先日の日野オートプラザで観察し、その他資料も見比べながら、ちょっと小研究してみましたので紹介してみます。
A09Cエンジンは、従来のE13Cエンジンと併売されている次世代ダウンサイジングエンジンです。現在のところ、E13Cより馬力トルクとも若干落ちますが、エンジン重量が300kg程度軽く、実質の出力差は、そこまでないということをメーカでは訴求しています。今後の圧縮率低下と更なるハイブーストにより、馬力、トルク、燃料消費率とも、向上させて行く方向性を持っているとみます。
以下に、主な特徴などを記してみますが、写真や図と合わせて見て下さい。
①A09Cというとツインターボだけが目立ちますが、それ以前の注目点として、ダクタイル鋳鉄ピストンの採用があります。この鋳鉄ピストンは、船舶用大型ディーゼル(100rpm以下)では一般的だそうですが、1000rpmを超える現用高速ディーゼルエンジンでは採用例は少なかったそうです。20年程前にセラミックエンジンが話題になった次期がありました。いわゆる冷却不要の断熱エンジンだった訳ですが、これは見事に夢と消えました。しかし、このセラミック断熱エンジンの研究の過程で、日野では燃焼室を様々な条件で遮熱した各種試作エンジンでのエンジン性能や燃費を検証した結果、遮熱率が20%付近が最良の燃費が得られることが判ったとしています。
この鋳鉄遮熱ピストンは、日野ではP11C型より採用しており、以後、E13C、A09Cと継承されている様です。燃費以外の利点として、熱膨張が小さいために主に冷間時の側圧音(ピストンスラップ)の低減、トップランド厚の大幅低減によるデッドボリューム低減による排ガスと燃費の向上が可能になったとしています。また、鋳鉄化による重量化への対策として、大幅なコンプレッションハイト(ピストン頂部とピン間距離)の短縮や、各部の薄肉化を行ったとしています。コンプレションハイトについては、エンジン高さの低減に結び付くとしています。また、新旧の実部品を持ち比べると、明らかに小さい鋳鉄ピストンですが、圧倒的に大きなアルミピストンと同じ様な重さに感じます。
②ツインターボ機構
ツインターボですが、L6ですと小型タービンを3気筒づつ別々に並列に駆動する手法と、低速では小型タービンを、高速では小大2つのタービンをシーケンシャルに追加駆動する方式がありますが、A09Cは後者となります。なお、A09Cでは、インタークーラーも低速高速で分離独立しています。
ターボはエンジン右バンクに上下と装着されますが、上が低速用ターボで、加圧されたエアーは、上側インタークーラーで冷却され、高速用ターボ入口に戻って来ます。低速時は、上下タービン間のシャッターがサーボで閉じられており、高速用ターボコンプレッサーインペラ間を通過したエアーは、下側インタークーラーを通過し、インテークマニホールドに吸い込まれます。なお、インテークマニホールドは、各気筒独立しておらず、ヘッド内に分離ポートが内蔵されている様です。また、インテークマニホールド入口付近にはEGR(クールド)がサーボにより開閉制御され、必要時に給気にミックスする構造になっています。
右バンク上ターボ(低速用)の直ぐ後ろ、排気マニ出口の直前に排気ブレーキのバタフライユニットが装着されます。エア式だと思えるアクチュも直ぐ脇にあり、トラック系での整備性は良さそうに見えます。なお、排気マニ、上下ターボ、排気ブレーキなど、この辺りの総合マスはそこそこの重量になるでしょうが、加振による疲労防止でしょうが剛性確保のため、ブロック間を厚物鋳鉄製補強プレートで支えています。
③エンジン左バンクには上部にインテークマニホールドとコモンレールが見えるが、後ろ4気筒分はそのままヘッド内に貫通しており、前2気筒分が外から何らかのユニット経由でヘッドに入る様だが、この辺りは観察不足で良く判っていません。インマニ下にサプライポンプがあり、この駆動は、前部タイミングギヤ?により行っているようです。なお、サプライポンプ上(インマニ下部)にプライミングポンプが見えます。ECU(デンソー製)はブロック側面に直付けで、各種センサー類とのエンジンハーネスの短縮化による信頼性向上を優先しているのでしょう。
左後部はエアコンプレッサーと同軸対面にパワステオイルポンプがあり、これらを含めカムシャフトまでをギヤトレインで駆動していると想像します。
スターターモーターは極一般的なものだが、根元胴部が深く、プラネタリギヤ式のリダクション方式だろうと推察します。
④その他では、アルミ製オイルパンは非常にガッシリした作りであり、如何にも剛性が高そうに見えます。なお、オイルパン後部はベルハウンジングに密着する様にチューリップ状に広がった方式が多いが、このエンジンは旧来と同様だ。なお、その為もあり曲げ剛性低下を恐れスティフナープレートが左右一対で付きます。エアコンプレッサー上に一部見えている黒いパーツは、クローズドブリーザーという名称ですが、クランク室からのブローバイガスを油気分離し、油を戻し、気体はインテークするものでしょう。
ヘッドカバーもアルミだし、こんなとこにも樹脂がという、昨今の乗用車の流行の感は、このエンジンには見当たりません。ただ、インテーク系の太ジョントホースだが、高加給に備えてだろうが補強リングが入ったりしているのだが、色味から受ける印象だが、経時変化でどの程度まで持つのかちょっと不安を感じるといった感を持ちます。
※DPF(日野ではDPRと称す)
