トヨタディーラー今年3回目の不正車検が発覚
トヨタ系列のディーラでは、3月のネッツトヨタ愛知、7月のレクサス高輪、今次9月のネッツトヨタ山梨と、半年の間に、いわゆる民間車検(指定整備工場)に関わる不正が発覚した。
3月の不正発覚により、トヨタ自動車の国内事業を統括部門では、社内に全店再点検の指示を行った様だが、いじれも車内からは問題点があったとの報告はなかった。
一方、国交省の・運輸支局は、トヨタの短時間車検が大きな要因になっていることを承知し、予め短時間車検を行っているディーラー工場に絞って抜き打ち監査を行い不正は発覚させている。
当件は、当初の愛知、東京のそれぞれでも述べ来たが、予めユーザーから予約を取り、ユーザーに待ってもらっている短時間(45分~1時間)で車検の整備と検査を行うもので、その標準作業時間というものに、ある意味車両メーカーの様な、極めて標準性が保たれるという思想に捕らわれて立案したんではないだろうか。
様々な企業戦略に戦争学とべき云えることを当てはめると判り易いので、以下それに沿って記す。
トヨタ自動車国内戦略部(大本営)は全国隷下のサービス部隊(各部隊)に短時間車検の戦略を指示すことになった。ここでは、大本営参謀が軍神たる章男総帥の意を担ぎ気上げ、総帥の指令として全国隷下の部隊に指示するのだが、ここで大きな戦略ミスが起きているのだろう。つまり、各戦こ攻略(個別の被車検車両)の損耗度を差異をことさら小さく見積、そこはその戦闘(整備)で4名体制と部隊の志気(やる気)で何とかなるだろうという程度の70年前の旧陸軍の思考だ。
一方、指示された各部隊では、個別実働部隊の店長、工場長、検査員などと、その実現性について、戦術打ち合わせを行なわれただろう。ここでは、一部異論も出たとは思うが、個別の被車検車両の損耗度など、標準条件のバラツキについては、もし生じた時にどのような応援戦術で対処するのかなど、あまり突き詰めないまま、まずは大本営の指令に沿うことが第1義として、戦闘行動は開始されたのだった。
そして、戦闘が始まると、足回りは各輪担当4名による作業などで万全の体制として行うが、あるクルマはバットを交換する、中にはハブボルトのネジ山損傷ありで見込み違いの戦力不足に陥るなど、戦闘は混乱を極めたのであった。こんな戦闘の中、工場長は適宜部隊の損耗だとか無理なく戦闘が継続されているかに、常に目配りしていれば、途上で部隊配置を変更するとか、臨時応援できる緊急援助班を作るとか、戦術の変更もできたと思うが、まずは売上という戦果を得ることを主張する現地司令官たる店長からは、精神論で叱咤激励を受けるのみで、止むなく見掛けの品質上はごまかせる検査の部分で、虚偽記載が恒常化してしまったというのは、あくまで想像だ。
何れにしても、トヨタ自動車としては、この短時間車検によるサービス売上の工場という戦略は、大きく見直す必用に迫られるだろう。
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ネッツトヨタ山梨で260台の不正車検
09月10日 20時35分 NHK 山梨
甲府市のトヨタ系列の自動車販売会社で、2年間にあわせて260台の車検で不正が行われていたことがわかり、会社は対象の車両の再検査を行うとともに、山梨運輸支局に報告し、原因を詳しく調べています。
甲府市の自動車販売会社「ネッツトヨタ山梨」によりますと、先月行われた山梨運輸支局の監査で指摘を受けて調査を行ったところ、おととし8月6日から先月6日までに「本社セイリア店」で行われた260台に対する車検で不正が行われていたことがわかったということです。
具体的には、スピードメーターの精度を調べる検査では法律に定められている方法で検査を行っていなかったほか、フロントタイヤの角度やヘッドライトの明るさ、ブレーキのきき具合を調べる検査では法律に定められている方法で検査を行っていなかった可能性があるということです。
また、排気ガスの成分を調べる検査は行っていなかった可能性があるということです。
会社は道路運送車両法に違反していることを認めたうえで、調査の結果を山梨運輸支局に報告し、対象の車両の所有者にダイレクトメールや電話で連絡をして無償で再検査を行っているということです。
