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米国・修理する権利を法案可決

2021-07-26 | コラム
米国・修理する権利を法案可決
 これは、日頃疑問視していた、様々な機器が、事実上所有者の修理を制限するかの様な世の動きに、反旗を翻す判決として注目したい。長文だが、yahooニュースは直ぐリンク切れをしょうじることもあり、全文を転載する。

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米国で「修理する権利」を認める法律が可決、それでもメーカー側の反発は止まらない
7/25(日) 12:44配信 WIRED.jp
ISRAEL SEBASTIAN/GETTY IMAGES

米連邦取引委員会(FTC)が公開会合を7月21日(米国時間)に開き、「修理する権利」に関する法律の施行を全会一致で可決した。これにより、米国の消費者が独自に電子機器や自動車を修理できるようになる。

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これまで「修理する権利」は超党派で取り組まれてきた問題であり、FTC自身も5月に長文の報告書を発表してメーカーによる修理の制限を非難していた。そこからも、FTCが規則を承認したことは驚きに値しない。一方で、賛成5票で全会一致に至ったという事実は、消費者保証に関する重要な法律であるマグナソンモス保証法と連邦反トラスト法の施行へ向けた個人用デヴァイスの修理を巡るFTCの決意を示すものである。

FTCの新任委員長で技術評論家として知られるリナ・カーンが主導した今回の採択に先立つ12日前、ジョー・バイデン大統領は米国経済の競争促進を目的とした広範な大統領令に署名した。この大統領令は、銀行、航空会社、ハイテク企業など、幅広い業界を対象としている。そしてその一部は、独立機関として活動するFTCに対し、企業が消費者の修理の選択肢を制限することを防ぐための新しい規則をつくるよう促している。

「50万ドルのトラクターであれ1,000ドルの携帯電話であれ、高価な製品を購入すると消費者は実質的にメーカーの支配下に置かれます」と、米国家経済会議に所属する大統領特別補佐官(技術・競争政策担当)のティム・ウーは語る。「メーカーに理不尽な修理明細を提示された場合、できることは多くありません」

さらにウーは、「修理する権利」が労働者や消費者、中小企業、大企業の間に存在する感情面での大きな不均衡の現れになっていると指摘する。

複雑化してきた問題
今回のFTCの採択は、米国内の「修理する権利」を巡る運動にとって新たな勝利と言っていい。この運動は、米国公共利益調査グループなどの消費者団体や、ガジェットの修理キットを販売したりDIY愛好家向けの修理マニュアルを発行したりしているiFixitのような民間企業が主導するものだ。

「修理する権利」の推進派は、スマートフォンやトラクターなど、自分が所有する製品を修理するために必要な工具、部品、説明書、ソフトウェアを消費者が入手できるようにすべきだと長らく主張してきた。またこれらの団体は、大手メーカーが製品の自主的な修理を妨害あるいは制限したり、直接メーカーに修理を依頼することを消費者に強いた上で、割増料金を請求したりするような事例をいち早く指摘してきた。

これはスマートフォンの背面ガラスが割れたり、非常に小さなスマートウォッチを修理したりする場合だけの問題ではない。2020年春に新型コロナウイルスが大流行した際、医療機器のエンジニアたちは、人工呼吸器などの重要な機器の修理用具が危機的状況下で入手できないことの危険性を訴え始めたのだ。

スマートフォンや冷蔵庫、自動車など、インターネット接続機能を備えた製品が増えるにつれ、「修理する権利」の問題はますます複雑化している。

「修理する権利」を支持する人々の主張はこうだ。消費者は個人用デヴァイスが収集するすべてのデータにアクセスできるべきであり、また独立した修理店は“正規”の修理店が所有するものと同様のソフトウェア診断ツールを利用できるべきである──。

「Securepairs.org」の創設者であるポール・ロバーツは、今回の会合でパブリックコメントとして次のように語っている。「FTCには、その規則制定権をもって基本的な消費者の権利および私有財産権を強化するとともに、メーカーが何億人ものテクノロジーの所有者を自分たちの“物件の賃借人”に仕立て上げようと試みているデジタル時代を踏まえ、これらの権利を向上させることを強く求めます。デジタル修理権は、電子機器の寿命を延ばすための重要なツールなのです」

メーカー側は反発
ところが、一部の大手メーカーはこの考え方に反対している。製品の安全性が低下し、消費者が安全上のリスクに晒される可能性があると主張しているのだ。世界有数のトラクターブランド「ジョンディア」で知られるディア・アンド・カンパニーは、「機器の安全な動作、排ガス規制、エンジンの性能に関連するリスクがあることから、組み込みソフトウェアを修正する権利を支持しない」との声明を発表している。

今回のFTCの公聴会では、米国屋外動力機械協会(Outdoor Power Equipment Institute)の代表が次のようにコメントした。「修理する権利の規則案は、業界の製品に関する消費者の安全と環境保護を考慮していません。例えば、米消費者製品安全委員会(CPSC)が法律で義務づけている動力芝刈り機のブレードの安全制御や、米環境保護庁(EPA)が法律で義務づけている排出ガス制御に対する修正や改ざんを認めることになります」

マイクロソフトやアップルなどの企業を代表する業界団体「TechNet」のシニアヴァイスプレジデントのカール・ホルシューザーは、『WIRED』US版にメールで寄せたコメントで次のように述べている。「電話、コンピューター、火災報知器、医療機器、ホームセキュリティシステムなど、消費者が健康、安全、幸福のために利用している製品を修理するための効果的かつ安全なシステムを根底から覆すFTCの決定は、テクノロジーとサイバーセキュリティに広範囲かつ永続的な影響を与えることになる」

また、毎年ラスヴェガスで開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)を主催する全米民生技術協会(CTA)は、今回の採択に先立ってFTCの委員に送付した書簡のなかで、知的財産権が「修理する権利」の核心に触れる厄介な問題であることを挙げ、「広範な規則制定プロセス」ではなく協力関係を構築するよう求めた。

これに対して、FTCが19年に「Nixing the Fix」というセッションを主催したあとに収集したデータを5月にまとめた報告書において、「メーカーによる修理制限の正当化を支持する証拠が乏しい」と指摘している点は注目に値する。報告書には、メーカーが熱暴走(バッテリーの発火につながる)や個人情報の漏洩など、デヴァイスの修理にまつわるリスクを誇張していた可能性がある多くの事例が詳述されている。

状況は本当に変わるのか
今回のFTCの政策声明が既存の法律を大幅に補強するものである一方で、何十もの州政府が「修理する権利」法案を州レヴェルで検討している。FTCは21日、修理制限について反トラスト法違反の可能性と消費者保護の観点から調査すると発表した。

FTCはまた、1975年に制定されたマグナソンモス保証法が禁止する不正な保証規定を通報するよう一般市民に呼びかけている。マグナソンモス保証法ではメーカーに対し、製造元のメーカー以外が製品を改造したり手を加えたりした場合に、保証が無効になることを消費者に伝える行為を禁じている。

ニューヨーク州北部で「iPad Rehab」というビジネスを展開し、これまでに40,000台以上のiPhoneを修理してきたという修理専門家のジェッサ・ジョーンズは、FTCに対して既存の規制を真剣に施行するよう求めている。ジョーンズは会合のパブリックコメントで次のように語っている。

「マグナソンモス保証法に抱き合わせ禁止の規定があるにもかかわらず、FTCの規則を無視する行為が横行しています。消費者もメーカーも、デヴァイスを開けるだけで保証が無効になるといまだに思い込んでいるのです」
LAUREN GOODE


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