正直初めてセラミンク担体の内部を見ました。本当に細かい8角形のマス目で、その径は2Φあるかどうかというものです。ここまで細かくしなくちゃPMはトラップできないということと、詰まる訳だと思う次第です。
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以下に、主な特徴などを記してみますが、写真や図と合わせて見て下さい。
①A09Cというとツインターボだけが目立ちますが、それ以前の注目点として、ダクタイル鋳鉄ピストンの採用があります。この鋳鉄ピストンは、船舶用大型ディーゼル(100rpm以下)では一般的だそうですが、1000rpmを超える現用高速ディーゼルエンジンでは採用例は少なかったそうです。20年程前にセラミックエンジンが話題になった次期がありました。いわゆる冷却不要の断熱エンジンだった訳ですが、これは見事に夢と消えました。しかし、このセラミック断熱エンジンの研究の過程で、日野では燃焼室を様々な条件で遮熱した各種試作エンジンでのエンジン性能や燃費を検証した結果、遮熱率が20%付近が最良の燃費が得られることが判ったとしています。
この鋳鉄遮熱ピストンは、日野ではP11C型より採用しており、以後、E13C、A09Cと継承されている様です。燃費以外の利点として、熱膨張が小さいために主に冷間時の側圧音(ピストンスラップ)の低減、トップランド厚の大幅低減によるデッドボリューム低減による排ガスと燃費の向上が可能になったとしています。また、鋳鉄化による重量化への対策として、大幅なコンプレッションハイト(ピストン頂部とピン間距離)の短縮や、各部の薄肉化を行ったとしています。コンプレションハイトについては、エンジン高さの低減に結び付くとしています。また、新旧の実部品を持ち比べると、明らかに小さい鋳鉄ピストンですが、圧倒的に大きなアルミピストンと同じ様な重さに感じます。
②ツインターボ機構
ツインターボですが、L6ですと小型タービンを3気筒づつ別々に並列に駆動する手法と、低速では小型タービンを、高速では小大2つのタービンをシーケンシャルに追加駆動する方式がありますが、A09Cは後者となります。なお、A09Cでは、インタークーラーも低速高速で分離独立しています。
ターボはエンジン右バンクに上下と装着されますが、上が低速用ターボで、加圧されたエアーは、上側インタークーラーで冷却され、高速用ターボ入口に戻って来ます。低速時は、上下タービン間のシャッターがサーボで閉じられており、高速用ターボコンプレッサーインペラ間を通過したエアーは、下側インタークーラーを通過し、インテークマニホールドに吸い込まれます。なお、インテークマニホールドは、各気筒独立しておらず、ヘッド内に分離ポートが内蔵されている様です。また、インテークマニホールド入口付近にはEGR(クールド)がサーボにより開閉制御され、必要時に給気にミックスする構造になっています。
右バンク上ターボ(低速用)の直ぐ後ろ、排気マニ出口の直前に排気ブレーキのバタフライユニットが装着されます。エア式だと思えるアクチュも直ぐ脇にあり、トラック系での整備性は良さそうに見えます。なお、排気マニ、上下ターボ、排気ブレーキなど、この辺りの総合マスはそこそこの重量になるでしょうが、加振による疲労防止でしょうが剛性確保のため、ブロック間を厚物鋳鉄製補強プレートで支えています。
③エンジン左バンクには上部にインテークマニホールドとコモンレールが見えるが、後ろ4気筒分はそのままヘッド内に貫通しており、前2気筒分が外から何らかのユニット経由でヘッドに入る様だが、この辺りは観察不足で良く判っていません。インマニ下にサプライポンプがあり、この駆動は、前部タイミングギヤ?により行っているようです。なお、サプライポンプ上(インマニ下部)にプライミングポンプが見えます。ECU(デンソー製)はブロック側面に直付けで、各種センサー類とのエンジンハーネスの短縮化による信頼性向上を優先しているのでしょう。
左後部はエアコンプレッサーと同軸対面にパワステオイルポンプがあり、これらを含めカムシャフトまでをギヤトレインで駆動していると想像します。
スターターモーターは極一般的なものだが、根元胴部が深く、プラネタリギヤ式のリダクション方式だろうと推察します。
④その他では、アルミ製オイルパンは非常にガッシリした作りであり、如何にも剛性が高そうに見えます。なお、オイルパン後部はベルハウンジングに密着する様にチューリップ状に広がった方式が多いが、このエンジンは旧来と同様だ。なお、その為もあり曲げ剛性低下を恐れスティフナープレートが左右一対で付きます。エアコンプレッサー上に一部見えている黒いパーツは、クローズドブリーザーという名称ですが、クランク室からのブローバイガスを油気分離し、油を戻し、気体はインテークするものでしょう。
ヘッドカバーもアルミだし、こんなとこにも樹脂がという、昨今の乗用車の流行の感は、このエンジンには見当たりません。ただ、インテーク系の太ジョントホースだが、高加給に備えてだろうが補強リングが入ったりしているのだが、色味から受ける印象だが、経時変化でどの程度まで持つのかちょっと不安を感じるといった感を持ちます。
※DPF(日野ではDPRと称す)
正直初めてセラミンク担体の内部を見ました。本当に細かい8角形のマス目で、その径は2Φあるかどうかというものです。ここまで細かくしなくちゃPMはトラップできないということと、詰まる訳だと思う次第です。
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