5年間で2300件の車両火災・その多くがランプバルブの取付関係
これは、拙人の過去ブログでも警鐘したことがあることだが、ヘッドライトやフォグライトの照度を上げようと、メーカー純正でなく、車外のHIDランプキットを組み込んだというものが多いことが容易に想像できることだ。
HID(もしくはキセノンライト)は、高圧放電によるアーク光を光源とするものだが、発光体たるバルブ(俗称でHID(もしくはキセノン)バーナーとも呼ぶ)がかなりの高温となることだ。従って、純正のHIDランプでは、光源至近にある反射鏡とかプロジェクターレンズが、通常のハロゲンライトでは樹脂製だが、HIDの場合は、金属素地にメッキ処理(これも塗装メッキでなく電気メッキ)とか、レンズもガラス製に替えられている。また、ヘッドランプ表面となるポリカーボネイト透明板との距離や、ランプ内空間の容積も考慮して連続点灯でも過度に昇温しない様な設計的考慮が行われている。さらに、ヘッドランプケース内の配線だが、純正ではメタル系の網被覆を持つ保護チューブを通して配線被覆(材質はPVC)の溶損とか劣化を防止しているのだが、純正でもHIDが出始めの頃の古いクルマでは、その辺りの保護が十分でなく、ランプケース内の配線被覆がボロボロになっている状態を知見することがある。
特に危険だなと意識するのは、純正フォグライト(ハロゲンバルブ)に無理やりHIDバルブを組み込んだ場合だろうと感じる。フォグライトそのものが、全樹脂製(レンズ、ケース、反射板など)であり、内部空間も狭い。そこに高温度になるHIDバルブを組み込めば、樹脂レンズや、樹脂反射板(メッキも大概において銀鏡塗装)に溶損炭化から発火に至る状態は容易に想定できるし、発火事故までは起こしていないものの、レンズ類に炭化の形跡が生じて曇っているなんて状態を知見している。
以下は、それら写真をNetから切り取ったものだが、こうやって火災が車両全体に燃え広がらずに鎮火した場合は、その発見も容易だが、車両全体が焼損する様な状態になると、その原因特定がかなり困難となる場合があることは、多数の火災事例を見てきて感じるとことだ。
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【5年間で約2300件】トヨタも車両火災に注意喚起! 多くはライト類交換時の取付方法に問題か
2021.10.19 くるまのニュース ライフ 加藤久美子
5年間で約2300件の車両火災、その理由は?
国土交通省「自動車の不具合による事故・火災情報」によると、2016年から2020年の5年間で自動車(乗用車、軽乗用車)の不具合による車両火災は約2300件(自動車メーカーなどが原因を調査した火災の件数)発生しています。
車両火災の原因として圧倒的に多いのが社外品のヘッドライトやフォグランプの「バルブ」(電球)の配線や取り付け不良だといいます。
では、どのような状況で車両火災が発生することが多いのでしょうか。
国土交通省のデータでは、車両火災の状況やその後の調査結果が公表されています。
車両火災の原因としては、外部要素やエンジン関連の不具合なども挙げられていますが、どの車種でも割合が高いのが社外品パーツに交換したことを要因とするものです。
具体的に社外品パーツが要因とされる例を挙げてみましょう。(自動車メーカーなどの調査に時間がかかるため、最新の情報が2020年12月となっています)
●トヨタ「プリウス」型式:DAA-ZVW41W 2ZR-5JM(2012年8月)※初度登録 以下同
・状況:駐車してから約5分後、エンジンルームから出火した。
・調査結果:焼損が著しい社外品HIDヘッドライトキットが確認されたことから、社外品HIDヘッドライトの不具合によるものと推定する。
●ホンダ「N-BOX」型式:JF1 S07A(2014年1月)
状況:一般道路を走行中、助手席側のボンネットとカウルトップの間から白煙が発生したため、路肩に停車したところ、白煙が出ていた場所から出火した。
調査結果:左ヘッドライトの社外品HIDバルブが何らかの要因により異常加熱したか、もしくは取付け部から脱落して周辺の樹脂部が発熱及び発火したものと推定する。
●日産「ノート」型式:E12 HR12DDR(2013年1月)
状況:走行中、前方を照らす光が暗くなり焦げ臭さを感じた後、左側前方から発煙し停車後に出火した。
調査結果:社外品のHIDバルブが何らかの原因で走行中に外れ、周りの可燃物(ブーツ類)に接触して出火・延焼したと推定する。
※ ※ ※
このように社外品パーツの取り付けや配線に問題があったことが原因として推定されている火災が多く見受けられます。
このような状況は、いつ頃から確認されていたのでしょうか。
調べてみると2011年6月に国交省自動車局から出された「自動車の不具合による事故・火災情報における車両火災に関する調査実施報告書」において「後付け電装品の不適切な取付けによる火災」としての実験結果が掲載されていました。
すでに10年以上前から社外品パーツの取り付け不良による火災が問題視されていたことが分かります。
この実験によると取り付けが不適切な場合、HIDバルブの表面が約540度から640度と高温になり発煙や火災を起こす危険性があることも指摘されています。
また、後付け電装品のハーネス配索が不適切であることも原因のひとつとしてあるようです。
ショートした火災の再現実験では、HIDフォグランプをヒューズなしでバッテリーターミナルに直接結線すると配線が車体のエッジや他の電装品のケースなどに接触・ショートした際、10秒も経たないうちにハーネスが過熱して火災発生に至ることが再現実験で確認出来ています。