「ネッツトヨタ山梨」は、「お客様、お取引先のみなさまに多大なるご迷惑、ご心配をおかけし心より深くおわび申し上げます。今回の問題の原因の究明と再発防止に向けた対策の実行に、全社一丸となって取り組んでまいります」としています。
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トヨタ、相次ぐ不正車検で「全店総点検」の切迫度・レクサス直営店でも発覚、軌道修正への難題
2021/07/29 5:30 東洋経済
「真面目にやっている店からすれば、はた迷惑な話だ」
トヨタモビリティ東京(TMT)の販売店・レクサス高輪(東京都港区)で発覚した565台の不正車検。東海地方のトヨタ販売店の店長は憤りを隠せない。トヨタ自動車系では3月にネッツトヨタ愛知の販売店で5000台を超える不正車検が発覚したばかりだ。
TMTは全国に258社あるトヨタ系販社で唯一の直営。しかも「おもてなし」をブランドの軸に据えるレクサス店で不正は起きた。直営販社が引き起こしたブランドの毀損行為に系列販社には衝撃が広がる。
「短時間車検」は章男氏が推進
今回の不正は6月に国土交通省関東運輸局が行った監査で発覚した。2019年6月から2021年6月末までに同店が実施した車検の約3分の1に当たり、4人の検査員が関わった。
排ガスの成分やスピードメーターの精度について必要な検査を実施しなかったり、ヘッドライトの明るさやパーキングブレーキの効き具合などについて検査の結果を改ざんしたりしていた。
TMTのレクサス高輪では車検の時間を2時間に設定していた。しかし、新車販売の増加に伴って、車検の入庫台数も拡大。土地柄、法人顧客が多く、急な整備依頼にも応じることが多かった。一方で人員や設備の増強が追い付かず、社員の負荷が慢性的に高まっていた。
「真面目にやっている店からすれば、はた迷惑な話だ」
トヨタモビリティ東京(TMT)の販売店・レクサス高輪(東京都港区)で発覚した565台の不正車検。東海地方のトヨタ販売店の店長は憤りを隠せない。トヨタ自動車系では3月にネッツトヨタ愛知の販売店で5000台を超える不正車検が発覚したばかりだ。
TMTは全国に258社あるトヨタ系販社で唯一の直営。しかも「おもてなし」をブランドの軸に据えるレクサス店で不正は起きた。直営販社が引き起こしたブランドの毀損行為に系列販社には衝撃が広がる。
今回の不正は6月に国土交通省関東運輸局が行った監査で発覚した。2019年6月から2021年6月末までに同店が実施した車検の約3分の1に当たり、4人の検査員が関わった。
排ガスの成分やスピードメーターの精度について必要な検査を実施しなかったり、ヘッドライトの明るさやパーキングブレーキの効き具合などについて検査の結果を改ざんしたりしていた。
TMTのレクサス高輪では車検の時間を2時間に設定していた。しかし、新車販売の増加に伴って、車検の入庫台数も拡大。土地柄、法人顧客が多く、急な整備依頼にも応じることが多かった。一方で人員や設備の増強が追いつかず、社員の負荷が慢性的に高まっていた。
車の状態は車種や走行距離によって違い、車検の作業時間は本来1台ごとに変える必要があったが、「時間内に仕上げることを最優先したことが不正につながった」(TMTの関島誠一社長)。
「短時間車検」は章男氏が推進
「時間の目的化」が不正を招いた構図はネッツトヨタ愛知と同じだ。同社は「45分車検」を展開していたが、不正を行った検査員は「過剰な入庫が常態化し、顧客を待たせないように一部の検査を省いてしまった」と話したという。
販売店に短時間車検の導入を促してきたのが、ほかならぬトヨタだった。トヨタの販売店では1990年代まで、顧客の車を1日以上預かって車検作業をするのが一般的だった。そこで当時国内営業の課長だった豊田章男・現社長は、顧客の不便を解消するため、TPS(トヨタ生産方式)を活用し、販売店における車検作業の効率化に着手した。
作業の手順を標準化することで、車検は最短45分で可能と判断。2000年代に入ってからは「その場で、車検」と銘打った短時間車検の導入を全国の販社に働きかけた。
しかし、店で掲げる車検の時間はあくまでも1つの基準でしかなく、正しく検査を行うことが大前提だ。短時間車検導入から約20年が経った今、その基本原則が現場にどこまで残っていたかは疑問だ。
