整備白書R2年より その3(見えて来るもの)
最新版整備白書(R2年版)で、自整業の概要という集計表がある。今回は、この集計表を別添するが、ここから読み取れる、もしくは導ける数値を元に、※1~8として気付くことを以下に記してみたい。
※1 各区分の定義
日整連集計では、工場区分として以下の4区分に分離しているが、それぞれの定義は以下の通りだ。
・専業:整備売上が整備総売上の50%を超える工場(除くディーラー)
・兼業:兼業部門の売上が総売上の50%を超える工場(除くディーラー)で、中古車など販売店、石油販売店などが経営する工場。
・ディーラー:自動車製造社もしくは販売卸企業(自販社や輸入車インポーター)と販売特約を締結した企業が経営する工場
・自家:大手旅客・物流企業等で、主として自企業車の整備を行う工場。
私見となるが、これら4区分ではあるが、目立って異なるのは、ディーラー以外とディーラーの2区分で対比しても十分という感を持つ。
※2 工場数
工場数(分解整備事業数(もしくは認証工場+指定工場の合計)で全国で91,500工場だということ。
この91,500工場、別に集計されている整備関係従業員数54万人という事業が、全国で残されているということ事態が、他の魚、八百屋、米、電気店などの小売業がほとんど壊滅した近現代の中にあっては、特異的な点ではなかろうか。これら、街の小売店が壊滅したのは、大資本による大規模店の占有とか、アマゾンなどのインターネット通販の影響だと思われるが、それが自整業にはあまり及んでいないと云うことが判る。その理由として想像できるのは、作業を行う工員が、微少な教育で誰でもできないとか、作業が平準化し難く、利益率を確保し難いとかいう理由が考えられる。一方、その様な外部からの浸食による淘汰がなくとも、さほど利益が十分でない(このことは給与額などから想定できる)にも関わらず、9万工場が生き残っている理由だが、2つの大きな理由からではないだろうか。1つは、車検という法に守られた制度により、業務量の一定量が確保できるということ。そして、もう一つは、事故車整備に関わり、対物および車両保険という保険制度により、必ずしも全額ではないにしても修理料金の確保ができることがあると思われる。
※3 指定工場数
指定工場(いわゆる民間車検工場)の比率は、約3万工場で、全工場(91,500)の33%(1/3)だということ。
※4 整備工員数(と整備要員総数)
整備工員数は約40万名だが、整備関連従業員数54万名の74%となる。残りの26%は、工員以外の間接要員数であり、フロント接客員とか事務係りなどの要員であり、一定の割合は必須となるが、役
割が間接要員となると見込めば良いだろう。なお、少人数工場ほど、この間接要員業務を、工員自身が兼務することになる訳だが、このことは工賃売上に直接関与できない間接時間を増やすことになり、稼働率(多くの場合68%を準用)が低下することになる。
※5 1事業所(工場)当りの整備要員数
これが4.4人ということは、以下の給与のところで記すが、どんなに少ない工員(認証工場での法定最小数は2名、指定工場では法定最小数4名)であっても、一定以上の工場費なり間接人件費を要す訳で、この業界の根本的零細さを示す値であろう。正直云って、この平均4.4名という要員数では、まともな工場費を捻出することは不可能だろう。
※6 整備要員一人当りの整備売上高
ここでは、4区分しているが、ディーラー以外とディーラーの2区分として見れば良いだろう。間接員を含んだ整備要員1名当り、ディーラー以外で約1千万円、ディーラーが2300万と大きな格差が生じている。
なお、ここでは分析のために、この整備売上を年間労働時間を2,000hとして除した値を計算してみた。これは稼働率などを考慮せず、述べの労働時間当りの単価となり、一般のレバーレートの計算とは異なるが、経営指標としては参考となるものだ。やはり、ディーラー以外とディーラーでは、倍近い開きがある。ディーラー以外工場では、以下にディーラー工場に近づけて行けるかが問題となるだろう。
※7 整備要員平均年齢
ここでも、ディーラー以外とディーラーの対比という視点で眺めれば良いだろう。ディーラー以外工場は、ディーラー工場より平均年齢が15才高く、約50才を越えようとしている。このことは、ディーラー以外工場では、新入社員として若い従業員を確保できない実態を現しているとみるべきだろう。ここにも、この業界の将来を見通す中で致命的な問題が内在していると思える。
※8 整備要員の年間給与額
ここでも、ディーラー以外とディーラーという2区分で眺めて見るが、先の平均年齢で15才の差があるにも関わらず、給与はディーラーに100万円劣るのがディラー以外工場の実態だ。
なお、年間整備売上に対する給与額の比率を計算して見たところ、ディーラ以外が36%であるところ、ディーラー工場が20%と大きな格差が生じている。このことは、一見ディーラーが分配比をケチっていると見えてしまうが、必ずしもそうではない。次回以降に、工場運営の経費をシミュレーションしてみたいと思う。ここで若干触れておくが、工場運営費として、様々な類型はあるとは思うが、総員10名の工場で間接員3名とした場合、7名の直接工員の生み出す工賃売上で、間接員の給与と工場費(作業スペース8ベイ、指定整備検査ラインあり)という前提では、工場費は優に1千万円(年)を越えると見込まれる。
