ツワブキ「石蕗」
角川書店発行の「俳句」11月号に2020年度「角川俳句賞」の記事
受賞者は、なんと平成11年生、岩田 奎
五十句掲載されていますが、当方の理解できる句をいくつか抜き出してみました。
珈琲に氷の残る蜃気楼 岩田 奎 今日水千句選7
アイスコーヒーの飲みかけ、氷を見ていると・・・拡大されて・・・蜃気楼・・・に至るという感じでしょうか。
銀閣のまへを吹かれて氷旗 岩田 奎 今日水千句選8
トマト切るたちまち種の溢れけり 岩田 奎 今日水千句選9
火をとりに車へ戻る墓参かな 岩田 奎 今日水千句選10
野分去る万力に錆浮きにけり 岩田 奎 今日水千句選11
万力のしづかに黒し秋日和 奥坂まや 今日水千句選12
俳人は「万力」が好きなようです。
ずっしりと重い鉄の塊、据え付けられて動かない「万力」とその台、学校の技術室の静かな空間、と読めばいいかなと。
ペン立に鋏一挺雁渡る 岩田 奎 今日水千句選13
夕日いま葱のうしろへかたむけり 岩田 奎 今日水千句選14
今日水千句選
冬の雨柚の木の刺の雫かな 蕪村 今日水千句選15
当方も、庭ともいえない低いブロック塀の内側に柚子を一本植えてあります。
柚の木の刺(ゆのきのとげ)、柚子の木の刺です。硬く細長い数センチの刺が枝の四方八方に突き出しています。見るからに危ないという感じです。
枝が伸びて隣家へ飛び出していくので、年に一二回切りますが、切った枝葉の生命力が強烈です。一か月以上も葉と刺が青く硬いままです。
定食に満腹したる聖夜かな 小川軽舟 今日水千句選16
作者の単身赴任生活を題材とした句です。
「聖しこの夜」、クリスマスですが「定食に満腹したる」・・・まぁ、ビールやつまみ少々のあとの「定食」でしょう。
食器のことを言っているわけではありませんが、
家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る 有間皇子
笥(け)、入れ物です。
当方の趣味に当てはめると、白黒それぞれの碁石を入れておくものを碁笥(ごけ)と言います。
白菜に水道の水かがやける 小川軽舟 今日水千句選17
同じく単身赴任句
うむ、白菜を切って水で洗う、白菜がますます白く輝く、そのとおりです。
平凡な美人きらきら花水木 坊城俊樹 今日水千句選18
「平凡な美人」よくわかりませんが、なんとなくよさそうな句です。
歌舞伎座の前の混雑秋暑し 甲斐遊糸 今日水千句選19
公演を見終わった人たちが一斉に歌舞伎座を出て来たところでしょう。
川一つ処々の紅葉かな 子規 今日水千句選20
正岡子規が京都へ旅した時の句です。
京都の川ですから、川幅も広く浅く、先々までよく見通せると思います。川沿いに歩いたのでしょう。
近詠
秋澄むや散歩のひとり腕まわす 今日水
銭湯に野球部員や初時雨 今日水
たまに行く古書店のそばに銭湯があります。