私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

トヨタの過労死訴訟から種々思うこと

2007-12-08 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 11月30日に、6年前にトヨタ自動車の従業員が業務中に急死した労災訴訟の判決が名古屋地裁でありました。会社の認定する残業時間は53時間だとするのに対し、QC活動等の従来会社が自発的活動であるとして残業代を支給していなかったことは、使用者の支配下における業務であった等と認定しています。そして、訴訟での残業時間の認定は106時間余であったとしています。

 原告側の弁護士は云います「外見上、自発的な活動としながら、企業が残業代を払わずに労働者に仕事をさせる巧妙なシステムであり、トヨタの急成長の秘密の一つだ。」と指摘します。なお、トヨタの労使間の協定では、1カ月の残業時間を、厚生労働省が「業務と過労死の関連性が強い」とする80時間を超えないように定めています。しかし、この残業代の支払いを迫られれば、労務コストの負担は高まります。原価低減を武器に国際競争を勝ち抜いてきたトヨタにとって足かせになりかねないと云います。

 しかし、思うことは、日本の総ての企業において、トヨタ方式もしくは類似の合理化を最上のものとして採用していることを思うのです。合理化とは、すなわちムダをなくすこととなるのでしょう。しかし、間違いなく各企業で働く労働者はロボットではなく人間であって、一定の余裕というものが必要となるのです。総てのムダを排除したとき、労働者は果たして人間でいられるのかとも感じます。
 そして、現在において、日本の総ての企業で働く労働者に与えられつつある労働環境の悪化の元凶の象徴の一つとして、トヨタ方式の合理化があるのではないのかとも感じるのです。

 若干話が逸れるかもしれませんが、私の業務関連で云えば、ある損害調査会社では、事故車の立会に際し、訪問した工場に到着した時間をコンピューターにインプットし、調査を完了し工場から帰社する時間をインプットすると伝えられています。しかし、こんな管理をしたならば、立会する事故車を見て工場と修理費の打合せをするのが精一杯であろうと思います。無駄話ともなる工場側の悩みを聞いたり、修理中の他のクルマを取材したりと云った、ある意味で自己研鑽の機会を逸してしまい、アジャスター業務の根幹たる能力の衰退を生じることを極めて懸念します。私は、後輩アジャスターに何時も云っています。日頃訪問する工場は宝の山だと思えと。そこは、リアルワールドの修理情報の宝庫であって、時間が許す限り興味を持って見てこいと。そうやって23年間を過ごして来たのが、今の私なのだと。


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