7月20日の会見でトヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は、不正が見つかった2店舗について「時間(を守ること)だけが残ってしまったことがメーカーとして大きな反省だ」と述べた。そのうえで、「なぜ現場がそういった不正を行わざるをえなかったのか、実態を調べる必要がある」とし、全国の販売店を対象に7月末までに総点検を実施すると明かした。
「東京で不正?」発表前に駆け巡った噂
7月20日の会見に出席したトヨタモビリティ東京(TMT)の関島誠一社長 (左)と、トヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長(記者撮影)
トヨタは会見があった20日、「全店舗総点検」について全国の販社に通達した。指定整備工場を持つ約4600店を対象に点検を行う。内容は車検業務に加え、整備士の労働環境や意見の言いやすさなどまで、計58項目に及ぶ。
通達では、点検はトヨタの担当者が同席して1店舗につき4時間かけて行うとされているが、7月末が期限で猶予はわずか10日ほど。前出のトヨタ販売店店長は「新型『アクア』の発売直後で忙しいのに、直営販社の不祥事がきっかけの総点検はとばっちりだ」と不満を漏らす。「期限に間に合わせるのはそうとう厳しい」(前出のトヨタ系販社の幹部)との懸念もある。
実はこの通達が出る4日前の7月16日には、「お客様からの信頼を守るためのさらなる緊急の取り組みについて」と題した文書がトヨタから販社に送られていた。7月17日から19日まで各販社1店舗の緊急点検を求めるもので、「さらなる」というのは、ネッツトヨタ愛知の不正車検発覚後に緊急点検を実施したことを踏まえた文言だ。
点検項目は車検に関連する21項目。切迫度の高い通達に各地の系列販社は情報収集に走り、「東京で不正車検があったようだ」との噂も駆け巡った。
トヨタがここまで点検を急ぐのには理由がある。ネッツトヨタ愛知の不正発覚後、TMTが行った自主点検では不正を見つけ出せず、運輸局からの指摘で初めてわかった。「ネッツ愛知の教訓が生かせなかったことを反省している」(トヨタ幹部)。後手に回る事態を避けたいとの思いが透ける。また、自分が使う店は大丈夫かとの顧客の不安を早期に解消する必要もある。
「全車種併売化」で競争激化
トヨタは車検の入庫台数や新車販売台数を基準とした現在の販売店表彰制度について、今後ゼロベースで見直す方針だ。ただ、軌道修正は容易なことではない。
2020年5月、トヨタは国内販売4チャネル(「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」)を実質一本化する「全車種併売化」に踏み切った。従来は各チャネルが専売車種を持ち、一定のすみ分けをしていたが、併売化後はすべての車種を取り扱えるようになった。
この結果起きたのが系列販社同士の競争激化だ。「乱売傾向が強くなり、新車販売時に大幅値引きするようになった。中長期的には無理な入庫(車検の獲得)につながりかねない」とトヨタ系販社の幹部は話す。新車販売の一般的な利益率は1割程度なのに対し、車検は3~4割と高い。値引きにより新車販売で収益を削った分を、車検で取り返す動きが出ることを懸念しているのだ。
さらに今後は新車市場の縮小が避けられず、販売店にとって車検による収益はより貴重になる。この幹部は「トヨタ車ユーザーがトヨタ系販売店での車検に求めるのは安心・安全・信頼。ただ、その当たり前を(車検専門業者などとの)差別化に使うのは難しい。結局は時間が目的化してしまう」と葛藤する。
トヨタは登録車販売のシェアが20年度に初めて50%を超えた。国内市場で独り勝ちの中、露呈した今回のほころび。
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短時間車検・そもそもムリがあるのではないのかという意見表明
2021-04-15 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/eea4e17befd98dd4a852fee6634ae117
