私は端的に述べてセダンが一番好きなボデースタイルだ。
その理由は、車格にもよるがフォーマルなスタイル。車格にあまり関係なく、3BOXが作り出す、前後左右の見切りの良さによる運転のし易さ。車体の剛性の中で主に捻りを支配すると云われるベルクヘッドの適宜の配置などが上げられるだろう。
このセダンが日本ではぜんぜん売れなくなってしまった。4ドアのセダン相当と云われるべきクルマまで、比較的低いルーフ高さ、急傾斜のフロントウィンドウ、側面視で後部がなだらかなクーペ形状で、ハッチバックになっているボデーティスト。これらを私は全否定しているのだ。
Net情報が伝えるところによると、日本でもその歴史のトップクラスにあるクラウンが、モデルチェンジしたら売れなさ過ぎて、トヨタはクラウンを廃止するのではないかとも噂されている。私もこのクーペクラウンじゃ売れる訳ないよなとは思うものの、私の近くの何処かの経営者然とした方だが、今までは代々クラウンを乗り継いでいたのだが、驚いたことに最近乗っているクルマはカムリのセダンであることに気付いた。つまりこの方も、セダンのあるべきスタイルを求めていて、原稿クランは認めがたく、それなら車格的は低くとも、カムリの方がセダンらしいとして選択したのだろう。
当件について、GTR(R35)の開発車で、その論評には一部異論を感じるところもあるが、セダン考を語っている記事を見つけたので、以下に転載しておきたい。彼が語るように、世界的にセダンを要望する層がなくなった訳ではなく、メーカーの努力不足は多分にあることは確かだろう。
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なぜ国産は衰退!? 水野和敏が語るセダンの本質と「あるべき姿」
4/7(水) 7:00配信 ベストカーWeb
ミニバンや軽、さらにはSUVブームに押され「凋落の一途を辿る」といった表現が定着してしまった感のあるセダン。
しかし、R35GT-R開発責任者・水野和敏氏はそこに異を唱える。「日本のセダンマーケットが縮小したのではない」と。一体どういうことなのか。長文になるがお付き合いいただけたら嬉しい。
※本稿は2021年3月のものです。文/水野和敏 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年4月10日号
1.「日本のセダン」が売れていないだけ
アナリストの方々や、自動車評論家の皆さんは、口をそろえて「車種の多様化がセダン凋落の要因」だと言います。
1990年代後半から2000年代にかけてはミニバンやハッチバックがファミリーカーの中心になり、カローラやサニーのような、いわゆる廉価版セダンの販売は落ち込みました。
軽自動車がワンボックス主体に移行したように、普通車も低価格帯のクルマは、燃費や性能が多少落ちても「何にでも使える多機能性」が大事な商品要件だからです。
しかし評論家が言う「SUV人気により、ミッドサイズやプレミアムクラスのセダンがとって代わられた」という見解は違っているのです。
確かにその側面も、一部にはあるかもしれません。
しかし、クラウンやレクサスLSなどが位置する"プレミアムセダン"の世界では、それは当てはまりません。
確かに今、SUVは世界の自動車メーカーがこぞって新型車を投入しています。ベンツ、BMWはもちろんのこと、ポルシェやマセラティ、ベントレーやロールスロイスもSUVを投入しています。
しかし、これらのSUVが売れることで、例えばベントレーのセダンが販売台数を落としたのかというとそんなことはありません。
ベンツもBMWもGLSやX5が販売台数を伸ばすことで、Sクラスや5シリーズが売れなくなったのでしょうか?
