私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

R53クラッチ部品に感じること

2017-05-19 | BMWミニ
 過日記した、クラッチトラブルのR53ミニだが、注文した部品が配送された。改めて、クラッチ系の各部品を眺めつつ、感じることを記してみる。

 まずは、本件トラブルのレリーズベアリングだが、昔の整備屋としては、レリーズベアリング後方を支持するカラーは鋳鋼製が常識なのだが、このクルマ(最近は他車でも多かろう)はベアリングとカラーが一体で、カラーは樹脂製とされていることに気付く。これは、ガイドスリーブ(インプットシャフト外周でレリーズベアリング前後の動きをガイドする部品)との潤滑をオイルレスで長期間持たせたいという思考から来ているのだろう。もちろん、一体部品化してコストダウンを計りたいということもあるだろう。しかし、ベアリングがロックしかかり発熱すると樹脂はあっと云う間に溶損し、今回のトラブルに至った訳だろうということだ。つまり、クラッチ切りでベアリングの異音発生から、発熱してクラッチ切れなくなるまでの時間が、短命であるということだ。しかし、同じく半年程前になるが自ら体験したR50でのクラッチ切れずトラブルでは、ベアリングの異音を認識してから、切れなくなるまで約3日程の運転期間があった。その間、ベアリングの発音は高くなっていったのだ。

 それと、ガイドスリーブだが、結構厚板(1.6t程か)だが、プレス深絞り成型品と推察される。昔ではこういう芸当はできなかったとは思うものの、スリーブ前端付近に絞りシワが観察されることなど、動作に影響ないという判断の上のことであろうが、昔の鋳造+切削加工品の精度には及ばぬだろうと感じるところだ。

 もう一つ、レリーズベアリングのクラッチカバーのダイヤフラムフォークとの当たり面の仕上げ面荒さが、随分粗めと感じられる。ここは、ベアリングが正常な中においては、修動する必用はなく、ベアリングレース面の様な高精度な仕上げまでを行う必用はないだろうが、初期馴染み性やクラッチペダルを踏み込み課程におけるフィーリングなどに与える影響も大きかろうとも想像する。

 最後にレリーズフォークだが、今回新旧部品で、製法やサイズなどが異なり、明らかに強度アップされていることが伺える部品だ。旧品は、たぶん熱間鍛造品で、それを一部切削加工したもの。新品は、基本は同じく鍛造品だろうが、マシニングセンターで、ほぼ全面を切削加工したものであり、腕の幅など断面積を増しており、強度アップしている様子が伺える。このフォークとシャフトを固定するM10ボルトだが、トラブル車では折れていた(つまりボルトに剪断力が働いた)が、内部に折れ残ったボルト残部があり、フォークとシャフトのズレは極端に生じなかったと判じる。シャフトとフォークの切り離しは、折損ボルト穴をドリルドして残部除去して行った。フォーク及びシャフトも、ヘリサート加工など行うことも考えたが、クラッチ機構などの簡単に修理ができない部位では、何れにせよ信頼度が何よりも大事なこととして取替を行うこととした。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。