トヨタ系列のディーラでは、3月のネッツトヨタ愛知、7月のレクサス高輪、今次9月のネッツトヨタ山梨と、半年の間に、いわゆる民間車検(指定整備工場)に関わる不正が発覚した。
3月の不正発覚により、トヨタ自動車の国内事業を統括部門では、社内に全店再点検の指示を行った様だが、いじれも車内からは問題点があったとの報告はなかった。
一方、国交省の・運輸支局は、トヨタの短時間車検が大きな要因になっていることを承知し、予め短時間車検を行っているディーラー工場に絞って抜き打ち監査を行い不正は発覚させている。
当件は、当初の愛知、東京のそれぞれでも述べ来たが、予めユーザーから予約を取り、ユーザーに待ってもらっている短時間(45分~1時間)で車検の整備と検査を行うもので、その標準作業時間というものに、ある意味車両メーカーの様な、極めて標準性が保たれるという思想に捕らわれて立案したんではないだろうか。
様々な企業戦略に戦争学とべき云えることを当てはめると判り易いので、以下それに沿って記す。
トヨタ自動車国内戦略部(大本営)は全国隷下のサービス部隊(各部隊)に短時間車検の戦略を指示すことになった。ここでは、大本営参謀が軍神たる章男総帥の意を担ぎ気上げ、総帥の指令として全国隷下の部隊に指示するのだが、ここで大きな戦略ミスが起きているのだろう。つまり、各戦こ攻略(個別の被車検車両)の損耗度を差異をことさら小さく見積、そこはその戦闘(整備)で4名体制と部隊の志気(やる気)で何とかなるだろうという程度の70年前の旧陸軍の思考だ。
一方、指示された各部隊では、個別実働部隊の店長、工場長、検査員などと、その実現性について、戦術打ち合わせを行なわれただろう。ここでは、一部異論も出たとは思うが、個別の被車検車両の損耗度など、標準条件のバラツキについては、もし生じた時にどのような応援戦術で対処するのかなど、あまり突き詰めないまま、まずは大本営の指令に沿うことが第1義として、戦闘行動は開始されたのだった。
そして、戦闘が始まると、足回りは各輪担当4名による作業などで万全の体制として行うが、あるクルマはバットを交換する、中にはハブボルトのネジ山損傷ありで見込み違いの戦力不足に陥るなど、戦闘は混乱を極めたのであった。こんな戦闘の中、工場長は適宜部隊の損耗だとか無理なく戦闘が継続されているかに、常に目配りしていれば、途上で部隊配置を変更するとか、臨時応援できる緊急援助班を作るとか、戦術の変更もできたと思うが、まずは売上という戦果を得ることを主張する現地司令官たる店長からは、精神論で叱咤激励を受けるのみで、止むなく見掛けの品質上はごまかせる検査の部分で、虚偽記載が恒常化してしまったというのは、あくまで想像だ。
何れにしても、トヨタ自動車としては、この短時間車検によるサービス売上の工場という戦略は、大きく見直す必用に迫られるだろう。
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ネッツトヨタ山梨で260台の不正車検
09月10日 20時35分 NHK 山梨
甲府市のトヨタ系列の自動車販売会社で、2年間にあわせて260台の車検で不正が行われていたことがわかり、会社は対象の車両の再検査を行うとともに、山梨運輸支局に報告し、原因を詳しく調べています。
甲府市の自動車販売会社「ネッツトヨタ山梨」によりますと、先月行われた山梨運輸支局の監査で指摘を受けて調査を行ったところ、おととし8月6日から先月6日までに「本社セイリア店」で行われた260台に対する車検で不正が行われていたことがわかったということです。
具体的には、スピードメーターの精度を調べる検査では法律に定められている方法で検査を行っていなかったほか、フロントタイヤの角度やヘッドライトの明るさ、ブレーキのきき具合を調べる検査では法律に定められている方法で検査を行っていなかった可能性があるということです。
また、排気ガスの成分を調べる検査は行っていなかった可能性があるということです。
会社は道路運送車両法に違反していることを認めたうえで、調査の結果を山梨運輸支局に報告し、対象の車両の所有者にダイレクトメールや電話で連絡をして無償で再検査を行っているということです。