世界的に見ると、そのようなことはありません。SUVは「ユニーク嗜好の増車」なのです。日本でも富裕層はSUVを2台目、3台目として購入しているのです。
そのような人たちにとって、プレミアムセダンは「当然所有している」前提です。セダンのバリエーションを作っても、すでに1台持っているオーナーは「もう1台のセダン」は買いませんが、スポーツカーやSUVであれば買ってくれるのです。
「セダンかSUVか」という選択肢ではなく、フォーマルで社会的ヒエラルキーを持つセダン(サルーン)に加えて、ユニークでプライベート嗜好のSUVの追加による増車が、本来メーカーが狙った戦略なのです。
レクサスLSやクラウンのユーザーはこちらです。ホンダのレジェンドや、日産のシーマ、フーガなどもこちらに属するプレミアムセダンです。
とはいえ、現実的にそのような富裕層がすべてではなく、かなりのユーザーは「これ1台」でクルマを選びます。つまり「セダンかSUVか」です。
前々から私が言っているように、SUVはユニークな存在でクラス感がなく、言葉を換えれば社会の階層ヒエラルキーから解放されるクルマなのです。現在ヤリスクロスやC-HRなどが売れている現象です。
コロナやブルーバードクラスまでは世間が言うように「車種の多様化」によって、セダンは淘汰された、と言って間違いありません。
しかし世の中は「表と裏」があります。エコカーが売れると必ずスポーツカーも売れる。SUVで社会のヒエラルキーから解放されたい人がいるいっぽうで、フォーマルで知的なプレミアム感に浸りたい人がいる。それがプレミアムセダンなのです。
問題は国産のプレミアムセダンにあります。
クラウンの販売台数は冒頭に言いましたとおり、ここ20年で4分の1、前型との比較でも半減しています。フーガの年間販売台数は821台、レジェンドはわずか216台にすぎません。スカイラインでも4000台を切っています。
これに対し、例えばBMW3シリーズは8508台、ベンツEクラスは4658台、ベンツCクラスは6689台と堅調を維持しているのです。
Eクラスは前年に対し販売台数を落としていますが、昨秋のマイチェンを前にしたモデルであることを考えれば堅調と見ていいでしょう。さすがにクラウンの販売台数には及ばないものの、レクサスLSを圧倒的にリードしていますし、アコードやスカイラインを上回る販売台数です。
これはどういうことでしょうか?
つまり、「国内でプレミアムセダンが売れなくなった」のではなく、「国産のプレミアムセダンが売れていない」ということです。さらに言えば、これはつまり国産セダンを買っていたユーザーが、輸入車セダンへ流れていった、ということなのです。
クラウンの価格はおおよそ500万から700万円です。スカイラインは430万から650万円です。この金額を出せるのなら、BMW3シリーズやベンツCクラスがターゲットになります。
レクサスLSは1000万円を超え、中心ゾーンは1200万から1500万円です。これはもう、新しくなったベンツSクラスが直接「価格的ライバル」です。クルマとしての価値を見比べれば、レクサスLSではなく、ベンツSクラスを選ぶ人が多いでしょう。
さすがベンツはよくわかっているなと感じるのが、この新型Sクラスや新型Cクラスです。
インテリアはサルーンにしかできないプレミアム感と先進技術の進化を飛躍的に革新させながら、エクステリアはセダンとしてのプレミアム感を演出するための"不変な本質のバランス配分"を変えることなく死守し、最新技術に裏付けされた加飾デザインだけを変えています。
性能や燃費をトレードオフしてユニークさや奇抜さを追うSUVとは対極的に、プレミアムセダンだからできる性能&機能の向上と併せて、フォーマルで社会的に認知されるプレミアム性や賢さを向上させています。
もし新型クラウンのようにFFか5ドアハッチバックかわからないような、セダンの本質を外したデザインにしたら、それこそ社会的フォーマルさやプレミアム性を求めるユーザー層からは敬遠されてしまいます。
今一度繰り返しますが、日本国内でセダンが売れていないのではなく、国産セダンが"売れなく"しているのです。
2.セダンのあるべき姿を忘れている
日本でセダンの需要が低迷するのは、SUVの台頭によるものだと「誤解」したメーカーの企画担当者は、サルーンとしての賢さやステイタス性の進化を訴求せず「セダンに足りないのは、ユニークさや奇抜さだ」と考え、SUVの手法で存在感を強めたフロントマスクや奇抜なプロポーション変化を求めたのでしょう。
その結果、賢さを感じない、ド派手で彫りの深いメッキだらけのフロントマスクが生まれるのです。
しかし、本来のプレミアムセダンを求めるユーザーはSUV的なユニークさや奇抜さを演出したクルマが欲しいわけではありません。SUVは別のカテゴリーのクルマとして見ているということを理解していません。
クラウンがまさにその典型。プレミアムセダンの本質の追求から外れ、前型との違いやSUVに対抗して、SUVのなかで目立つクルマを作ってしまっています。ベンツCクラスやEクラス、BMW3シリーズや5シリーズがSUVに対抗しているでしょうか?
