私の思いと技術的覚え書き

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ランドクルーザーというクルマのこと

2009-02-20 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 云わずと知れたトヨタ自動車が製造するランドクルーザーですが、過去の思い出等も含め記してみたいと思います。

 元々、ランドクルーザーとは、米国のジープに類した戦場での小型で機動性を発揮するクルマとして、その企画がスタートしたものです。この様なクルマを通称「ジープ」と云い表す訳ですが、この「ジープ」と云う名称は米国「ウィルス」社(AMC社を経て現在クライスラー社が商標権保持)のものであり、このライセンス権を受けて製造していた三菱自動車意外には使用できないものです。似た様な名称に「キャタピラー」がありますが、これも米国「キャタピラー」社の商標であって、その他のメーカーでは「クローラ」等と呼称しています。

 この「ジープ」の様なコンセプトを持つ車の生産要請は、戦後の自衛隊の前身である警察予備隊の発足度同時に国内メーカーに要請された者で、ランドクルーザー意外にも、日産自動車の「パトロール」等も企画された様ですが、結局ライセンス品であり信頼性が高いということで三菱ジープが採用されるに至ったということの様です。

 しかし、それから半世紀近くを経て、米国陸軍のジープも「ハマー」の様に大型化し、何事も物真似好きな我が国ですから、同等のクルマとして「メガクルーザー」(自衛隊呼称:小型高機動車)を多く納入しているのですから、やはりトヨタは商売が上手です。

 ところで、私がエンジン屋としてランドクルーザーに触れたのは、40系と一部50系の頃です。搭載エンジンのほとんどは、Bおよび2B型のディーゼルエンジンでしたが、僅かにF型ガソリンエンジン搭載車にも触れ合ってきました。

 この40系のランドクルーザーですが比較的長く生産したこともあるのでしょうが、現在でも綺麗にして(錆びだらけのボロボロ車の結構見掛けますが)乗っている愛好家が結構いるものです。

 この様なクラシック4WD車とも呼べるべきクルマは、前後車軸共にリーフ・リジットという、クルマが誕生した当時のサスペンションを使用していたものでした。しかし、昨今は後輪はともかく前車軸はダブルウィッシュボーン等の独立式サスペンションに、ほとんどの車種が移行しています。確かに、直進時に遊びが大きく曖昧なステアフィール等、一般的な乗用車との落差が大きすぎるのかもしれません。しかし、局地・極限状態での走破性能等、この様なレガシー(昔の機構)の方が、求められる信頼性や耐久性で優れているのだろうと思います。

 私が、このランドクルーザー(BJ40)を触れた40年位以前でも、フロントのナックル部のドライブ・ジョイントは、既にバーフィールド型ジョイントが採用されていました。それ事前には、多分トラクタ型等の本でしか見たことしかないタイプのジョイントが使用されていたのだろうと想像します。しかし、バーフィールドジョイント型ジョイントの当時でも、ステアリングの切れ角は小さいものであり、狭い場所での移動では「何て切れないステアリングなんだ」と呆れた思いがあります。

 このランドクルーザーですが、現在クルマの世界では輸出大国となった我が国において、最初に世界に認められたクルマであったと思います。トヨタで、最初の米国に輸出されたのはRS型クラウン(いわゆる観音開き)ですが、その諸性能は大いに軽蔑を買い、まったく現地には受け入れられなかった様です。しかし、このランドクルーザーが一定の評価を受け、トヨタの輸出先兵としての役割を果たしたことは間違いないところと思います。

 そんな、無骨なランドクルーザーですが、モデルチェンジを重ねる都度、乗用車に近づくボデースタイルや構造変更がなされて行きます。個人的な思いですが、ランドクルーザーとしてのDNAの継承は70型で打ち切られてしまった様にも感じます。以後のランドクルーザーは、ハイラックス・サーフとのベア・シャシ共有化や、80型や100、200型に様に、米国の大型SUVブームに合致する趣向のクルマとなり、私には理解できない価値のクルマになってしまったとの感を持ちます。

 この大型SUVブームですが、我が国でも同様で、一時の100型ランドクルーザーの人気は驚くべきものであったと感じます。そのことは盗難車の人気ナンバーワン車種であったことでも理解されるところです。当時、車両火災で室内な丸燃えして、明らかに全損状態の100型車両でも、現車買い取り額が80万以上が提示され驚いたことを思い出します。

 何で、この様な豪華大型SUVが人気を博したのかという理由ですが、これらを転がすユーザー像とは次の様なものだろうと想像しています。これらを好むユーザーは元々、セルシオ(現行のいLS)等の車体が大きく押し出し感のあるクルマを好んでいる小金持ちだろうと思います。それが、セルシオより更に車体が大きく、運転席も高く周辺を見下げることができる優越感が、この車種を好んでいるんじゃないかと思います。そんな思いを持って、これら種種を転がしているユーザーの顔を観察しているのですが、あながち間違いなさそうだと感じています。

追記

 このランドクルーザーというクルマは、企画・設計はトヨタでしょうが、その製造は「荒川車体」(通称:アラコ(元荒川板金工業)で行われていましたが、何年か前にアラコはトヨタ車体(トヨタ100%出資の外注会社)に吸収合併されました。ですから、アラコはイタリア等で行われているコーチビルダーと同様の関係だったと思います。しかし。イタリアでも最大のカロツェリアであるピニンファリーナ社では、モデリングのみを継続し、生産は辞めてしまう様です。クルマの生産というのが、その機械化等で如何に大資本を要するかということを感じてしまいます。




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