などは、専属の技術アジャスターなどは存在しなくて、高損害とか修理しないとか、全損だと化云う場合は、乗合アジャスターと呼んでいるが、どこの損保にも所属しないで、依頼があれば立会専門の業務を請け負う方々がいる。
そんな話しの中で、件のBP業経営者から、技術アジャスターがいなくなったら、「私らも困るなぁ」というつぶやきがあったのだが、正直私はこれには若干怒りを感じて聞き、「そんなことはあんたらに関係の話しだ」と返答したのだ。つまり、以下の意味で、私はBP業の言葉を理解したのだ。
該当BP業は技術アジャスターの将来を心底心配するなどと言う気持ちでなく、損保に自分らの思いを伝えるに際し、技術アジャスターなら一定のBP業の技術知識もあり、意見が伝え易いということだろうと理解したのだ。つまり、技術アジャスターという者に対する意識の根底に、BP業の知識がない一般ユーザーと同様に、知識のない損保職員に話しを伝える困難さを想像し、その言葉が出たと理解したのだ。結論を云えば、そのBP業は、技術アジャスターとそれなりに人間関係とか信頼関係もあるのだろうが、つまるところ技術アジャスターというものを単なる「御用聞き」程度に見ているということが感じられたと云うことだ。しかし、このBP業も、かなりまともな人物であり、気配りなども適切かつ論理的人物だと認識しているのだが、こういう具合にチラリと本音も出て来るのが人間というものだろう。おそらく、現代の技術アジャスターが、この話しを聞いても、私の様には受け取らないし、もし「御用聞き」と理解されたとしても、まあそんなものかもしれないと解釈するかもしれない。
さて、前置きが長くなったが、今回の本論に進めたいと思う。
技術アジャスターの業務は、アジャスター規則というもので一応規定されているのだが、別添資料のごとく「アジャスター規則」というのが日本損害保険協会で作成されている。その第3条に以下の記述がなされている。
第3条(アジャスターの種類および業務)
アジャスターは技術アジャスターおよび特殊車アジャスターの2種類とし、それぞれつぎの業務を行う。
(1)技術アジャスターは保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認ならびにそれらに付随する業務を行う。
(2)特殊車アジャスターは、アジャスター規則に関する細則(以下「細則」という。)に定める特殊車について前号の業務を行う。


ここで、1項の「事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認」とは、いわゆる整合性の確認と云われる業務で、さまざまなモラルリスク(道徳的な危険・虚偽保険請求など)を指しているのだが、そもそもこれをまっとうするには、こういう判り難い記述でなく、もっと端的に判り易い記述があったろうにという思いを持っている。
なお、ここには示談行為のことは一切記されていないが、これは非弁法の関係があり、そもそも論として当初は保険会社が示談行為に参加して良いのかという論議が彼の昔あったとされている。その時の結論は、保険金を支払うという当事者性があるので、まあ問題ないだろうという結論となったのだ。ただし、当時はアジャスターなどは、損害調査会社として子会社別法人だったこともあり、当事者性の点でも、日弁連などが抗議すれば問題を上げられるという恐れもあり、日弁連との一定の枠内において許容するという協定が結ばれたとのことだ。その内容の詳細を期す余裕はないが、簡単に記すと各損保支払い窓口(損害サービスセンターなど)では、顧問弁護士と顧問契約を行い、その顧問弁護士の指揮の下で、アジャスターが示談行為をするというあくまで形だけを作ったのだった。なお、損害額も確か35万円までという許容範囲があったのだった。しかし、この協定はあくまで日弁連が許容すると云うだけのもので、その他の一般国民とかが、告訴なりした場合は別の問題になり、そもそもそんな保冷判断をし協定までを結ぶ権利が日弁連にあるとは思えない。なお、近年、技術アジャスターは損調子会社を廃して、保険会社本体の所属になっている企業がほとんど(未だ損調子会社が残るのは東京海上日動とあいおいニッセイ同和の2社のみ)だ。
さて、案件の実際に入りたいが、これは私が損保調査員となって約2年程の時の事故だったと思い出す。事故は単純な軽度な追突事故で、契約者のファミリーカーが被害者の日産キャラバンに追突したという事故だった。記憶だが、日産キャラバンの損害額は、20万弱程度であったが、被害者男性は、事故当初よりあれもこれもと因果関係の希薄な損害までを主張する様な者だった。これは修理過程で、示談の話しを進める中で出て来たもので、一度面談しなきゃしょうがないなと被害者と面談を行うことになったのだった。
