私の思いと技術的覚え書き

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猫に小判のOBDスキャンテスター(スキャンテスターと車両修理書)

2021-12-22 | 車両修理関連
猫に小判のOBDスキャンテスター(スキャンテスターと車両修理書)
 つい先日のこと、トヨタ・ノアの事故車修理に伴い、リヤクスルAssyを移植したBP工場より、ABSランプが点灯してしまったとの連絡を受けた。該当BP工場は、近くのディーラーへ車両を持ち込み相談したが、年末超多忙のため、年内は見ることができないと断られたとのことであった。

 そんな経緯の相談を受け、リアアクスルを切り離し交換して、正常にブレーキのエア抜きまで完了したと云うことだから、たぶんリヤのスピードセンサー(左右ホイールのハブ付近に付く)の配線が異常になされていないのかと問えば、確かに確実に配線は接続したと云い切るのだ。それじゃ、スキャンテスターを持ってる懇意な工場知らないかという話しを持ちかけ、一緒に私はまったく付き合いのないまあまあの業容の指定整備工場へ一緒に付き合ったのだった。そこで、名も知らない兄ちゃんがOBDスキャンテスターを接続して、慣れない手つきで診断をしているのを助手席で眺めていたが、端的に云って、ダメだコリャの典型例と思うので触れておきたい。

 まず、ABSランプが点灯しているということは聞いていた様だが、何の作業をやったのかも聞いちゃいないし、システムチェック全項目を始めている様だ。診断結果が出るまでえら長い時間を要するので、「こんに時間がかかるのかい?」と問えば、ブレーキのランプが点灯しているとしか聞いてないからとかなんとか云っているが、そもそも顧客からの問診が不足している。

 そして、やっとABSの異常が表示されたのだろう、私にと云うというより独り言の様に「センサー(スピードセンサー)かユニット(コンピューターのことだろう)の何れかが原因ですね」と云うだけで、その兄ちゃんの診断は終わってしまった。

 これを見ていた私は、このアホに意見して、知らない工場や工員の恨みを買ってもどうかなと思い黙っていたが、センサーは左右後輪に付くのだが、そのカ所は左右どちらなのか両方なのか、そして、走行中でなく停止状態で異状ランプが付いていることは、センサー不良でパルス出力不良はありえず、センサーがショートかオープンかの何れしかないことぐらい想像できない知力の低さに驚いた。まったく、猫に小判とはこのことで、幾ら高価なテスターを与えても、論理的な思考ができない者は、力仕事に精を出してもらうしかなさそうだ。


 その帰路、件の整備士を「あいつはアホだ」という私の直言もあったのだろうが、ちょっと離れた良く板金仕事を受けている整備工場に行って同様にスキャンテスターで見てもらった話しを後刻聞いた。しかし、アースがオカシイとか云っていると、また意味不明のことを告げてくる。

 現車の取替済みのリアアクスルのホイールセンサーを観察してみると、ホイールハブの最内側にパルスセンサーを持つ様で、コイツを交換する様だと結構な手間を要することと、スピードセンサーとメインハーネスの間に長さ1m弱のサブハーネス(つまり中間コネクタ)があることを知った。おかしいな、現代車では信頼性を上げるため、この様なサブハーネスを使うことはあまりないのだが、該当車の組立上の都合もあるのかなどと思案していた。


 そんな思案をしながら、まあ他人のことだから、私がPコード以外も対応する汎用スキャンテスターを保有していれば見てあげられるのだが、そうもできない中で静観していたが、翌日直ったと喜びの電話報告があった。原因はと問えば、サブハーネスのセンサー側は装着されていたのだが、室内に入ったところでコネクティングされる部位が、片側が未接続であったというお粗末な結果だった。ABSランプは消灯したが、以前の異常DTCコードは記録されているが、大勢に影響はないことを告げて本件は一貫落着となった。

 しかし、再度繰り返すが、センサーのチェックには、この様な回転信号を検出するものであれば、回転時に正常なパルスが出ないというトラブルもあるが、そもそも静止状態で異常が継続している場合に、センサーのショート(0Ω)とオープン(∞Ω)をチェックする診断手順はOBDスキャナにも当然備わっている(実際は抵抗計測している訳でなく、センサー抵抗値に対する電圧の異常を検出している)し、もしスキャナがなくても診断手順として当然考えるべきとことだろうし、このことはメーカー修理書でも記されている。

 なお、ABSが早くから装備されたバスやトレーラー車などについて補足しておくが、ABS装着の法的規制が乗用車より先行したのは、その効果が車両の安全性と、その乗員数に対する危険だとか、車体重量(積み荷含む)が巨大で大きな物理的破壊力を有するためだ。

 そのバストラのABSは、一般的な乗用車ではキーオンでしばらくの時間(イニシャルチェック:約3秒)でABS警告灯は消えるものが多いが、バストラでは走り出さないと消えない場合がある。これは、一般的な乗用車のイニシャルチェックが、センサーのショートかオープンだけを検出して、警告灯を消しているのに対し、走り出さないと消えないバストラは、センサーのパルス信号が出ているか出ていないかまでのチェックが済んでからABS警告灯を消灯させりアルゴリズム(手順)としているためだ。

 なお、乗用車の場合でも、走り始めてパルスが出ない車輪があると、改めてその車輪のパルス信号なしを検出し、ABS警告灯を点灯させる。

 また、空気圧警告灯の付いているクルマとか、道路上の滑りやすい例えば踏切の線路を加速しつつ渡る様な局面で、一瞬ABS警告灯が付く場合があるが、これも4輪の回転数差が一定以上の差が生じた時に、点灯するのであるが、タイヤの空気圧の様な検出では、ある程度の時間の中で、恒常的に1輪だけの回転差が継続している場合に点灯するアルゴリズムになっている。


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