先代型までのクラウンは、プレミアムセダンのあるべき姿を維持したサルーンでした。大きく口を開けたフロントマスクは個性的ではありますが、不必要にフロントノーズを伸ばしたプロポーションではありません。
リアクォーターも太いCピラーの、しっかりとしたセダンプロポーションを作っていました。
しかし、現行型クラウンは真横からプロポーションを見れば一目瞭然ですが、前顔はSUVに対抗する存在感を演出するデザイン加飾のために延長され、"FFのアメ車"のようです。
一方リアは、グリーンハウスのガラス後端が、セダンやクーペの必須定番条件である"後輪の中心以前"ではなく、バックドア方式の5ドアハッチバックの位置まで延長されていて、さらにCピラーの基本ラインも5ドアハッチバックの形状になっています。
横からプロポーションを検証すると、中型FF車のフロントに5ドアハッチバック車のリアを組み合わせたセダン、という組み合わせになっています。
自動車開発の専門家ではないユーザーにも、「何か車格感がない普通のクルマになっちゃった」といった、声にならない購買意欲の低下が起こるのです。
こうした「鼻伸ばし」によるフロントマスクの存在感の作り方は、アメ車の手法です。国土が大きく雄大で、街並みも道路も広いアメリカでは、ちょっと鼻を伸ばしたところでプロポーションにいびつさは感じません。
ところが狭い道が多く、街並みもゴチャッと小さい日本や欧州では、この「おおらかな」プロポーションのセダンは間延びして均整を欠いて見えるのです。アメ車が日本や欧州で売れないのは、そういったことが背景にあるのです。
さらにリアクォーターウィンドウの後端位置を見てください。ベンツCクラス、Eクラス、新型Sクラスでも、BMW3シリーズでも5シリーズでも、後輪アクスルの位置にリアクォーターウィンドウ後端ラインをぴったり合わせています。
またCピラーの傾斜もリアオーバーハングの中間点に合わせています。これは何回モデルチェンジを繰り返しても不変です。
この不変の要件がFRセダンやクーペの走り感やフォーマル感を創りだしています。FRのプレミアムセダンとして、FF普及車と違う格式感を生み出しているのです。クーペのBMW4シリーズでもこの基本を守っていますし前型までのクラウンも守っていました。
自動車には車型による「格式」というものがあります。セダンはフォーマルのど真ん中にあります。これを基準とすれば、2ドアクーペはより贅沢(プレミアム)で、+50万円以上の価格を上乗せできます。ステーションワゴンもクーペに次いでプレミアム。セダンに対して30万円程度の価格プラスとなります。
一方5ドアハッチバックは実用性主体の普及版となるためにセダンより「車格が下」となるのが世界的な自動車の格式感です。クラウンは自らFF車と5ドアハッチバック車を組み合わせたようなプロポーションを採用して、プレミアムセダンの「格式」から降りてしまったのです。
大事なビジネスシーンのスーツ着用場面で、Tシャツに穴あきジーンズを着て、「これが俺のスタイルです」と場違いな自己アピールをしているような感があります。
Tシャツにジーンズは言いすぎだとしても、SUVはパーソナルやユニークが売りの商品。カジュアル&スポーティウェアです。今のクラウンはスーツではありません。
確かにベンツのGT4ドアクーペやBMWのグランクーペのような6ライトでハッチバックのようなリアスタイルのモデルはありますが、いずれも基本となるフォーマルなセダンがあるうえでの派生車型です。
ポルシェパナメーラは最初からフォーマルなプレミアムセダンを狙ったクルマではありません。ベンツやBMWの世界に対抗しようとはしていません。
クラウンはベースになるフォーマルなセダン車型を持つことなく、FF5ドアハッチバックのようなカジュアルな車型にしてしまったことで、本来の「フォーマルな社会的ステータスと賢さの演出」を望むユーザーを自ら手放したのです。「いつかはクラウン」を「いつかはメルセデス、BMW」に変えてしまったのです。
3.クラウンユーザーは変化を求めたのか?