その様な示談としての会話の中で、被害者にしてみれば、契約者を虐めてやりたいと云う意識が根底にあった故だろうが、こういう聞き捨てならぬ発言を受けたのだった。「保険者さんよ、どうやら事故の届けは、加害者の奥さんの事故報告になっている様だが、事故したとき運転してたのは娘(19)だぜ」というのだ。その場は、そうですがと、大した反応を示すことなく辞去したのだった。
改めて本保険契約は契約者(母子家庭)である母親が契約者の26才未満未満不意担保契契約なのだが、契約者に対し、単刀直入に「被害者が娘さんが運転していたと云っているがと問い質す」と、そうなんですごめんなさいというのだった。通常なら、はいこれまよで、後はあなた弁護士でも雇ってあのウルサイ相手と示談しなさいとと突き放さなければならない。そもそも保険契約がない示談に介入すること自体が、保険会社として明かな法令違反となる。
しかし、この母子家庭を突き放し、あのウルサイ被害者男性との示談をさせるとなると、幾ら自己負担と云えども相当なことを云われ、ヘタすりゃ弁護士まで依頼することにでもなれば負担は大変だろうということが、脳裏に浮かんで来たのだった。
と云うことで、契約者には、「損害額が決まったら示談までを私が個人的に援助するから、確定した金額を修理工場に支払いなさいいいですね。そうしないと、相手と直接話すと、あれやこれやと難癖付けてきて、云われると通りにしていたら大変なことになる」と諭したのであった。と云うことで、被害者男性とは、なんやかんやいうもののすべて否定しつつ、修理費の内容だけを一部相手の意に沿う形で金額を確定し、修理費を支払うことで示談書を取り交わしたのであった。当然、会社には調査中に運転車の虚偽申告があって、年齢条件違反で免責としたとまでの報告しかしておらず、示談援助や修理費確定の報告もしていない。私のやった行為は、社の規則違反だし、法令違反でもあるが、この場合に「あなた運転手すり替えの重大な虚偽申告だ」と契約者を責めることはできなかったのだった。
#損害調査員ルポルタージュ #契約者すり替え(年齢条件違反) #法令違反の示談援助
第3回目のルポルタージュだが、損害調査員(技術アジャスター)の業務を車両の損害額だけだと思っている方が一般人にも自整BP業の方にも多いので、正直私はこのことを「違う」と否定しているところだが、昨今は分業化がますます進んで当の技術アジャスターそのものが、そういう意識でいるからどう云うことだろうと思っているのだ。そんな中、先日もあるBP工場主と会話している中で、今後自整BP業も業務量も少なくなり大変だと云う話しから技術アジャスターの存在価値も問われる時代になるだろうという話しになったのだった。このことに異論はなく、現状の見積屋たる技術アジャスターも、AI見積だとか、そもそも事故数が減って来れば、必用数の要求は落ちるはずだ。現に外資系Net損保などは、専属の技術アジャスターなどは存在しなくて、高損害とか修理しないとか、全損だと化云う場合は、乗合アジャスターと呼んでいるが、どこの損保にも所属しないで、依頼があれば立会専門の業務を請け負う方々がいる。
そんな話しの中で、件のBP業経営者から、技術アジャスターがいなくなったら、「私らも困るなぁ」というつぶやきがあったのだが、正直私はこれには若干怒りを感じて聞き、「そんなことはあんたらに関係の話しだ」と返答したのだ。つまり、以下の意味で、私はBP業の言葉を理解したのだ。
該当BP業は技術アジャスターの将来を心底心配するなどと言う気持ちでなく、損保に自分らの思いを伝えるに際し、技術アジャスターなら一定のBP業の技術知識もあり、意見が伝え易いということだろうと理解したのだ。つまり、技術アジャスターという者に対する意識の根底に、BP業の知識がない一般ユーザーと同様に、知識のない損保職員に話しを伝える困難さを想像し、その言葉が出たと理解したのだ。結論を云えば、そのBP業は、技術アジャスターとそれなりに人間関係とか信頼関係もあるのだろうが、つまるところ技術アジャスターというものを単なる「御用聞き」程度に見ているということが感じられたと云うことだ。しかし、このBP業も、かなりまともな人物であり、気配りなども適切かつ論理的人物だと認識しているのだが、こういう具合にチラリと本音も出て来るのが人間というものだろう。おそらく、現代の技術アジャスターが、この話しを聞いても、私の様には受け取らないし、もし「御用聞き」と理解されたとしても、まあそんなものかもしれないと解釈するかもしれない。
さて、前置きが長くなったが、今回の本論に進めたいと思う。
技術アジャスターの業務は、アジャスター規則というもので一応規定されているのだが、別添資料のごとく「アジャスター規則」というのが日本損害保険協会で作成されている。その第3条に以下の記述がなされている。
第3条(アジャスターの種類および業務)
アジャスターは技術アジャスターおよび特殊車アジャスターの2種類とし、それぞれつぎの業務を行う。
