国交省批判(中小零細バス事業者掃討作戦に怒る)
バス事故のことで、グループ主の思いとは乖離しますが、バス事業に関わる者として、現状の国交省のあり方への違和感を持つ意見を記して、皆に認識してもらいたく、お許し願いたい。
3年前に生じた軽井沢バス事故以後、何かに付けては同バス事故対策に理由付け、国交省におけるバス事業の指導監督は著しく強まったのは確かでしょう。これは、営業用貨物でも同様なのでしょうが、規制緩和として許認可を大幅に弛め、多数の零細バス事業者を生み出すことになったのですが、法令に定められた各種事項を遵守しない(もしくはしきれない)事業者が多数生じることとなってしまったのです。それが、急転直下の如く、臨時(抜き打ち)監査(営業事務所を対象としたもの)や路上監査(出発地付近で待機中のバス臨場監査)、また各種報告事項の大幅増加などが要求される様になりました。そして、少しでも違反が見つかれば、罰則の適用(罰則の軽重に応じバスの運行停止を命じる)がなされます。これは、ある意味零細業者の掃討作戦と感じているのは、単に被害者意識だけはないと思っているところです。
なお、昨今の国交省の文書は、冒頭に軽井沢バス事故を踏まえてと記している場合が多いのですが、その軽井沢バス事故の明確な分析がなされてぬまま、雰囲気でこうなのだと理由付けている文書は、論理に欠けていると感じるところでもあります。何故、事故は、しかるべきして起こったのであって、こういう運転に注意なさい、運行管理者はこういう指導しなさいと指導できないものかと、頭の良い行政官が揃っているはずなのに不思議なことです。
一方、バス事業と離れますが、整備事業者(特に国の検査を代行する指定工場)にも監査を行い、不備や不正を見つけると、指定の取り消しや場合によっては、検査員や経営者の刑事告発までを行っているいる訳です。ところが、近年大問題になった、日産自動車の新車検査の不適正事件や三菱自動車の燃費データ虚偽報告事件についての国交省の処分は、「厳重注意」だけで何ら企業活動に直接制限を与える処罰がなされていないのです。これは、法の平等というという面において、明かな不公平を生じているといって過言ではないでしょう。
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私が想定する軽井沢バス事故
2016年1月15日未明に生じた軽井沢バス事故ですが、上空写真より大まかにカーブ半径を読み取ると、400R程度のものでしょう。速度はタコグラフ(運行記録計)から100km/h弱と聞こえています。カーブ曲率を少なめの300Rとし、速度を100km/h(33.3m/sec)としたときの求心加速度は0.37Gとなり、タイヤのμ(摩擦係数)と比較すれば、一般論として限界となる0.7Gと比し、大幅に余裕があります。つまり何事もなく、カーブに沿ってステアリングをゆっくり切り込んでいく、いわゆる定状円旋回に近い状態であれば、多少のアンダーステアが強まるかもしれませんが、バス故の超リヤヘビーによるオーバーステアに陥ることもなく、まったく余裕で旋回できる曲率だろうと想像されます。
しかるに事故は生じたのです。これは、事故発生の左カーブ手前の右カーブのガードレールに接触痕があり、事故車は左前部を接触したことが推察されるのです。驚いた運転者は、とっさに右へのステアリングの切り増しを行ったはずです。そして、続く左カーブへの反転操舵と、たぶん減速しようとブレーキペダルを強めに踏みながらのものであったと思えます。しかも、カーブに沿ってゆっくり切り込むべきべきものを、必用を越えて急速度で切り込んだ(過大ゲイン)のではないでしょうか。ここまでやると、FR乗用車でも、荷重移動と必要以上のコーナーリングフォースの立ち上がりで、後輪ドリフトが生じます。(いわゆる慣性ドリフト状態)しかも、大型バスでは前3に対し後ろ7という超リヤヘビーの荷重分布が故、後輪がドリフトアウトしたのでしょう。そして、後側面で広範囲にガードレールを薙ぎ倒しつつ、車体はカーブ外方向へ速度成分を有したまま、道路外側の法面を横転し、ルーフ部が太い立木に当たり大変形を生じたという不幸な事故なのです。