話が現行型クラウンに集中してしまっていますが、今の日本車である程度の台数を販売できるセダンがクラウンしかないし、私はクラウンこそが日本のプレミアムと思っていましたのであえて例題にさせていただいています。
新型クラウンの開発ではニュルブルクリンクで走りを鍛えたと言っていますが、これはキャデラックCTSのニュル開発に似ています。
クラウンクラスのドイツ車が、前型のクラウンに滑らかさや静かさで劣るのは、ニュルで開発をするからです。ここが見抜けていないのです。
これまでクラウンの美点はメルセデスやBMWには作れない、ジャガーを超える世界屈指の滑らかな走りと静粛性でした。操安性もギスギスさせずその魅力を引き出した、少し鈍感だがバランスがよく、日本の道路事情に合っているという点です。
操安性と違い、滑らかさや静粛性はディーラー試乗や他人を乗せても、クルマはどれも同じと思っている人にもわかりやすく、プレミアム感を自慢しやすい商品要素です。
レクサス車と異なり、クラウンは基本的には国内専売モデルなのですから、「クルマは皆同じ」と思ってるユーザーに対して「ドイツ人が作れないクルマに乗っている」というわかりやすい優越感と誇りがある、プレミアム性の進化が肝だと思います。
超高速で路面が厳しく、テストコースより3倍近い負荷入力が入るニュルを走れば、必然的にしっかり感を追求します。
リアサブフレームやアームのゴムブッシュを硬くしたり、スプリングやショックアブを固めたりなど余計な動きを止めようとします。そうするとロードノイズなどの騒音や各種振動は直接室内に入ってきます。
結果、前型クラウンにあった滑らかさや静粛性は失われてしまいました。
そのいっぽうで得られた操安性はベンツやBMWには及びません。ドイツメーカーは専門部隊がニュルに常駐して作り込んでいます。
私もR35GT-Rの開発では、ニュルを使いポルシェを超える性能開発をしました。
その中身は、メーカー合同のインダストリー・プールでは3台のGT-Rをさまざまなテストとともに世界一速いタイムで走らせ続け、3週間で1万km以上の距離(常駐メーカーの半年分の走行距離)を毎回走らせました。「ニュルで鍛えました」というレベルではないのです。
トヨタの開発企画の担当者は、従来のクラウンのお客様は年齢層も上がり、新たなお客様のニーズを掘り起こす必要がある、という趣旨のことを言っています。
確かにそれは正しいでしょう。ユーザー層の若返りはマストです。
しかし、若返りイコール、少しよくなった操安性なのでしょうか? 評論家の記事は書きやすいですが、お客様がプレミアム感を持ち、他人に自慢しやすい商品要件です、と言えるでしょうか?
仮にクラウンの新たなターゲットユーザーを30代後半から40歳代に据えたとしましょう。クルマに興味がないとメディアでは言われている年代層です。
しかし同時にベンツのCやAクラス、BMWやアウディなどに移行してプレミアムセダンを購買している世代でもあります。
ネット情報等を使いこなし、先ほど言いましたが欧州車の「プレミアムとしてのデザインの本質要件や先進技術と一体となった賢い加飾デザイン、セダン本来の室内や装備のプレミアム進化」を調べ見抜いて購買する人たちに、特徴が中途半端なプレミアムセダンが世代交代で受け入れられるのでしょうか?
そのなかで国産のプレミアムセダンは今後どう存在していけばいいのでしょうか?
簡単です。世界にいまだない、セダンやクーペにしかできないプレミアムなサルーンを創ればいいのです。
4.欧州勢と同じ土俵に立てるプレミアムサルーンは作れる "設計図"はすでにある
例えば私は日産GT-Rでは「マルチ・パフォーマンス・スーパーカー」という世界に例のない独自のスーパーカーを創りました。
しかしスーパーカーの定番要件である「速さや高性能や先進的パワートレーン位置」などは競合車以上にしたうえ、デザインは黄金分割分析による不変的なスーパーカー・プロポーション要件を織り込みました。
これにパッケージ性能及び空力など設計の基礎要件を織り込んだ「デザイン設計」をした後に、造形に提示してデザイン開発をしました。
さらに空力開発用のムービングベルト風洞の現場で、担当デザイナーには性能や機能に裏付けされたデザインをしてもらいました。
本当に収益性の高い、購買世代の交代を含めたプレミアムセダンを売ろうとする時、昔との違いは競合車は国産だけでなく欧州車も同じ土俵にいることです。
SUVのようにユニークさや奇抜さのために土俵が違う商品と違い、プレミアムセダンはヒエラルキーに基づいた同じ土俵で選択されるのです。
しかし日本の自動車メーカーの開発スタイルはアメリカ型の組織や運営で「個人の能力やノウハウやチーム力より、組織としての効率や規格化」を求めています。