「ネッツトヨタ山梨」は、「お客様、お取引先のみなさまに多大なるご迷惑、ご心配をおかけし心より深くおわび申し上げます。今回の問題の原因の究明と再発防止に向けた対策の実行に、全社一丸となって取り組んでまいります」としています。
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トヨタ、相次ぐ不正車検で「全店総点検」の切迫度・レクサス直営店でも発覚、軌道修正への難題
2021/07/29 5:30 東洋経済
「真面目にやっている店からすれば、はた迷惑な話だ」
トヨタモビリティ東京(TMT)の販売店・レクサス高輪(東京都港区)で発覚した565台の不正車検。東海地方のトヨタ販売店の店長は憤りを隠せない。トヨタ自動車系では3月にネッツトヨタ愛知の販売店で5000台を超える不正車検が発覚したばかりだ。
TMTは全国に258社あるトヨタ系販社で唯一の直営。しかも「おもてなし」をブランドの軸に据えるレクサス店で不正は起きた。直営販社が引き起こしたブランドの毀損行為に系列販社には衝撃が広がる。
「短時間車検」は章男氏が推進
今回の不正は6月に国土交通省関東運輸局が行った監査で発覚した。2019年6月から2021年6月末までに同店が実施した車検の約3分の1に当たり、4人の検査員が関わった。
排ガスの成分やスピードメーターの精度について必要な検査を実施しなかったり、ヘッドライトの明るさやパーキングブレーキの効き具合などについて検査の結果を改ざんしたりしていた。
TMTのレクサス高輪では車検の時間を2時間に設定していた。しかし、新車販売の増加に伴って、車検の入庫台数も拡大。土地柄、法人顧客が多く、急な整備依頼にも応じることが多かった。一方で人員や設備の増強が追い付かず、社員の負荷が慢性的に高まっていた。
「真面目にやっている店からすれば、はた迷惑な話だ」
トヨタモビリティ東京(TMT)の販売店・レクサス高輪(東京都港区)で発覚した565台の不正車検。東海地方のトヨタ販売店の店長は憤りを隠せない。トヨタ自動車系では3月にネッツトヨタ愛知の販売店で5000台を超える不正車検が発覚したばかりだ。
TMTは全国に258社あるトヨタ系販社で唯一の直営。しかも「おもてなし」をブランドの軸に据えるレクサス店で不正は起きた。直営販社が引き起こしたブランドの毀損行為に系列販社には衝撃が広がる。
今回の不正は6月に国土交通省関東運輸局が行った監査で発覚した。2019年6月から2021年6月末までに同店が実施した車検の約3分の1に当たり、4人の検査員が関わった。
排ガスの成分やスピードメーターの精度について必要な検査を実施しなかったり、ヘッドライトの明るさやパーキングブレーキの効き具合などについて検査の結果を改ざんしたりしていた。
TMTのレクサス高輪では車検の時間を2時間に設定していた。しかし、新車販売の増加に伴って、車検の入庫台数も拡大。土地柄、法人顧客が多く、急な整備依頼にも応じることが多かった。一方で人員や設備の増強が追いつかず、社員の負荷が慢性的に高まっていた。
車の状態は車種や走行距離によって違い、車検の作業時間は本来1台ごとに変える必要があったが、「時間内に仕上げることを最優先したことが不正につながった」(TMTの関島誠一社長)。
「短時間車検」は章男氏が推進
「時間の目的化」が不正を招いた構図はネッツトヨタ愛知と同じだ。同社は「45分車検」を展開していたが、不正を行った検査員は「過剰な入庫が常態化し、顧客を待たせないように一部の検査を省いてしまった」と話したという。
販売店に短時間車検の導入を促してきたのが、ほかならぬトヨタだった。トヨタの販売店では1990年代まで、顧客の車を1日以上預かって車検作業をするのが一般的だった。そこで当時国内営業の課長だった豊田章男・現社長は、顧客の不便を解消するため、TPS(トヨタ生産方式)を活用し、販売店における車検作業の効率化に着手した。
作業の手順を標準化することで、車検は最短45分で可能と判断。2000年代に入ってからは「その場で、車検」と銘打った短時間車検の導入を全国の販社に働きかけた。
しかし、店で掲げる車検の時間はあくまでも1つの基準でしかなく、正しく検査を行うことが大前提だ。短時間車検導入から約20年が経った今、その基本原則が現場にどこまで残っていたかは疑問だ。