この事故後、何度も云われていることですが、マイクロバスしか運転したことがない大型免許所持者が、慣れない12mフル規格の大型観光バスを運転したこと自体が大きな要因となったのであろうことは想像できます。ベテラン大型観光バス運転者なら、例え最初の接触事故があったところで、またカーブ曲率半径から想定しても、適切なハンドル操作と、ブレーキは踏んだにしても弱めであろうし、十分旋回は完了していたというのが私見なのです。
追記
本事故について、直後より国沢光宏なる自動車評論家らしいのが、再三ブレーキが効かなかった説を記しており気になるので付言しておきます。同氏の記事では、元運転手の報告として引き、エアブレーキ配管が氷結して云々(うんぬん)を追認していますが、まったく起こり得る現象ではないと判断します。
大型バスの高圧エア(800-900KPa)はブレーキだけでなく、サスペンション、トランスミッション、クラッチ、乗降口扉、他と多用されますが、複数以上のエアタンクが使用されています。修理工場などで利用されるエアコンプレッサーと付属するタンク内に凝水が溜まるのと同様に、バスのエアタンクもタンク毎に擬水抜きとり用のバルブが用意され、ワイヤーを引くことで行える構造となっています。(これは運行前の日常点検項目)また、エアドライヤーの装備も記してある通りです。しかし、擬水はいきなり短時間に溜まるものではないし、しかも溜まるのはタンクの底部だけです。そこが凍結することはあるでしょうが、エア経路となる配管内や各バルブ部で、閉塞すべき凍結が起こることはちょっと考え難いでしょう。そこまで、寒冷時のエアブレーキが信頼性に劣るなら、シベリアとかアラスカなど極寒地において、大型車で大惨事が起きているでしょうが、そんな話は聞いたこともないのです。
バス事故のことで、グループ主の思いとは乖離しますが、バス事業に関わる者として、現状の国交省のあり方への違和感を持つ意見を記して、皆に認識してもらいたく、お許し願いたい。
3年前に生じた軽井沢バス事故以後、何かに付けては同バス事故対策に理由付け、国交省におけるバス事業の指導監督は著しく強まったのは確かでしょう。これは、営業用貨物でも同様なのでしょうが、規制緩和として許認可を大幅に弛め、多数の零細バス事業者を生み出すことになったのですが、法令に定められた各種事項を遵守しない(もしくはしきれない)事業者が多数生じることとなってしまったのです。それが、急転直下の如く、臨時(抜き打ち)監査(営業事務所を対象としたもの)や路上監査(出発地付近で待機中のバス臨場監査)、また各種報告事項の大幅増加などが要求される様になりました。そして、少しでも違反が見つかれば、罰則の適用(罰則の軽重に応じバスの運行停止を命じる)がなされます。これは、ある意味零細業者の掃討作戦と感じているのは、単に被害者意識だけはないと思っているところです。
なお、昨今の国交省の文書は、冒頭に軽井沢バス事故を踏まえてと記している場合が多いのですが、その軽井沢バス事故の明確な分析がなされてぬまま、雰囲気でこうなのだと理由付けている文書は、論理に欠けていると感じるところでもあります。何故、事故は、しかるべきして起こったのであって、こういう運転に注意なさい、運行管理者はこういう指導しなさいと指導できないものかと、頭の良い行政官が揃っているはずなのに不思議なことです。
一方、バス事業と離れますが、整備事業者(特に国の検査を代行する指定工場)にも監査を行い、不備や不正を見つけると、指定の取り消しや場合によっては、検査員や経営者の刑事告発までを行っているいる訳です。ところが、近年大問題になった、日産自動車の新車検査の不適正事件や三菱自動車の燃費データ虚偽報告事件についての国交省の処分は、「厳重注意」だけで何ら企業活動に直接制限を与える処罰がなされていないのです。これは、法の平等というという面において、明かな不公平を生じているといって過言ではないでしょう。
