私の思いと技術的覚え書き

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マイクロバスのFrガラス取替風景

2019-07-11 | 技術系情報
 従前、飛び石損傷での補修事例の紹介をしていますが、今回は飛び石損傷からガラス取替となった事例として紹介してみます。

 今回の飛び石損傷は、飛び石が合わせガラスの中間膜(PVC)まで達したのでしょう、内部の気泡は1円玉弱の大きさになっています。これの補修もできないことはありませんが、あまりにもドライバーの正面位置に近く、これでは補修しても補修痕が目立ちすぎ、よろしくないとガラス取替が妥当だろうという結論からなのです。

 ガラス補修の原理としては、極細径ドリルにより飛び石損傷部位の中間膜外側ガラスに穴を空け、そこから真空ポンプで水分やゴミを吸い取り、そこにレジン(樹脂液)を浸透させ、割れ部位の空洞を充填させ、割れを目立たなくするというものです。ただし、飛び石により損傷具合にもよるでしょうが、正面見(正対視)では、ほとんど判らなくなっても、透かし見(斜め視)では、結構補修痕が判ってしまうということがあります。これは、ガラスと、注入したレジンの光の屈折率が異なることによるものだと聞きます。また、ガラス中間膜の気泡部位はレジン充填で目立たなくなり、レジンの硬化により事後の割れの拡大も防止できますが、飛び石によるガラス表面のクレーター状の欠けについては直せません。そんなことも考慮し、今回はガラス取替止むなしとのことで施工することにしました。

 該当車のガラス取り付け方法はウェザーストリップ式(下記参考参照)ですので、予めウェザーストリップゴムのリップ溝部に細ロープを嵌め込んでおき、一人か外部からガラスを押さえ、もう一人が室内側からロープを引き込むことで、同時にウエザーのリップをボデーフランジの内側に引き入れるという作業で行います。このとき、ガラス全体の位置の具合を見ながら、下側だけを一方的に引き込むのではなく、ガラスが上へ逃げる様子があれば、上を引き込むなどの操作を要領良く行い完成となりました。

※参考までに
 フロントやリヤの固定式ガラスの取り付け方法は、ウェザーストリップ方式(はめ込み式)とボンディング方式(接着式)の2種があります。歴史的な流れとしては、旧来はウェザーストリップ式が当然だったのですが、新たな取り付け方法として、ボンディング式が開発されたという流れとなります。そして、既に相当以前から乗用車では、ほぼ接着式が大多数となっています。これは、自動生産ラインに馴染む方式ということからでしょう。つまり、予めのボデー側もしくはガラス側への接着剤の盛り付け塗布も、真空ポンプを利用した吸盤でのガラスの保持、移動、取付までも、総てロボットで自動化しているのが、現代乗用車の極当たり前の行程となります。

 その他、接着式は、ボデー外板との段差を小さくできることから、風切り音とか静粛性で優位にあるとか、ガラスが面がバルクヘッド状の梁となることから、ボデー剛性(主に捻り)が上がるとかの利点があります。ただし、欠点として、事故でガラスに直接ものが当たらなくても、ボデーの変形でガラスが割れ易いとか、ガラスの接着材の切断に慣れもあるでしょうが手間取ることや、別途に専用接着材が必要になることなどがあるでしょう。

 それと、今回施工をお願いしたガラス屋さんとお話ししていて、新たに知ったことを紹介してみます。それは、接着ガラスの場合、ガラスの位置決めを、従来はガラス下部にベース樹脂ブロックを左右2ケ設置して行って行っていたのですが、昨今はガラス上部2ヶ所にピン突き出たシートをガラスの定位置(マーキングがあるそうです)に両面テープで貼り、ボデー側の該当部の穴に引っ掛けることで位置決めを行うクルマが増えているそうです。これは、接着式で、従来ガラスとボデーの隙間を隠すモールディングが廃されたこととも無縁ではないのでしょう。







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