私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

横浜シーサイドライン事故・AIの未来

2019-06-02 | 事故と事件
 6月1日朝8時過ぎ、横浜市南部を走る無人運転の新交通システム「シーサイドライン」新杉田駅(同市磯子区)で、列車が進行方向とは逆に走り出して、車止めに衝突したそうです。この事故で、14人が重軽傷者が生じたが、命に別条はないと伝わります。

 どうやら事故は、路線の末端たる始発駅(新杉田駅)で生じた様です。乗客も乗り終わり、扉も閉まって出発というところで、進行逆方向に発進したということだそうです。池袋暴走で、アクセルとブレーキを踏み間違えたのは老人だからと非難ゴウゴウですが、こちとらは無人の自動運転です。今や近い将来にも実用化してみせようと世界中のメーカーが血眼で研究している、いわば完全無欠のAIシステムとやらです。

 なんで、こんなバカな事故が起きたのか、真相究明は何れなされるでしょうが、開発者(企業)にしてみれば、よもやこんな事故は起こり得ようもないもないと思っていると想像します。それは、事故を起こさない、緻密なアルゴリズム(動作手順)を十分検討した上でのことであって、余程人為的(テロなど)でもない限り、事故は起こりようもないと自信満々だったのではないでしょうか。

 しかし、鉄道はクルマに比べれば、軌条を前後に走る乗り物であり、操舵の問題がないとか、路線内に人の立入がないことを前提にできるなど、システムも簡易で済む訳で、既に無人の新交通システムは全国で10路線弱が実用稼働している訳です。クルマの自動運転だったら、大一番に検出すべき、進行方向への障害物の検出センサー(ミリ波レーダーやステレオカメラなど)も付いていないのかもしれません。

 ここで、総て想像における仮の数値を想定して事故時の車内の人間に生じた減速度(ライドダウンG)を計算してみます。事故列車が逆進行発進して速度10km/hまで加速中、緩衝装置付きの車止め(多分バネ力は車両速度が数km/hを受け止められるストローク1mほどのもの)に衝突し、緩衝装置を完全に押し潰して急停止している訳です。そこで、衝突速度10km/hが緩衝装置で3km/h減じられ、7km/hで衝突し、その減速時間(Δt)が0.1secだったとすると、減速度は約-21m/sec^2(2.1G)となります。これは平均Gですから、正弦波としてルート2を乗じると2.94G、つまり約3Gの減速度が乗員に働いたと計算できます。つり革つかまっての立客はとてもつかまりきれず飛ばされるでしょう。

 クルマも自動運転の実用化に際し、もっともっと複雑なケースを想定し、これでもかというアルゴリズムを作りあげ、それを実制御する数万行におよぶプログラム記述で動作させるのでしょうが、当面の間は相当にシステムの穴(バグ)が出そうに思えます。





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