作家である村上春樹氏がイスラエルのエルサレム賞の受賞を受け、その際の受賞講演を見ました。私は小説というのはこのところあまり読んでいませんが、過去には司馬遼太郎氏や吉村昭氏、そして、城山三郎氏等は熱心に読んで来たという思いを持ちます。今回の村上春樹氏については、高名ですから種々のベストセラー等の本の背表紙を見る機会はありましたが、紐解くまでには至りませんでした。思い返すと村上春樹氏の著作で読んだ記憶のあるのは、エッセイとしての「辺境・近境」と云うもので、予てより興味を感じていたノモンハンのことが記されていたことにあります。
さて、今回の受賞講演ですが、スピーチは英語で行われたとのことですが、翻訳文を下記にリンクしておきます。
この中で、壁にぶつかり壊れる卵があれば、自分は卵の側にスタンスを置くのですと述べ、イスラエルを批判しているところは、自由人たる作家の面目躍如なんだろうと感じます。
スピーチ後半では、この壁とは単にイスラエルだけを指すのではなく、システムに対する個人なのだと述べています。ここで云うシステムとは、組織でありそれを操るオペレーターたる権力者なんだろうと思うのです。
政治家は当然としてマスコミもしかり、そして自由人たる作家であっても、世に名前が知られ一流とされる地位を得た者には、この様な踏み込んだスピーチはし難いものと感じられます。それを、表明しきった、今回の村上春樹氏の講演内容は立派なものと感じられます。