部署を縦割りにした開発実行部隊と、横刺しのスタッフ管理で運営されているために、車両全体を見通せる技術や機能&性能コーディネートといったノウハウの部分は、人材の育成を含め手薄になっています。
しかし欧州ブランドメーカーは昔の日本の徒弟制度のような人材育成コースによって、キーパーソンの能力研鑽を進め、車両全体のコーディネートや管理技術を構築しています。
これによりプレミアムセダンといえども、プラットフォームやデザインの共用化は日本以上に進んでいますし、車種の開発数やスピードも向上しています。
今一度国内の販売状況を思い出してください。プレミアムセダンはベンツやBMW、アウディなどのドイツ勢はしっかりと売れています。
日本のクラウンはモデルチェンジで販売台数を落とし、レクサスLSもしかりです。ホンダレジェンドや日産のフーガやシーマなども散々です。
プレミアムセダンの価値と本質に戻りドイツ車と違うプレミアムなサルーンを創ってほしいと願います。
私の頭の中に設計図はあります。以上
その理由は、車格にもよるがフォーマルなスタイル。車格にあまり関係なく、3BOXが作り出す、前後左右の見切りの良さによる運転のし易さ。車体の剛性の中で主に捻りを支配すると云われるベルクヘッドの適宜の配置などが上げられるだろう。
このセダンが日本ではぜんぜん売れなくなってしまった。4ドアのセダン相当と云われるべきクルマまで、比較的低いルーフ高さ、急傾斜のフロントウィンドウ、側面視で後部がなだらかなクーペ形状で、ハッチバックになっているボデーティスト。これらを私は全否定しているのだ。
Net情報が伝えるところによると、日本でもその歴史のトップクラスにあるクラウンが、モデルチェンジしたら売れなさ過ぎて、トヨタはクラウンを廃止するのではないかとも噂されている。私もこのクーペクラウンじゃ売れる訳ないよなとは思うものの、私の近くの何処かの経営者然とした方だが、今までは代々クラウンを乗り継いでいたのだが、驚いたことに最近乗っているクルマはカムリのセダンであることに気付いた。つまりこの方も、セダンのあるべきスタイルを求めていて、原稿クランは認めがたく、それなら車格的は低くとも、カムリの方がセダンらしいとして選択したのだろう。
当件について、GTR(R35)の開発車で、その論評には一部異論を感じるところもあるが、セダン考を語っている記事を見つけたので、以下に転載しておきたい。彼が語るように、世界的にセダンを要望する層がなくなった訳ではなく、メーカーの努力不足は多分にあることは確かだろう。
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なぜ国産は衰退!? 水野和敏が語るセダンの本質と「あるべき姿」
4/7(水) 7:00配信 ベストカーWeb
ミニバンや軽、さらにはSUVブームに押され「凋落の一途を辿る」といった表現が定着してしまった感のあるセダン。
しかし、R35GT-R開発責任者・水野和敏氏はそこに異を唱える。「日本のセダンマーケットが縮小したのではない」と。一体どういうことなのか。長文になるがお付き合いいただけたら嬉しい。
※本稿は2021年3月のものです。文/水野和敏 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年4月10日号
1.「日本のセダン」が売れていないだけ
アナリストの方々や、自動車評論家の皆さんは、口をそろえて「車種の多様化がセダン凋落の要因」だと言います。
1990年代後半から2000年代にかけてはミニバンやハッチバックがファミリーカーの中心になり、カローラやサニーのような、いわゆる廉価版セダンの販売は落ち込みました。
軽自動車がワンボックス主体に移行したように、普通車も低価格帯のクルマは、燃費や性能が多少落ちても「何にでも使える多機能性」が大事な商品要件だからです。
しかし評論家が言う「SUV人気により、ミッドサイズやプレミアムクラスのセダンがとって代わられた」という見解は違っているのです。
確かにその側面も、一部にはあるかもしれません。
しかし、クラウンやレクサスLSなどが位置する"プレミアムセダン"の世界では、それは当てはまりません。
確かに今、SUVは世界の自動車メーカーがこぞって新型車を投入しています。ベンツ、BMWはもちろんのこと、ポルシェやマセラティ、ベントレーやロールスロイスもSUVを投入しています。
しかし、これらのSUVが売れることで、例えばベントレーのセダンが販売台数を落としたのかというとそんなことはありません。
ベンツもBMWもGLSやX5が販売台数を伸ばすことで、Sクラスや5シリーズが売れなくなったのでしょうか?
