私の思いと技術的覚え書き

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消防はしご車の製造動画に感心

2020-07-31 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 自宅の近くに消防署があるが、一台大型のはしご車があり、クルマで通り過ぎながら、車庫前ではしごを昇降させたりしているのを見ると、そのはしごの長大さに感心を持ち眺める。これは、写真1の日野シャシに森田が架装したもので、はしご車では現在トップシェアだとNet情報で記してある。そんな思いでYoutubeを眺めていると下記リンクの「消防車ができるまで」という動画で、はしご車の部分を感心を持って眺めたので、このことを触れてみたい。

 この動画の感心のある部分を何度か見直したり、日本車体工業会(JABIA)のページで検索したとして、こちらはどうやら、日デ(現UDトラックス)シャシで、日本機械工業という架装事業社が施工している様だ。現在UDトラックスはバス製造は撤退(イスズに買収されたのでJBUSを再販するかも)したが、往時はバス製造しており、それなりのシェアは持っており、今でも路線系など見掛けることは多い。架装事業社と比べ巨大な車体製造メーカーは、幾ら単価が高くても数量が出ない特装物は力が入らないのだろう。だから、バスも撤退することになったのだろう。

 この動画で、日デのシャシ製造行程では、まったくトラックからの流用でない平板組み合わせから形作るボックスもしくはチャンネル構造で、はしご車のターンテーブルベースまでが一体化されている専用フレームを作っているのには感心した。10トンクラスの大型車だと板厚7mm前後の高張力鋼板を折り曲げ加工してチャンネル断面の1本物サイドレールを作り、それに何本ものクロスメンバーをリベット接合して一体化させているのだが、これは総てが溶接接合で組立られている。一般にトラックのフレームというのは、フレーム上面はほぼ水平で、出っ張りのない様にすることが前提になる。それは、リヤボデーが用途によりフレーム上に架装されるのだが、架装汎用性を持たせるための水平化だろう。ところが、はしご車専用ということになると、その様な考慮もいらず、なるべくターンテーブルベースを低くしてやった方が、旋回時などの安定性が良いと云うことだろう。なお、先にも述べたが、現在は森田がはしご車ではトップシェアだというが、やはり日野ではしご車専用フレームやキャブを開発しているという。ただし、日野のはキャブこそ、まったく専用設計でグッドデザインも受賞したという現代風だが、シャシは既存の4軸(3軸?)をベースにしている様で、ターンテーブルフレームはサブフレームを抱かせて補強している様だ。

 何れにせよ、全長は車両法の規格制限一杯の全長12mで、その上でホイールベースをなるべく短くして、最小回転半径を小さく機動性を持たせてる様だ。日デも日野もダブルキャブだが、キャブはほとんど前軸の前になるキャブフォワードさで、一般に乗降扉が前軸前に位置する大型バスが、結構な長大オーバーハングとなるが、さらに大きい。

 それと、一般的なトラックはキャブ下にタイヤが位置し、それと共にエンジンも位置する訳だが、はしご車ではキャブの直後の位置に位置する様だ。つまり、乗用車風な表現で云えば、完璧なフロントミドシップということになる。

 にしても、概観としては日野+森田の方が圧倒的に最新型に見えるが、まったくの専用シャシだとかラフテレーンクレーンからの応用だと想像する車高可変のハイドロサスペンション、同位相と逆位相の4WS機能、幅広大径タイヤ採用など、基本的なスペックとしては、日デのシャシがテクノロジーとしては格上に見えてしまう。

 しかし、なんで日野+森田がはしご車でトップシェアになったのか。どうやら、はしごの延長に伴って伸縮する放水ホースとか、伸ばしたはしごを人力で登り降りしなくても移動できる昇降装置が付くとか、使い勝手を向上させる機能をどんどん追加採用して来たところにある様だ。

 それと、同動画内の後半ではしごの製造風景を見たが、5段伸縮する上開きコの字のトラスだが、消防署の実物はしご車で銀色なことからアルミ材だと思っていたが、鋼製の溶接組立で、銀色に塗装していることを改めて知った。なお、はしごの伸縮は、ワイヤーを使用するもので、ラフタークレーンでも、トップブームなどには使用しているが、はしご車では、5連のはしごが総てワイヤーで連動する構造動作は、釣り過重が少ないはしご車だから許される構造なのだろう。


 もう一つ感心したのは、はしごを旋回させるターンテーブルの旋回ギヤの部分だが、車体がある程度傾いている場合に、この旋回ベース部分ではしご傾斜矯正装置というのが、日本機械でも森田でも装備されている。これにより、ベース部分の水平が多少狂っている場合であって、はしご最大伸ばし(30m~40m)で旋回させても、高さの変化を抑えられると共に安定性を確保できる工夫が取り入られているところも初めて知る。

 最後に、今次病変は、この様な特装車の受注販売に影響を与えるのだろうが、はしご車も含め消防関連車両には大した影響はないのだろう。それは、購入者がほとんど官だというところに行きつく。

THE MAKINGスペシャル版  (5)消防自動車ができるまで 2014/01/16
https://www.youtube.com/watch?v=_272WzfAKn8&t=1304s

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