現代のトンネル掘削に欠かせない機械として、シールドマシンがあります。トンネル内径を持った大型円筒形で、先端のカッタービットという回転する切り刃で掘り進みます。シールドマシン後部では、セグメントという扇形のコンクリート(鉄骨補強のコンポジットパーツ)をボルトで接合して、トンネルを作って行きます。正に、シールドマシンとは、トンネル製造用の大型工作機械であり、その内部は製造工場と云った感じです。
最近のCNC系の工作機械は、被加工物を回転させて削る旋盤から、被加工物を固定させ、バイトやドリル等の切削工具を自動で交換しつつ、3軸以上の動作が同時にできるもの(マシニングセンタと呼ばれる)が増えています。
ところで、最新型軍用潜水艦のスクリューの形状は、非公開で一般の方は見る機会がありません。ちょっと昔になりますが、私の住む地に近いある工作機械メーカーが、ソ連(当時)に、3軸制御の切削マシンを販売したとして、ココム(対共産圏輸出規制)違反として問題になったことがありました。つまり、最新型潜水艦のスクリュー形状が成形できてしまうと問題にされたのでした。
何れにしても、シールドマシンにしてもマシニングセンタにしても、高精度な最先端の工作機械は、今や我が国が世界の最先端を走っていることは間違いのないことと感じます。これからは、この優秀な機械群と新しいを発想力を持って、世界に役立つ何を作れるかがもっと大切になって行くのではないでしょうか。
ところで、添付写真は東京湾横断トンネルで使用されたシールドマシン先端のカッタービットです。これが円盤状の回転部分に多数装着されて、掘り進む訳です。当然カッタービットの刃部分は摩耗して行きますから、摩耗限度に至れば交換しますが、なるべく摩耗を防ぐ硬い素材が使用されます。
展示物の説明では、ビットの基材部はビット歯を保持し回転部分に固定するためのものです。それでも、この部位の材質は、ニッケル・クロム・マンガン鋼だと云いますから、かなり強度の高い高級鋼です。クルマで云えば、デフのリングギヤとドライブピニオン当たりの材質です。
ビットの歯先(中央部が出っ張る様に傾斜した部分)がチップと呼ばれる刃の本体部分です。ここは、超硬素材が使用されますが、炭化タングステンとコバルトの粉末を焼き固めた焼結合金が使用されています。焼結合金とは、ここまでの材質かどうかしりませんが、エンジン内部のバルブシート(排気側)等に使用される例があることを聞いています。
なお、基材とチップの接合ですが、写真で見る溶接跡がそうだと思ってしまいますが、異種金属が溶接(ウェルディング)できる訳がありません。溶接跡は、少しでも摩耗を防ぐための硬化肉盛りのためだそうです。それでも、溶接棒にクロム、タングステン、マンガン、ホウ素(ボロン)を含んでいる硬度の高い溶接部分となる様です。
では、基材とチップの接合はどうやっているのかですが、銀ロウ付け(ブレージング)なんだそうです。ロウ付けなんかでよく持つなとも思いますが、接着剤と同様ですが接合面積が広く、問題はないのだと思います。