世界的に見ると、そのようなことはありません。SUVは「ユニーク嗜好の増車」なのです。日本でも富裕層はSUVを2台目、3台目として購入しているのです。
そのような人たちにとって、プレミアムセダンは「当然所有している」前提です。セダンのバリエーションを作っても、すでに1台持っているオーナーは「もう1台のセダン」は買いませんが、スポーツカーやSUVであれば買ってくれるのです。
「セダンかSUVか」という選択肢ではなく、フォーマルで社会的ヒエラルキーを持つセダン(サルーン)に加えて、ユニークでプライベート嗜好のSUVの追加による増車が、本来メーカーが狙った戦略なのです。
レクサスLSやクラウンのユーザーはこちらです。ホンダのレジェンドや、日産のシーマ、フーガなどもこちらに属するプレミアムセダンです。
とはいえ、現実的にそのような富裕層がすべてではなく、かなりのユーザーは「これ1台」でクルマを選びます。つまり「セダンかSUVか」です。
前々から私が言っているように、SUVはユニークな存在でクラス感がなく、言葉を換えれば社会の階層ヒエラルキーから解放されるクルマなのです。現在ヤリスクロスやC-HRなどが売れている現象です。
コロナやブルーバードクラスまでは世間が言うように「車種の多様化」によって、セダンは淘汰された、と言って間違いありません。
しかし世の中は「表と裏」があります。エコカーが売れると必ずスポーツカーも売れる。SUVで社会のヒエラルキーから解放されたい人がいるいっぽうで、フォーマルで知的なプレミアム感に浸りたい人がいる。それがプレミアムセダンなのです。
問題は国産のプレミアムセダンにあります。
クラウンの販売台数は冒頭に言いましたとおり、ここ20年で4分の1、前型との比較でも半減しています。フーガの年間販売台数は821台、レジェンドはわずか216台にすぎません。スカイラインでも4000台を切っています。
これに対し、例えばBMW3シリーズは8508台、ベンツEクラスは4658台、ベンツCクラスは6689台と堅調を維持しているのです。
Eクラスは前年に対し販売台数を落としていますが、昨秋のマイチェンを前にしたモデルであることを考えれば堅調と見ていいでしょう。さすがにクラウンの販売台数には及ばないものの、レクサスLSを圧倒的にリードしていますし、アコードやスカイラインを上回る販売台数です。
これはどういうことでしょうか?
つまり、「国内でプレミアムセダンが売れなくなった」のではなく、「国産のプレミアムセダンが売れていない」ということです。さらに言えば、これはつまり国産セダンを買っていたユーザーが、輸入車セダンへ流れていった、ということなのです。
クラウンの価格はおおよそ500万から700万円です。スカイラインは430万から650万円です。この金額を出せるのなら、BMW3シリーズやベンツCクラスがターゲットになります。
レクサスLSは1000万円を超え、中心ゾーンは1200万から1500万円です。これはもう、新しくなったベンツSクラスが直接「価格的ライバル」です。クルマとしての価値を見比べれば、レクサスLSではなく、ベンツSクラスを選ぶ人が多いでしょう。
さすがベンツはよくわかっているなと感じるのが、この新型Sクラスや新型Cクラスです。
インテリアはサルーンにしかできないプレミアム感と先進技術の進化を飛躍的に革新させながら、エクステリアはセダンとしてのプレミアム感を演出するための"不変な本質のバランス配分"を変えることなく死守し、最新技術に裏付けされた加飾デザインだけを変えています。
性能や燃費をトレードオフしてユニークさや奇抜さを追うSUVとは対極的に、プレミアムセダンだからできる性能&機能の向上と併せて、フォーマルで社会的に認知されるプレミアム性や賢さを向上させています。
もし新型クラウンのようにFFか5ドアハッチバックかわからないような、セダンの本質を外したデザインにしたら、それこそ社会的フォーマルさやプレミアム性を求めるユーザー層からは敬遠されてしまいます。
今一度繰り返しますが、日本国内でセダンが売れていないのではなく、国産セダンが"売れなく"しているのです。
2.セダンのあるべき姿を忘れている
日本でセダンの需要が低迷するのは、SUVの台頭によるものだと「誤解」したメーカーの企画担当者は、サルーンとしての賢さやステイタス性の進化を訴求せず「セダンに足りないのは、ユニークさや奇抜さだ」と考え、SUVの手法で存在感を強めたフロントマスクや奇抜なプロポーション変化を求めたのでしょう。
その結果、賢さを感じない、ド派手で彫りの深いメッキだらけのフロントマスクが生まれるのです。
しかし、本来のプレミアムセダンを求めるユーザーはSUV的なユニークさや奇抜さを演出したクルマが欲しいわけではありません。SUVは別のカテゴリーのクルマとして見ているということを理解していません。
クラウンがまさにその典型。プレミアムセダンの本質の追求から外れ、前型との違いやSUVに対抗して、SUVのなかで目立つクルマを作ってしまっています。ベンツCクラスやEクラス、BMW3シリーズや5シリーズがSUVに対抗しているでしょうか?