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私が想定する軽井沢バス事故
2016年1月15日未明に生じた軽井沢バス事故ですが、上空写真より大まかにカーブ半径を読み取ると、400R程度のものでしょう。速度はタコグラフ(運行記録計)から100km/h弱と聞こえています。カーブ曲率を少なめの300Rとし、速度を100km/h(33.3m/sec)としたときの求心加速度は0.37Gとなり、タイヤのμ(摩擦係数)と比較すれば、一般論として限界となる0.7Gと比し、大幅に余裕があります。つまり何事もなく、カーブに沿ってステアリングをゆっくり切り込んでいく、いわゆる定状円旋回に近い状態であれば、多少のアンダーステアが強まるかもしれませんが、バス故の超リヤヘビーによるオーバーステアに陥ることもなく、まったく余裕で旋回できる曲率だろうと想像されます。
しかるに事故は生じたのです。これは、事故発生の左カーブ手前の右カーブのガードレールに接触痕があり、事故車は左前部を接触したことが推察されるのです。驚いた運転者は、とっさに右へのステアリングの切り増しを行ったはずです。そして、続く左カーブへの反転操舵と、たぶん減速しようとブレーキペダルを強めに踏みながらのものであったと思えます。しかも、カーブに沿ってゆっくり切り込むべきべきものを、必用を越えて急速度で切り込んだ(過大ゲイン)のではないでしょうか。ここまでやると、FR乗用車でも、荷重移動と必要以上のコーナーリングフォースの立ち上がりで、後輪ドリフトが生じます。(いわゆる慣性ドリフト状態)しかも、大型バスでは前3に対し後ろ7という超リヤヘビーの荷重分布が故、後輪がドリフトアウトしたのでしょう。そして、後側面で広範囲にガードレールを薙ぎ倒しつつ、車体はカーブ外方向へ速度成分を有したまま、道路外側の法面を横転し、ルーフ部が太い立木に当たり大変形を生じたという不幸な事故なのです。
この事故後、何度も云われていることですが、マイクロバスしか運転したことがない大型免許所持者が、慣れない12mフル規格の大型観光バスを運転したこと自体が大きな要因となったのであろうことは想像できます。ベテラン大型観光バス運転者なら、例え最初の接触事故があったところで、またカーブ曲率半径から想定しても、適切なハンドル操作と、ブレーキは踏んだにしても弱めであろうし、十分旋回は完了していたというのが私見なのです。
追記
本事故について、直後より国沢光宏なる自動車評論家らしいのが、再三ブレーキが効かなかった説を記しており気になるので付言しておきます。同氏の記事では、元運転手の報告として引き、エアブレーキ配管が氷結して云々(うんぬん)を追認していますが、まったく起こり得る現象ではないと判断します。
大型バスの高圧エア(800-900KPa)はブレーキだけでなく、サスペンション、トランスミッション、クラッチ、乗降口扉、他と多用されますが、複数以上のエアタンクが使用されています。修理工場などで利用されるエアコンプレッサーと付属するタンク内に凝水が溜まるのと同様に、バスのエアタンクもタンク毎に擬水抜きとり用のバルブが用意され、ワイヤーを引くことで行える構造となっています。(これは運行前の日常点検項目)また、エアドライヤーの装備も記してある通りです。しかし、擬水はいきなり短時間に溜まるものではないし、しかも溜まるのはタンクの底部だけです。そこが凍結することはあるでしょうが、エア経路となる配管内や各バルブ部で、閉塞すべき凍結が起こることはちょっと考え難いでしょう。そこまで、寒冷時のエアブレーキが信頼性に劣るなら、シベリアとかアラスカなど極寒地において、大型車で大惨事が起きているでしょうが、そんな話は聞いたこともないのです。