これは、拙人の過去ブログでも警鐘したことがあることだが、ヘッドライトやフォグライトの照度を上げようと、メーカー純正でなく、車外のHIDランプキットを組み込んだというものが多いことが容易に想像できることだ。
HID(もしくはキセノンライト)は、高圧放電によるアーク光を光源とするものだが、発光体たるバルブ(俗称でHID(もしくはキセノン)バーナーとも呼ぶ)がかなりの高温となることだ。従って、純正のHIDランプでは、光源至近にある反射鏡とかプロジェクターレンズが、通常のハロゲンライトでは樹脂製だが、HIDの場合は、金属素地にメッキ処理(これも塗装メッキでなく電気メッキ)とか、レンズもガラス製に替えられている。また、ヘッドランプ表面となるポリカーボネイト透明板との距離や、ランプ内空間の容積も考慮して連続点灯でも過度に昇温しない様な設計的考慮が行われている。さらに、ヘッドランプケース内の配線だが、純正ではメタル系の網被覆を持つ保護チューブを通して配線被覆(材質はPVC)の溶損とか劣化を防止しているのだが、純正でもHIDが出始めの頃の古いクルマでは、その辺りの保護が十分でなく、ランプケース内の配線被覆がボロボロになっている状態を知見することがある。
特に危険だなと意識するのは、純正フォグライト(ハロゲンバルブ)に無理やりHIDバルブを組み込んだ場合だろうと感じる。フォグライトそのものが、全樹脂製(レンズ、ケース、反射板など)であり、内部空間も狭い。そこに高温度になるHIDバルブを組み込めば、樹脂レンズや、樹脂反射板(メッキも大概において銀鏡塗装)に溶損炭化から発火に至る状態は容易に想定できるし、発火事故までは起こしていないものの、レンズ類に炭化の形跡が生じて曇っているなんて状態を知見している。
以下は、それら写真をNetから切り取ったものだが、こうやって火災が車両全体に燃え広がらずに鎮火した場合は、その発見も容易だが、車両全体が焼損する様な状態になると、その原因特定がかなり困難となる場合があることは、多数の火災事例を見てきて感じるとことだ。
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【5年間で約2300件】トヨタも車両火災に注意喚起! 多くはライト類交換時の取付方法に問題か
2021.10.19 くるまのニュース ライフ 加藤久美子
5年間で約2300件の車両火災、その理由は?
国土交通省「自動車の不具合による事故・火災情報」によると、2016年から2020年の5年間で自動車(乗用車、軽乗用車)の不具合による車両火災は約2300件(自動車メーカーなどが原因を調査した火災の件数)発生しています。
車両火災の原因として圧倒的に多いのが社外品のヘッドライトやフォグランプの「バルブ」(電球)の配線や取り付け不良だといいます。
では、どのような状況で車両火災が発生することが多いのでしょうか。
国土交通省のデータでは、車両火災の状況やその後の調査結果が公表されています。
車両火災の原因としては、外部要素やエンジン関連の不具合なども挙げられていますが、どの車種でも割合が高いのが社外品パーツに交換したことを要因とするものです。
具体的に社外品パーツが要因とされる例を挙げてみましょう。(自動車メーカーなどの調査に時間がかかるため、最新の情報が2020年12月となっています)
●トヨタ「プリウス」型式:DAA-ZVW41W 2ZR-5JM(2012年8月)※初度登録 以下同
・状況:駐車してから約5分後、エンジンルームから出火した。
・調査結果:焼損が著しい社外品HIDヘッドライトキットが確認されたことから、社外品HIDヘッドライトの不具合によるものと推定する。
●ホンダ「N-BOX」型式:JF1 S07A(2014年1月)
状況:一般道路を走行中、助手席側のボンネットとカウルトップの間から白煙が発生したため、路肩に停車したところ、白煙が出ていた場所から出火した。
調査結果:左ヘッドライトの社外品HIDバルブが何らかの要因により異常加熱したか、もしくは取付け部から脱落して周辺の樹脂部が発熱及び発火したものと推定する。
●日産「ノート」型式:E12 HR12DDR(2013年1月)
状況:走行中、前方を照らす光が暗くなり焦げ臭さを感じた後、左側前方から発煙し停車後に出火した。
調査結果:社外品のHIDバルブが何らかの原因で走行中に外れ、周りの可燃物(ブーツ類)に接触して出火・延焼したと推定する。
※ ※ ※
このように社外品パーツの取り付けや配線に問題があったことが原因として推定されている火災が多く見受けられます。
このような状況は、いつ頃から確認されていたのでしょうか。
調べてみると2011年6月に国交省自動車局から出された「自動車の不具合による事故・火災情報における車両火災に関する調査実施報告書」において「後付け電装品の不適切な取付けによる火災」としての実験結果が掲載されていました。
すでに10年以上前から社外品パーツの取り付け不良による火災が問題視されていたことが分かります。
この実験によると取り付けが不適切な場合、HIDバルブの表面が約540度から640度と高温になり発煙や火災を起こす危険性があることも指摘されています。
また、後付け電装品のハーネス配索が不適切であることも原因のひとつとしてあるようです。
ショートした火災の再現実験では、HIDフォグランプをヒューズなしでバッテリーターミナルに直接結線すると配線が車体のエッジや他の電装品のケースなどに接触・ショートした際、10秒も経たないうちにハーネスが過熱して火災発生に至ることが再現実験で確認出来ています。