(1)技術アジャスターは保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認ならびにそれらに付随する業務を行う。
(2)特殊車アジャスターは、アジャスター規則に関する細則(以下「細則」という。)に定める特殊車について前号の業務を行う。


ここで、1項の「事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認」とは、いわゆる整合性の確認と云われる業務で、さまざまなモラルリスク(道徳的な危険・虚偽保険請求など)を指しているのだが、そもそもこれをまっとうするには、こういう判り難い記述でなく、もっと端的に判り易い記述があったろうにという思いを持っている。
なお、ここには示談行為のことは一切記されていないが、これは非弁法の関係があり、そもそも論として当初は保険会社が示談行為に参加して良いのかという論議が彼の昔あったとされている。その時の結論は、保険金を支払うという当事者性があるので、まあ問題ないだろうという結論となったのだ。ただし、当時はアジャスターなどは、損害調査会社として子会社別法人だったこともあり、当事者性の点でも、日弁連などが抗議すれば問題を上げられるという恐れもあり、日弁連との一定の枠内において許容するという協定が結ばれたとのことだ。その内容の詳細を期す余裕はないが、簡単に記すと各損保支払い窓口(損害サービスセンターなど)では、顧問弁護士と顧問契約を行い、その顧問弁護士の指揮の下で、アジャスターが示談行為をするというあくまで形だけを作ったのだった。なお、損害額も確か35万円までという許容範囲があったのだった。しかし、この協定はあくまで日弁連が許容すると云うだけのもので、その他の一般国民とかが、告訴なりした場合は別の問題になり、そもそもそんな保冷判断をし協定までを結ぶ権利が日弁連にあるとは思えない。なお、近年、技術アジャスターは損調子会社を廃して、保険会社本体の所属になっている企業がほとんど(未だ損調子会社が残るのは東京海上日動とあいおいニッセイ同和の2社のみ)だ。
さて、案件の実際に入りたいが、これは私が損保調査員となって約2年程の時の事故だったと思い出す。事故は単純な軽度な追突事故で、契約者のファミリーカーが被害者の日産キャラバンに追突したという事故だった。記憶だが、日産キャラバンの損害額は、20万弱程度であったが、被害者男性は、事故当初よりあれもこれもと因果関係の希薄な損害までを主張する様な者だった。これは修理過程で、示談の話しを進める中で出て来たもので、一度面談しなきゃしょうがないなと被害者と面談を行うことになったのだった。
その様な示談としての会話の中で、被害者にしてみれば、契約者を虐めてやりたいと云う意識が根底にあった故だろうが、こういう聞き捨てならぬ発言を受けたのだった。「保険者さんよ、どうやら事故の届けは、加害者の奥さんの事故報告になっている様だが、事故したとき運転してたのは娘(19)だぜ」というのだ。その場は、そうですがと、大した反応を示すことなく辞去したのだった。
改めて本保険契約は契約者(母子家庭)である母親が契約者の26才未満未満不意担保契契約なのだが、契約者に対し、単刀直入に「被害者が娘さんが運転していたと云っているがと問い質す」と、そうなんですごめんなさいというのだった。通常なら、はいこれまよで、後はあなた弁護士でも雇ってあのウルサイ相手と示談しなさいとと突き放さなければならない。そもそも保険契約がない示談に介入すること自体が、保険会社として明かな法令違反となる。
しかし、この母子家庭を突き放し、あのウルサイ被害者男性との示談をさせるとなると、幾ら自己負担と云えども相当なことを云われ、ヘタすりゃ弁護士まで依頼することにでもなれば負担は大変だろうということが、脳裏に浮かんで来たのだった。
と云うことで、契約者には、「損害額が決まったら示談までを私が個人的に援助するから、確定した金額を修理工場に支払いなさいいいですね。そうしないと、相手と直接話すと、あれやこれやと難癖付けてきて、云われると通りにしていたら大変なことになる」と諭したのであった。と云うことで、被害者男性とは、なんやかんやいうもののすべて否定しつつ、修理費の内容だけを一部相手の意に沿う形で金額を確定し、修理費を支払うことで示談書を取り交わしたのであった。当然、会社には調査中に運転車の虚偽申告があって、年齢条件違反で免責としたとまでの報告しかしておらず、示談援助や修理費確定の報告もしていない。私のやった行為は、社の規則違反だし、法令違反でもあるが、この場合に「あなた運転手すり替えの重大な虚偽申告だ」と契約者を責めることはできなかったのだった。
#損害調査員ルポルタージュ #契約者すり替え(年齢条件違反) #法令違反の示談援助