私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

不正事案の記録のこと

2020-02-09 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 拙人は遙かな昔、凡庸な保険調査員であったのだが、PC内にその昔研修用に作成した自らが体験した保険不正請求事案(これを保険業界用語ではモラルリスク(道徳的危険)と呼ぶ)の記録があったので、今での子供達の参考になればと紹介してみたい。
 しかし、拙人は保険業界を離れ既に10年を経て、現在の実態をそれ程知るところでもなく感心も薄れたが、偶に話しに聞く様子からは分業化が進んでいることが伺われ、この様なエキサイティングする体験も少なくなっているのかもしれない。だとすると、それはある意味、業の価値を低めてしまうことと思うと無念と感じるところでもある。
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2000/07/14
××損調課 ○○

1.契約車両の虚偽申告による対物免責 1997年
相手方と被害車両の入庫等の打合せ中、契約車両が異なることが暴露された。契約者は大型バスの運転手であるが、業務中の事故を(会社に事故を隠し)マイカーでの事故として報告した様子である。なお、上記発覚後間もなくして、代理店を通じ保険の請求を取り下げる旨の連絡を受けた。

2.契約運転者の虚偽申告による対物免責 1998年
 相手方と面談により示談折衝中、契約運転者が報告と異なることを相手が暴露した。契約では母親を契約者とする26才未満の年齢条件であるが、娘(21才)の発生させた事故のため虚偽申告を行ったもの。なお、相手方には無茶な新車入れ替え、その他の粗暴ともいえる要求言動があり、このまま放置すると契約者が多額の賠償金を負わされる恐れがあった。このため、当方にて示談援助(これは法令違反だが無償による人道的好意からであり許容の範囲と判断)を行い、確定した賠償金を契約者に支払わせた。

3.虚偽と推察される盗難事故による車両免責 1999年1月
 新規契約から約1ヶ月のベンツ(500SL:付保額910万)の盗難事故で、以下のような不審点が見られた。
・新規契約後の1ヶ月での発生。
・キーを付けたまま路上駐車しレンタルビデオを借りている最中の盗難との申告。
・リサーチ調査を行うが、契約者への面談聴取も行われていない等、極めてお粗末な内容であり、疑念は薄らぐものではなかった。
・契約者に面談聴取するが、人物印象等から疑念は更に強まった。
・車検証の名義と契約者は異なっており、契約者が正規所有者か疑問を生じること。また、車両を購入したとされる人物(中古車ブローカー)は、別件で警察に拘留中であった。
・警察への人物照会から契約者は暴力団構成員と判明した。
 以上のような疑わしさがある中、警察への照会等が功を奏し、約1ヶ月後に盗難されたとされる車両が山中にて発見されたとの報を受けた。なお、盗難中の損害について問うが、オーディオ関係が外されているとのことであるが、保険請求は取り下げる等と連絡を受けるに至った。

4.保険金詐取目的で故意によると推察される事故による車両および対物免責 1999年8月
 当事車双方を立ち会い調査し、損害は契約車全損(25万円)、相手車全損(100万円)で、双方車両同士の整合性はあるものの以下のような疑問点を生じた。
・駐車場内の事故として損傷程度が大きすぎること。
・相手車(ベンツ)は廃車処理(抹消登録)済みの車両であること。
・当事者双方間に人間関係が伺われること。
・契約者は共栄火災に来訪し車両含む保険契約(SAP)がなされていること。
・関係する修理工場について、他社から多数の疑義情報を入手したこと。
 以上から保険金詐取を目的として故意に衝突させた事故との確信を持つに至り、モラルリスク事故として契約者と対決し、保険金請求するのであれば更に深い調査を継続するとの意志を示した。この翌日、保険金請求を取り下げるとの連絡を受けた。

5.虚偽の事故報告による対物免責 2000年3月
 相手車の損害は140万円であるが、次のような疑問を生じた。
・駐車場内事故として損傷程度が大きいこと。
・契約車両と相手車の整合性として、決めてはないものの不自然であると判断された。
・契約者法人と相手方法人は別ではあるが、同一敷地を有する極めて深い関係である。
 以上の内容からモラルリスク事故として強い疑念を持つが、契約者はフリート契約でもあり慎重対応に留意しつつ支払い保留として推移させた。約1年を経過し相手車の修理費が既に入庫ディーラーに支払い済みであることを確認し免責処理とした。

6.対物事故で相手車が盗難車両であった件 2000年5月
 対物事故で調査を進める中、以下のような不審点が見られた。
・相手は事故後に被害車両を事故現場近くに置いて置き、カーステレオやナンバーを盗難された  と申告していた。
・相手人物は暴力団関係者である様子が伺えた。
・相手車損害は80万円以上と大きな事故であるのに警察への届け出がなされていない。この点  を契約者に聴取した所、事故直後に相手方より届けないでくれとの要請があったとのこと。
・契約者より報告のあった相手車の登録番号について、陸運事務所に登録証明を申請したが、未  登録の番号とのことであった。
 以上の内容より、現車の車体番号を他損保に契約照会を行い、三井海上社に自賠契約の存在を確認できた。登録番号は不明であったが、ユーザー名と車体番号を基に扱い代理店より聴取し、正規の登録番号も判明した。直ちに正規の所有者宅へ連絡聴取した所、本年2月に自宅にて盗難されていた事実が確認された。
 以上の事実関係から、正規の登録番号について登録証明を取り付け内容確認の後、御殿場警察署へ出向き、盗難車発見の事実と本件経緯等を届け出た。
 その後、正規の所有者に対しては、本件事故による損害に限定して修理費相当を賠償することで決着した。

7.虚偽の事故報告による対物免責 2000年6月
 対物事故で調査を進める中、以下の疑問を生じた。
・左クォータパネルの高さ60cmの部位にオレンジ色の付着色が、トランク上面の高さ90cmの  部位に青い付着色が観察された。
・牽引車をバックさせていて衝突させたとの申告であったが、契約車両に牽引フック等は装着さ  れていない他、相手車と一致するような損傷が存在しない。
・契約者に事故状況を聴取するが、荷物運搬用の代車が相手車との間にあり、これを介して衝突  したとの説明であったが、相手車トランク上面の青色付着に疑問を生じること。
・契約者の勤務先は運送会社であり、同社の4トントラックの荷台塗色は青色塗色で、シャシ廻りが光明丹色(橙赤色)であった。本件は業務トラックで衝突事故を発生させたものを、マイカーでの事故として虚偽報告したのではとの疑念を持つ。
 以上の内容から、モラルリスク事故として契約者と対決し、保険金請求するのであれば更に深い調査を継続するとの当方の意志を示した。この翌日、保険金請求を取り下げるとの連絡を受けた。

以上


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