入院す放れ鈴虫なきし朝
にゅういんす はなれすずむしなきしあさ
胃癌摘出の入院日。昨夕寝室前の庭先に放した鈴虫が夜半に夢とうつつの中で鳴居ているのを確認してホットした。数も減り鳴き声も少なくなっての処置だった。これで入院準備は完了だ。あしたの癌除去は医者任せの心境だ。
草むしる入院前の一時を
くさくしる にゅういんまえのひとときを
明後日の入院前の準備が一通りすんだ。ふと庭に目をやると草が延びている。天候のせいで丁寧に草ひきしてもすぐに伸びてしまう。玄関前の目立つところをむしり取る。体内の異物をさっぱり除去する願いを込めて。
鱗雲ことなく過ぎて八十四
うろこぐも ことなすぎてはちじゅうし
12号台風は間もなく九州に上陸の気配。明後日辺りが危ない関東地方の今日は鰯雲が穏やかに流れていた。御蔭様にて八十四歳の誕生日をかみしめている。年並みに痛んでいる箇所も大した手当てもしなくて済みそうだ。今日のごと明日も在れと空を仰ぐ。
塗装屋の足場組む音秋暑し
とそうやのあしばくむおと あきあつし
現役定年後二人住まいに造り直した我が家。外壁の痛みが気になり塗りかえすことにした。異常気象で溜らっていたのに始めたら10号台風が九州に接近し2.3日後には関東も怪しくなった。真夏日の中、工事やの足場作りが急ピッチ。騒音と籠城の今日である。
新月やジム退く衆の日照り顔
しんげつや ジムのくしゅうのほてりがほ
八朔・9月1日・関東大震災の日。例年なら月変りするだけで涼の字が浮かぶが今年は違う。夕方にジムを出る人達は素顔で満ち足りた顔つきをしている。越中の「おわら風の盆唄」などを口ずさんでいるかも。片や今日は「防災の日」であり「関東大震災の日」でもある。