私の思いと技術的覚え書き

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説得力に欠ける緊急事態宣言の論理的考察

2020-05-02 | コラム
 自粛生活で時間はたっぷりあるので、Net経由で様々な論評を見て過ごしている。そんな中、官営情報としては、正式には4日(月)に発表すると云うが、どうやら緊急事態宣言は5月末位を目処に延長する様子であることが伝えられている。

 この官営通達の緊急事態宣言(自粛80%)延長については、一部の民間オピニオンから、このままでは弱者民間企業が潰れ、生活困窮者や自殺者が増大し大変なことになり、自粛と再開の両立を目指すべきとの意見が上がっている。拙人もこの論に賛意を示す思いなのだが・・・。
 ここでは一部の有識者から聞こえて来た「実効再生産数」を発表しないまま、非論理的に決断を下すのはおかしいとの意見を取り上げ、感染学には素人ではあるが、実効再生産数の示す意味などを書き留めてみたい。

 実効再生産数とは、以下の「感染病のメカニズムと数理モデルの概要」に記した通りの数値だ。これが1以上であれば、まだまだ感染者は広がり続けることになる。1以下に至れば、反対に収束に向かうのは明らかだ。

 ここで、問題になるのは緊急事態宣言を下す際には、4月初めの実効再生産数は1.7と推定されると緊急事態宣言を宣言する論理値有力数値を示していた。しかし、その後この実効再生産数の継続的な変動はついぞ数値的根拠も示さず、今次の緊急事態宣言継続の決定がなされようとしている。
 なお、官営学者連は、具体的な数値は述べていないが、写真のグラフで変動状況を示しているが、グラフでは実効再生産数は3/25に2.0を示していたが、4/10では0.7と1を下回ってことを示しているが、そのことには緊急事態延長の根拠としてほとんど触れぬまま、安易に延長を下したと受け止めざるを得ない。

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感染病のメカニズムと数理モデルの概要
 今後の感染の行方を合理的に判断するためには、その基本を押さえておく必要がある。新型コロナに対する有効なワクチンが実用化される時期ははっきりしないため、現在のような生活は、今後1~2年は続くと覚悟しておいたほうがよい。だが、感染推移のメカニズムを知れば、われわれはどのような取り組みを進めていくことが有効なのかも見えてくる。

感染症を表す3つの変数
 基本的な数理モデルは、3つの変数となる。それは「基本再生産数」「実効再生産数」「集団免疫率」だ。

1.基本再生産数
 「ある感染者が、その感染症の免疫をまったくもたない人の集団に入ったとき、感染力を失うまでに平均で何人を直接感染させるか」を指す。
 新型コロナでは、1人の感染者は平均で直接1.4~2.5人を感染させると、WHO(世界保健機関)は暫定的に見ている(基本再生産数1.4~2.5)。これは8~10の水痘(水ぼうそう)や16~21の麻疹(はしか)と比べて低く、2~3のインフルエンザ並みと言える。
 注意すべきは、基本再生産数はわれわれが何も対策を取らなかった場合の数値であることだ。いってみれば、病原体の素の感染力を示す。

2.実効再生産数
 1に対して、手洗いやうがい、人々の接触削減といった対策が取られれば、1人の感染者が実際に直接感染させる人数が減るのは当然だ。こうした実際の再生産数のことを実効再生産数という。
 政府の専門家会議によると、今年3月下旬の東京都の実効再生産数は1.7と推計された。香港や英国の大学のチームによると、一足早く感染爆発を起こした欧米諸国の多くは3月中旬ごろ、実効再生産数が2~4程度だった。
 実効再生産数が基本再生産数を上回る状況は、計測上の誤差のほか、集団感染のような感染拡大を加速させる要因があったものと考えられる。
 実効再生産数で重要なのは、それが1を下回るかどうかだ。なぜなら、1人の感染者から実際に直接感染する人が1人未満となれば、それは新規感染者数が減ることを意味するからだ。言い換えれば、「新規感染者数が減少に転じる」というのは、「実効再生産数が1を下回ったとき」のことを指す。

3.集団免疫率
 接触削減などの対策のほかに、実はもう一つ、実効再生産数を低下させることのできるものがある。それは、集団免疫だ。
 人間は感染から回復した後、免疫を獲得する。それによって、その病原体によって再度発症することはまれになる(病原体によって、免疫の強弱、効力の期間などに違いはある)。感染拡大が進むということは、この免疫をもつ既感染者が増えることを意味する。
集団の中に既感染者がいると、彼らは未感染者にとって盾の役割を果たし、未感染者と感染者が接触する機会を減少させることになる。そのため、既感染者の増加とともに、実効再生産数は自然と低下していくことが経験上知られている。こうした既感染者による未感染者の保護効果のことを集団免疫と呼ぶ。
 ここでも重要なのは、実効再生産数が1未満になるかどうかである。集団における既感染者の比率が高まれば高まるほど、実効再生産数は低下していき、最終的にはゼロ(新規感染ゼロ)になる。そして、実効再生産数が1に到達するときの集団における既感染者の比率のことを集団免疫率と呼ぶ。
 集団免疫率は、集団免疫の効果を除いた当初の実効再生産数に応じて数値が異なってくる。実効再生産数がいくつであっても、集団免疫による数値の低下は同じように起こるが、もともとの実効再生産数が小さければ小さいほど(つまり1に近い)、早く1に到達するのは自明だろう。そのため、実効再生産数が小さいほど、集団免疫率は小さくて済む。
 例えば実効再生産数が2.5の場合、集団免疫率は60%だ。1.7の場合は41%、1.1では9%となる。専門家などが「新型コロナでは、人口の6~7割が感染するまで感染拡大は終わらない」と話すのも、集団免疫率が根拠となっている。新型コロナの基本再生産数を2.5と想定し、何も対策を取らない場合(基本再生産数=実効再生産数)に集団免疫率は60%になるからだ。
 厳密にいうと、集団免疫率に到達しても、すぐに新規感染者はゼロにならない。実効再生産数は1からゼロにジャンプするわけではなく、徐々に低下するからだ。このため、基本再生産数2.5において、新規感染がゼロになるまでの既感染者数の集団人口比は、集団免疫率を上回る70%強になる。

出典
「新型コロナ感染長期化」という確実な将来 3つのデータが教える私たちのとるべき対策
2020年5月1日(金)18時15分 東洋経済オンラインからの転載
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/3-198.php


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