先代型までのクラウンは、プレミアムセダンのあるべき姿を維持したサルーンでした。大きく口を開けたフロントマスクは個性的ではありますが、不必要にフロントノーズを伸ばしたプロポーションではありません。
リアクォーターも太いCピラーの、しっかりとしたセダンプロポーションを作っていました。
しかし、現行型クラウンは真横からプロポーションを見れば一目瞭然ですが、前顔はSUVに対抗する存在感を演出するデザイン加飾のために延長され、"FFのアメ車"のようです。
一方リアは、グリーンハウスのガラス後端が、セダンやクーペの必須定番条件である"後輪の中心以前"ではなく、バックドア方式の5ドアハッチバックの位置まで延長されていて、さらにCピラーの基本ラインも5ドアハッチバックの形状になっています。
横からプロポーションを検証すると、中型FF車のフロントに5ドアハッチバック車のリアを組み合わせたセダン、という組み合わせになっています。
自動車開発の専門家ではないユーザーにも、「何か車格感がない普通のクルマになっちゃった」といった、声にならない購買意欲の低下が起こるのです。
こうした「鼻伸ばし」によるフロントマスクの存在感の作り方は、アメ車の手法です。国土が大きく雄大で、街並みも道路も広いアメリカでは、ちょっと鼻を伸ばしたところでプロポーションにいびつさは感じません。
ところが狭い道が多く、街並みもゴチャッと小さい日本や欧州では、この「おおらかな」プロポーションのセダンは間延びして均整を欠いて見えるのです。アメ車が日本や欧州で売れないのは、そういったことが背景にあるのです。
さらにリアクォーターウィンドウの後端位置を見てください。ベンツCクラス、Eクラス、新型Sクラスでも、BMW3シリーズでも5シリーズでも、後輪アクスルの位置にリアクォーターウィンドウ後端ラインをぴったり合わせています。
またCピラーの傾斜もリアオーバーハングの中間点に合わせています。これは何回モデルチェンジを繰り返しても不変です。
この不変の要件がFRセダンやクーペの走り感やフォーマル感を創りだしています。FRのプレミアムセダンとして、FF普及車と違う格式感を生み出しているのです。クーペのBMW4シリーズでもこの基本を守っていますし前型までのクラウンも守っていました。
自動車には車型による「格式」というものがあります。セダンはフォーマルのど真ん中にあります。これを基準とすれば、2ドアクーペはより贅沢(プレミアム)で、+50万円以上の価格を上乗せできます。ステーションワゴンもクーペに次いでプレミアム。セダンに対して30万円程度の価格プラスとなります。
一方5ドアハッチバックは実用性主体の普及版となるためにセダンより「車格が下」となるのが世界的な自動車の格式感です。クラウンは自らFF車と5ドアハッチバック車を組み合わせたようなプロポーションを採用して、プレミアムセダンの「格式」から降りてしまったのです。
大事なビジネスシーンのスーツ着用場面で、Tシャツに穴あきジーンズを着て、「これが俺のスタイルです」と場違いな自己アピールをしているような感があります。
Tシャツにジーンズは言いすぎだとしても、SUVはパーソナルやユニークが売りの商品。カジュアル&スポーティウェアです。今のクラウンはスーツではありません。
確かにベンツのGT4ドアクーペやBMWのグランクーペのような6ライトでハッチバックのようなリアスタイルのモデルはありますが、いずれも基本となるフォーマルなセダンがあるうえでの派生車型です。
ポルシェパナメーラは最初からフォーマルなプレミアムセダンを狙ったクルマではありません。ベンツやBMWの世界に対抗しようとはしていません。
クラウンはベースになるフォーマルなセダン車型を持つことなく、FF5ドアハッチバックのようなカジュアルな車型にしてしまったことで、本来の「フォーマルな社会的ステータスと賢さの演出」を望むユーザーを自ら手放したのです。「いつかはクラウン」を「いつかはメルセデス、BMW」に変えてしまったのです。
3.クラウンユーザーは変化を求めたのか?
