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整備白書R2年より その4(零細さが生み出す限界)

2021-11-23 | 問題提起
整備白書R2年より その4(零細さが生み出す限界)
 最新版整備白書(R2年版)で、自整業の概要という集計表がある。今回は、この集計表を別添するが、ここから読み取れる、もしくは導ける数値を元に、整備工場の経営という視点で分析してみたい。

1.整備要員別の工場数
 これは整備白書では、専業、兼業、ディーラー、自家と4区分で分けて集計しているが、ここでは大きく特性の異なるディーラー以外とディーラーの2区分に分離して再集計したのが添付表だ。


 これを見て判るが、要員ランクA(A1とA2の加算値)となる10名以下の工場を、ディーラー以外とディーラーで比べると以下の通りだ。
・ディーラー以外工場ではでAクラス計で97.3%を占有している。それ以上の工場は、僅か2.7%しかない。
・ディーラー工場は、Aクラス計で86.4%を占有している。これにBを加算すると98.4%の占有となる。

 つまり、ディーラー工場では、ほぼ整備要員が10名程度が平均値であるが、ディーラー以外工場では、整備要員の中心は5名に満たない場合が多いことが読み取れる。このことは、整備工場総数の平均工員数4.4名という集計からも裏付けられる。

2.整備要員1人当り整備売上と原価
 先と同じく、整備白書の整備要員1人当りの整備売上と原価の表から、ディーラー意外とディーラーの2区分として再集計したものを添付表に示す。


 ここで注すべきは、工場総数91,500工場中、ディーラー以外工場計は75,200(82.2%)に対し、ディーラー工場は16,300(17.8%)という約5倍弱ディーラー以外工場数が多いことを前提としなければならない。

 ここで判ることは、あくまでも平均値ではあるが、整備売上の諸数値はディーラー以外工場はディーラーに比べ半減以下に留まるのが現状だと云うことだ。

 また、工賃売上以外の整備売上となる部品や外注売上も、ディラー以外工場はディーラーに比べ大きく見劣りする結果が出ている。

 この前提で、整備売上に占める工賃、部品、外注の比率を比べると、ディーラーはそれ以外工場に比べ、工賃比率が10ポイントほど低く、その代わり部品と外注の比率が10ポイント程度高い。しかも、部品と外注の粗利を比べると、ディーラーが部品で25ポイント、外注で7ポイント程度優位にあることが判る。

3.モデルケースとして整備総員10名の工場を前提としてのシミュレーション
 ここでは、先の整備要員1名当り売上と原価表および、その1で集計された、整備要員の給与を前提に年間工場運営に関わる費用を添付表にまとめた。なお、工員給与は、既に添付した自整業の概要値を準用し、間接人件費も同値を準用とし、工員数7名、間接員3名として計算した。


 また、工場費については、指定整備工場を前提に、工場建屋としては作業ベイ(スペース)8台、検査ライン、リフト3台、社有車として積載車1台+軽自動車サービスカー1台程度の工場で想定した。


 添付表を見てもらえば判る通り、ディーラー以外工場では、完全に破綻している訳だが、現実のこの様な工場を営んでいる場合もあるのだろう。その場合大きくは工場費がそもそも自家工場で建屋家賃の負担がないとか、積載車は欲しいところだが、我慢しているとか、間接要員の給与をもっと引き下げてるとかしてギリギリの経営を何とかしているのが実情なんだろうと想像する。

 次回は、労働時間の中には、工賃売上に寄与する直接作業時間と工賃売上に寄与しない間接時間とに別れ、この率を稼働率と呼んでいるが、その辺りのことや、整備工場で料金算出の基本となるレバーレートことなどに踏み込んで検討してみたい。


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