7月20日の会見でトヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は、不正が見つかった2店舗について「時間(を守ること)だけが残ってしまったことがメーカーとして大きな反省だ」と述べた。そのうえで、「なぜ現場がそういった不正を行わざるをえなかったのか、実態を調べる必要がある」とし、全国の販売店を対象に7月末までに総点検を実施すると明かした。
「東京で不正?」発表前に駆け巡った噂
7月20日の会見に出席したトヨタモビリティ東京(TMT)の関島誠一社長 (左)と、トヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長(記者撮影)
トヨタは会見があった20日、「全店舗総点検」について全国の販社に通達した。指定整備工場を持つ約4600店を対象に点検を行う。内容は車検業務に加え、整備士の労働環境や意見の言いやすさなどまで、計58項目に及ぶ。
通達では、点検はトヨタの担当者が同席して1店舗につき4時間かけて行うとされているが、7月末が期限で猶予はわずか10日ほど。前出のトヨタ販売店店長は「新型『アクア』の発売直後で忙しいのに、直営販社の不祥事がきっかけの総点検はとばっちりだ」と不満を漏らす。「期限に間に合わせるのはそうとう厳しい」(前出のトヨタ系販社の幹部)との懸念もある。
実はこの通達が出る4日前の7月16日には、「お客様からの信頼を守るためのさらなる緊急の取り組みについて」と題した文書がトヨタから販社に送られていた。7月17日から19日まで各販社1店舗の緊急点検を求めるもので、「さらなる」というのは、ネッツトヨタ愛知の不正車検発覚後に緊急点検を実施したことを踏まえた文言だ。
点検項目は車検に関連する21項目。切迫度の高い通達に各地の系列販社は情報収集に走り、「東京で不正車検があったようだ」との噂も駆け巡った。
トヨタがここまで点検を急ぐのには理由がある。ネッツトヨタ愛知の不正発覚後、TMTが行った自主点検では不正を見つけ出せず、運輸局からの指摘で初めてわかった。「ネッツ愛知の教訓が生かせなかったことを反省している」(トヨタ幹部)。後手に回る事態を避けたいとの思いが透ける。また、自分が使う店は大丈夫かとの顧客の不安を早期に解消する必要もある。
「全車種併売化」で競争激化
トヨタは車検の入庫台数や新車販売台数を基準とした現在の販売店表彰制度について、今後ゼロベースで見直す方針だ。ただ、軌道修正は容易なことではない。
2020年5月、トヨタは国内販売4チャネル(「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」)を実質一本化する「全車種併売化」に踏み切った。従来は各チャネルが専売車種を持ち、一定のすみ分けをしていたが、併売化後はすべての車種を取り扱えるようになった。
この結果起きたのが系列販社同士の競争激化だ。「乱売傾向が強くなり、新車販売時に大幅値引きするようになった。中長期的には無理な入庫(車検の獲得)につながりかねない」とトヨタ系販社の幹部は話す。新車販売の一般的な利益率は1割程度なのに対し、車検は3~4割と高い。値引きにより新車販売で収益を削った分を、車検で取り返す動きが出ることを懸念しているのだ。
さらに今後は新車市場の縮小が避けられず、販売店にとって車検による収益はより貴重になる。この幹部は「トヨタ車ユーザーがトヨタ系販売店での車検に求めるのは安心・安全・信頼。ただ、その当たり前を(車検専門業者などとの)差別化に使うのは難しい。結局は時間が目的化してしまう」と葛藤する。
トヨタは登録車販売のシェアが20年度に初めて50%を超えた。国内市場で独り勝ちの中、露呈した今回のほころび。
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短時間車検・そもそもムリがあるのではないのかという意見表明
2021-04-15 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/eea4e17befd98dd4a852fee6634ae117