最新版整備白書(R2年版)で、自整業の概要という集計表がある。今回は、この集計表を別添するが、ここから読み取れる、もしくは導ける数値を元に、※1~8として気付くことを以下に記してみたい。
※1 各区分の定義
日整連集計では、工場区分として以下の4区分に分離しているが、それぞれの定義は以下の通りだ。
・専業:整備売上が整備総売上の50%を超える工場(除くディーラー)
・兼業:兼業部門の売上が総売上の50%を超える工場(除くディーラー)で、中古車など販売店、石油販売店などが経営する工場。
・ディーラー:自動車製造社もしくは販売卸企業(自販社や輸入車インポーター)と販売特約を締結した企業が経営する工場
・自家:大手旅客・物流企業等で、主として自企業車の整備を行う工場。
私見となるが、これら4区分ではあるが、目立って異なるのは、ディーラー以外とディーラーの2区分で対比しても十分という感を持つ。
※2 工場数
工場数(分解整備事業数(もしくは認証工場+指定工場の合計)で全国で91,500工場だということ。
この91,500工場、別に集計されている整備関係従業員数54万人という事業が、全国で残されているということ事態が、他の魚、八百屋、米、電気店などの小売業がほとんど壊滅した近現代の中にあっては、特異的な点ではなかろうか。これら、街の小売店が壊滅したのは、大資本による大規模店の占有とか、アマゾンなどのインターネット通販の影響だと思われるが、それが自整業にはあまり及んでいないと云うことが判る。その理由として想像できるのは、作業を行う工員が、微少な教育で誰でもできないとか、作業が平準化し難く、利益率を確保し難いとかいう理由が考えられる。一方、その様な外部からの浸食による淘汰がなくとも、さほど利益が十分でない(このことは給与額などから想定できる)にも関わらず、9万工場が生き残っている理由だが、2つの大きな理由からではないだろうか。1つは、車検という法に守られた制度により、業務量の一定量が確保できるということ。そして、もう一つは、事故車整備に関わり、対物および車両保険という保険制度により、必ずしも全額ではないにしても修理料金の確保ができることがあると思われる。
※3 指定工場数
指定工場(いわゆる民間車検工場)の比率は、約3万工場で、全工場(91,500)の33%(1/3)だということ。
※4 整備工員数(と整備要員総数)
整備工員数は約40万名だが、整備関連従業員数54万名の74%となる。残りの26%は、工員以外の間接要員数であり、フロント接客員とか事務係りなどの要員であり、一定の割合は必須となるが、役
割が間接要員となると見込めば良いだろう。なお、少人数工場ほど、この間接要員業務を、工員自身が兼務することになる訳だが、このことは工賃売上に直接関与できない間接時間を増やすことになり、稼働率(多くの場合68%を準用)が低下することになる。
※5 1事業所(工場)当りの整備要員数
これが4.4人ということは、以下の給与のところで記すが、どんなに少ない工員(認証工場での法定最小数は2名、指定工場では法定最小数4名)であっても、一定以上の工場費なり間接人件費を要す訳で、この業界の根本的零細さを示す値であろう。正直云って、この平均4.4名という要員数では、まともな工場費を捻出することは不可能だろう。
※6 整備要員一人当りの整備売上高
ここでは、4区分しているが、ディーラー以外とディーラーの2区分として見れば良いだろう。間接員を含んだ整備要員1名当り、ディーラー以外で約1千万円、ディーラーが2300万と大きな格差が生じている。
なお、ここでは分析のために、この整備売上を年間労働時間を2,000hとして除した値を計算してみた。これは稼働率などを考慮せず、述べの労働時間当りの単価となり、一般のレバーレートの計算とは異なるが、経営指標としては参考となるものだ。やはり、ディーラー以外とディーラーでは、倍近い開きがある。ディーラー以外工場では、以下にディーラー工場に近づけて行けるかが問題となるだろう。
※7 整備要員平均年齢
ここでも、ディーラー以外とディーラーの対比という視点で眺めれば良いだろう。ディーラー以外工場は、ディーラー工場より平均年齢が15才高く、約50才を越えようとしている。このことは、ディーラー以外工場では、新入社員として若い従業員を確保できない実態を現しているとみるべきだろう。ここにも、この業界の将来を見通す中で致命的な問題が内在していると思える。
※8 整備要員の年間給与額
ここでも、ディーラー以外とディーラーという2区分で眺めて見るが、先の平均年齢で15才の差があるにも関わらず、給与はディーラーに100万円劣るのがディラー以外工場の実態だ。
なお、年間整備売上に対する給与額の比率を計算して見たところ、ディーラ以外が36%であるところ、ディーラー工場が20%と大きな格差が生じている。このことは、一見ディーラーが分配比をケチっていると見えてしまうが、必ずしもそうではない。次回以降に、工場運営の経費をシミュレーションしてみたいと思う。ここで若干触れておくが、工場運営費として、様々な類型はあるとは思うが、総員10名の工場で間接員3名とした場合、7名の直接工員の生み出す工賃売上で、間接員の給与と工場費(作業スペース8ベイ、指定整備検査ラインあり)という前提では、工場費は優に1千万円(年)を越えると見込まれる。