私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

あれから30年

2015-08-17 | コラム
 あれからとは、日航ジャンボの御巣鷹への墜落事故のことです。1985年8月12日19時頃の出来事でした。折から帰省ラッシュでジャンボはほぼ満席、奇跡的に4名だけが助かり520名もの死者を生み出したのです。この事故原因(異論もある様ですが)は、公式に発表されている内容は、以前の尻もち事故でボーイング社が行った修理に瑕疵があり、後部圧力隔壁がはじけ飛び、それに伴い尾翼や方向舵の損傷を生じ、合わせてこれらの舵を駆動する油圧4系統の配管が開放されてしまったことにより、全油圧がゼロとなり主翼の舵も含め、まったく操縦不能に陥ってしまったことにあると聞きます。

 ところで、機械製品(発電などプラントや薬品などにも摘要される)には、安全率という概念が設計時点で取り入られています。その部材が負担すると予測される応力に対する最大負荷応力の比のことです。クルマ等の機械製品は、車種や部位にもよりますが、5とか10とかいう値以上となるのでしょう。ところが、同じ乗り物でも航空機となると、安全率は1.1とか1.3とか極端に小さな値になるのが通例だそうです。これは、安全率を高めに設定すると、重くて飛べなくなることや、より大型エンジンで燃費が悪化し過ぎることにあるのでしょう。クルマでも、限られた距離を走るレーシングカーも同様と思います。この様な安全率の低さは、頻繁で厳重な点検整備と検査によってカバーすると云われます。しかし、日航ジャンボの例でも、圧力隔壁の修理の瑕疵は見逃され、事故に至っています。そもそも小型機ならともかく、ジャンボジェットみたいな大型機で、その構造的に閉断面部位もかなりあるはずのものを、それらの全てを隈無く点検できるかとなると難しい問題と想像されます。

 航空機の世界もエアバスA380やボーイング787など、ドライカーボン材がかなり使用されて来ています。787に至っては、胴体部分を輪切りに一体成形している様です。長尺炭素繊維をエポキシ樹脂で焼き固めたもので、確かに強度は格段に上がり、軽量化に結び付いているのでしょう。しかし、これはまったくの私見となりますが、カーボン繊維は問題はないが、樹脂は経年劣化の問題がある様に思えてなりません。外板表面は塗装等コーティングにより紫外線や水分からの劣化を押さえることが出来るでしょう。しかし、繰り返し応力が集中する部分には、マイクロクラックと呼ばれる樹脂のヒビ割れを生じると聞きます。高価な旅客機、新機導入後少なくとも20年は運行されるのでしょう。新素材を採用するに当たり、経年劣化の問題も検討はなされたのでしょうが、先の安全率の低さと頻繁な点検整備の例の如く、その限界は見えている様に思えるのです。

↓7年前の今日、日航ジャンボのことを書いていました。

日航ジャンボ墜落事故から23年目の夏
http://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/136b5c4064225322f3005d11dd30e314

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