話が現行型クラウンに集中してしまっていますが、今の日本車である程度の台数を販売できるセダンがクラウンしかないし、私はクラウンこそが日本のプレミアムと思っていましたのであえて例題にさせていただいています。
新型クラウンの開発ではニュルブルクリンクで走りを鍛えたと言っていますが、これはキャデラックCTSのニュル開発に似ています。
クラウンクラスのドイツ車が、前型のクラウンに滑らかさや静かさで劣るのは、ニュルで開発をするからです。ここが見抜けていないのです。
これまでクラウンの美点はメルセデスやBMWには作れない、ジャガーを超える世界屈指の滑らかな走りと静粛性でした。操安性もギスギスさせずその魅力を引き出した、少し鈍感だがバランスがよく、日本の道路事情に合っているという点です。
操安性と違い、滑らかさや静粛性はディーラー試乗や他人を乗せても、クルマはどれも同じと思っている人にもわかりやすく、プレミアム感を自慢しやすい商品要素です。
レクサス車と異なり、クラウンは基本的には国内専売モデルなのですから、「クルマは皆同じ」と思ってるユーザーに対して「ドイツ人が作れないクルマに乗っている」というわかりやすい優越感と誇りがある、プレミアム性の進化が肝だと思います。
超高速で路面が厳しく、テストコースより3倍近い負荷入力が入るニュルを走れば、必然的にしっかり感を追求します。
リアサブフレームやアームのゴムブッシュを硬くしたり、スプリングやショックアブを固めたりなど余計な動きを止めようとします。そうするとロードノイズなどの騒音や各種振動は直接室内に入ってきます。
結果、前型クラウンにあった滑らかさや静粛性は失われてしまいました。
そのいっぽうで得られた操安性はベンツやBMWには及びません。ドイツメーカーは専門部隊がニュルに常駐して作り込んでいます。
私もR35GT-Rの開発では、ニュルを使いポルシェを超える性能開発をしました。
その中身は、メーカー合同のインダストリー・プールでは3台のGT-Rをさまざまなテストとともに世界一速いタイムで走らせ続け、3週間で1万km以上の距離(常駐メーカーの半年分の走行距離)を毎回走らせました。「ニュルで鍛えました」というレベルではないのです。
トヨタの開発企画の担当者は、従来のクラウンのお客様は年齢層も上がり、新たなお客様のニーズを掘り起こす必要がある、という趣旨のことを言っています。
確かにそれは正しいでしょう。ユーザー層の若返りはマストです。
しかし、若返りイコール、少しよくなった操安性なのでしょうか? 評論家の記事は書きやすいですが、お客様がプレミアム感を持ち、他人に自慢しやすい商品要件です、と言えるでしょうか?
仮にクラウンの新たなターゲットユーザーを30代後半から40歳代に据えたとしましょう。クルマに興味がないとメディアでは言われている年代層です。
しかし同時にベンツのCやAクラス、BMWやアウディなどに移行してプレミアムセダンを購買している世代でもあります。
ネット情報等を使いこなし、先ほど言いましたが欧州車の「プレミアムとしてのデザインの本質要件や先進技術と一体となった賢い加飾デザイン、セダン本来の室内や装備のプレミアム進化」を調べ見抜いて購買する人たちに、特徴が中途半端なプレミアムセダンが世代交代で受け入れられるのでしょうか?
そのなかで国産のプレミアムセダンは今後どう存在していけばいいのでしょうか?
簡単です。世界にいまだない、セダンやクーペにしかできないプレミアムなサルーンを創ればいいのです。
4.欧州勢と同じ土俵に立てるプレミアムサルーンは作れる "設計図"はすでにある
例えば私は日産GT-Rでは「マルチ・パフォーマンス・スーパーカー」という世界に例のない独自のスーパーカーを創りました。
しかしスーパーカーの定番要件である「速さや高性能や先進的パワートレーン位置」などは競合車以上にしたうえ、デザインは黄金分割分析による不変的なスーパーカー・プロポーション要件を織り込みました。
これにパッケージ性能及び空力など設計の基礎要件を織り込んだ「デザイン設計」をした後に、造形に提示してデザイン開発をしました。
さらに空力開発用のムービングベルト風洞の現場で、担当デザイナーには性能や機能に裏付けされたデザインをしてもらいました。
本当に収益性の高い、購買世代の交代を含めたプレミアムセダンを売ろうとする時、昔との違いは競合車は国産だけでなく欧州車も同じ土俵にいることです。
SUVのようにユニークさや奇抜さのために土俵が違う商品と違い、プレミアムセダンはヒエラルキーに基づいた同じ土俵で選択されるのです。
しかし日本の自動車メーカーの開発スタイルはアメリカ型の組織や運営で「個人の能力やノウハウやチーム力より、組織としての効率や規格化」を求めています。
部署を縦割りにした開発実行部隊と、横刺しのスタッフ管理で運営されているために、車両全体を見通せる技術や機能&性能コーディネートといったノウハウの部分は、人材の育成を含め手薄になっています。
しかし欧州ブランドメーカーは昔の日本の徒弟制度のような人材育成コースによって、キーパーソンの能力研鑽を進め、車両全体のコーディネートや管理技術を構築しています。
これによりプレミアムセダンといえども、プラットフォームやデザインの共用化は日本以上に進んでいますし、車種の開発数やスピードも向上しています。
今一度国内の販売状況を思い出してください。プレミアムセダンはベンツやBMW、アウディなどのドイツ勢はしっかりと売れています。
日本のクラウンはモデルチェンジで販売台数を落とし、レクサスLSもしかりです。ホンダレジェンドや日産のフーガやシーマなども散々です。
プレミアムセダンの価値と本質に戻りドイツ車と違うプレミアムなサルーンを創ってほしいと願います。
私の頭の中に設計図はあります。以上