私の思いと技術的覚え書き

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再輸入車盗難ロンダリングと想定される疑問

2019-12-22 | 事故と事件
 先日報じられた、盗難車を再逆輸入車として再国内登録した手口であるが、幾つか想定される疑問を書き留めてみたい。

 犯行は、893絡みとも考えられる大規模な組織的盗難車を使った犯罪ビジネスモデルだろうと想定されるのだが・・・。偽逆輸入の通関手続証はデタラメな所有者や住所を記載した偽造だったということだ。これについては、該当車が輸出される2ヶ月前に逆輸入されたこと、つまり日付が逆転しておりあり得ない事態だったのに、国内の登録手続きがそこまで厳格化されていないことを承知で行った犯行だったということの様だ。これについては、国交省は再輸入を装った国内再登録車が少なくとも20件存在することを認め、改めて「自動車通関証明書の審査の厳格化」として全国陸運支局に通達したとしている。

1.どうして犯行グループは輸出された車両の車体番号を知り得たのか?
 あるメディアでは、犯行グループ(素材発掘グループ)は、オークションで犯行対象車のネタ仕入れを行っていたとされる。しかし、その車が輸出されるのかどうか、オークションで判るのだろうかという疑問を感じる。国交省では輸出車の個体識別情報などを電子的データベースとして保有しているのだろうから、内部的な協力者の存在がいやしないだろうかとも疑う。

2.該当すべきクルマを入手すべき手段は?
 輸出された高額換金可能なクルマ(一般に高級車となるだろう)を盗難により入手していたのであろうが、車種型式を指定して盗難専門に行うグループがあるのだろうことを伺わせる。

3.車体番号の新生をどうして行ったのか?
 今回報じられている内容からは、マレーシアにある正規車と変造車の車体番号は、並べてみると読みは同じだが、文字の字体が異なることなどの差異が生じていることが判る。
 従来から、車体番号を事故全損車など一時抹消された車両でその登録書類と共に入手し、それとマッチングするクルマの盗難をオーダーして入手し、事故車の車体番号をその該当部付近の車体の一部を切り継ぎ、概観目視上で判別できない様にして再登録する手口は知られていた。しかし、今回の犯行は、まったく新規に車体番号の打刻を新たに行っている訳だが、別途の金属板に何らかの機械装置により文字入れ加工を行い、その金属板を該当車の車体番号打刻位置に切り継ぎしているのだろうか? もしくは、正規の車体番号を溶接肉盛りなどで埋め、新たに切削平滑化させ、そこに何らかの機械装置で文字入れ加工を施しているのだろうか? 何れにしても、オーダーされた新たな文字列を新生して、現車に判別できなく転写するグループの存在を想像させる。

 何れにしても、この様な文字入れ加工装置は、経験と勘に頼る幼稚なものでなく、NCマシニングによる機械加工とかレーザー技術により様々な金属にまで文字入れできる機器があることが知られている訳で、技術的は可能だろう。もし、これを防ぐとしたら、印鑑照合の様に、その陰影(だけでなく文字溝の深さなど3次元的な寸法差まで含め)照合できる様なシステムにしない限り照合は難しいだろう。もし、それを行うとしたら、自動車製造事業者に出荷時(車体番号打刻後)に車体番号の3次元データを記録提出させ、車両登録データに紐付けさせて登録し、別途再登録とか継続検査の際は、三次元で読み取るハンディスキャナみたいな送致で読み取り照合し、一定以上の誤差を生じているものを検出するぐらいのことを行わない限り見破ることはできまい。

4.その他抑止手段
 既に欧州車や国産車でも、メーカーで車体番号の打刻と共に、エンジンECUだとか様々なECUや極軽微なパーツの電子回路にまで、車体番号を電子的に記録する処置が行われている。メーカーによっては、新品部品もしくは中古部品を付け替えた場合、この記録された番号が一致しないと、その部品の機能が働かないという処置までが取られている。今回の犯罪も、エンジンECUから読み出した車体番号が現車の打刻と異なり、その読み出された番号から、盗難車出あることが発覚している。しかし、この様な多くの個別装置に車体識別番号を記録させたとしても、それら記録は故障などの際に取り替える必用は生じてくるのであって、何らかの書き換え手段が必要になるから、決定的な盗難抑止とはならないだろうが、抑止する効果は一定あるのだろう。





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