私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

コンピューター見積論

2020-02-13 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 今でも、整備および板金用のコンピューター見積システムの販売社の常套句で、「誰でも簡単に見積作成ができる」かの様な宣伝文句がある訳ですが、大きな嘘を含んだ過剰宣伝であると信じています。

 このことを思い出すのは、既に15年位も前のことでしょうが。拙人があるヘナチョコ損保の調査員幹部会議に出席した時のことを記してみます。その際、そのちょっと以前に代表に就任した、頭の相当悪い者は、私ら指導層是認に向かい以下の如き発言行い、皆を(少なくとも拙人はとんでもない発言と感じ)驚かせた訳です。

 「諸君、今や見積は女子供でもできるコンピューターによりできる時代になったのだ。だから、諸君は見積なんて小さなことに傾注せず、もっと大きなことに取り組んでもらいたい。」

 上記の様な趣旨の発言を受けたのだが、コンピューター見積が何ら見積能力のない者でもできる訳がなかろうと知るのは、これを見ている方なら判るだろう。

・そもそも、個別部品を取替なのか修理(板金)なのかコンピューターに判断できるのか? できる訳ないだろう。
・ある作業を想定して、それに際する付帯、付随、関連作業の判断をコンピューターが行えるのか? できる訳なかろうに・・・。

 自動運転(当時はそんな夢はほとんど語られなかった時代ですが過大なAIという夢はあった)じゃ鳴けど、将来技術が進めば、一定の損傷写真と共に、車両の基礎データを認識すれば、総てオートマチックに見積作成ができるシステムができる予知はあるだろう。しかし、果たしてそれが、何処まで妥当性を確保できるか疑わしい問題だと思っている。何れにしても、15年前の時点(現在でも変わらないが)で、とんでもない思い違いをしていると、直ちに発言を求め、そのアホ代表者の発言を全否定すると共に、ちょっとは見積という思考の勉強をしてから話しをしろよと皮肉も交えて非難した覚えがあるのだが・・・。こういう性格だから、所詮のところ、サラリーマンとしては生きられない性質であるのは認識しているのだが、正しくないことを聞いて、黙していることなど、死ぬまでできない性格であろう。

付記
 自動車板金用コンピューター見積システムとは、コンピューターの発展と共に各種作られてきた。その歴史を紐解けば、そもそもマイクロプロセッサーなど普及しない時代、つまり大型コンピューターしかない時代に、TSS(タイムシェアリングシステム)として、各端末は時分割で極短時間に分割した各種プログラムを走らせる時代から、見積システムはあったのだ。これを実現したのが、ドイツ(当時は西ドイツ)アウダテックス社の見積システムだったのだろう。当時の東京海上を基幹とする損保護送船団は、この独アウダテックス社のシステムをライセンス導入すると共に、日本アウダテックス社を設立したのであった。(自研センター設立と同様だ。)

 当時の見積は、ワークシートという対応車種別の部品コードを示した表があり、4桁の部品コードと、それを脱着、取替、修理と選択することで、それら部品代や工賃の積算表がプリントアウトできるものとして構成されていた。このプログラムコードは、コボル(推定)などの言語で記述され、そのプログラムコードと別テーブルとして、部品価格DBと指数(もしくは工数)DBが記録された磁気テープを導入損保では、コンピューターセンターの大型コンピューターに乗せ走らせることで、個別店の端末で見積作成作業ができるというものだった。

 そして程なくして、クイックという名称で、マイクロプロセッサを使用した専用見積機が販売され使用され始めた。この専用見積機では、部品価格や工数DBは、カセットテープでの磁気テープに記録され、可搬型としてプリンター(カーボン複写に対応したワイヤードットプリンタ)まで内蔵し、出先での見積作成ができる様な時代となったのだった。

 その後は、パソコンの普及と共に、アプリとしてシステムを搭載し、部品価および工数DB等は、全車種がDVDに記録され運用できる時代になって現在に至っている。

 ところで、数年前に日本アウダテックス社は社名をコグニビジョンと云う名に改称している。この改称が何故行われたのか門外漢には知るところでない。しかし拙人が想像するところでは、独アウダテックス(audatex)社も既に米テキサスに本社を置くソレラホールディングス(solera)グループ傘下の一企業として買収されており、この辺りがアウダテックスとの関係を薄め、社名変更の要因になったと思える。

 しかし、思うのはこれらコンピューターシステムの技術革新は激しいし、扱う企業の栄華清秋も著しいものがあると感じる。かつて、事故車見積や整備用見積として業界最大シェアを持っていたのは、翼システムというところが扱っていた「スーパーフロントマン」というシステムだった。それが翼システム経営者の(確か尾上某)が、巨額脱税で逮捕されると共に潰れてしまったこともある。その後、事故車見積システムについては、それ以前は損保関係調査員だけが使用していたものが、DRPの推進の動きなどとも相まって、車体整備工場だとか、ディーラー系見積システムにも統合搭載される動きとなって、事故車見積システムの現状としては、現コグニのシステムが最大シェアに至ったというのが近年の推移だろう。

付記2(コグニセブン(旧名アウダセブン)見積の注意点)
①この見積で注意すべきは、工数として一部メーカーとの同意を受けただけで、総ての修理および板金工場の承認を受けた訳ない指数を自動計上している訳だが、この指数には、数々の不透明さがあり、無条件に総てを受け入れることは疑問を感じる。

②コグニセブンでは、指数策定されていない作業についても暫定工数が、ほとんど検証されておらず一部の意見だけで勝手に決められた暫定工数が計上される場合がある。これらについては、その妥当性だとか実情に合っているかを十分吟味する必用があるだろう。

③塗装関係の材料費
 この30年、指数対応単価(いわゆるレバーレートに相当)は、デフレだとか物価がほとんど上昇していないことを理由として、据え置かれたままである。それを良しとしても、石油を素材とする各種塗料および関連材料については、水性化への動きも相まって、桁違いに上昇しているという現状がある。しかるに、コグニ見積システムでは、指数で算出された値に、適宜設定できる材料単価を率として乗じて材料代として計上するに過ぎないというものなのだ、従って、材料代の妥当性については、個別工場毎に十分吟味する必用があるだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。