さまよえる天神さん

てくてく てくてく 風景と

クロニクル

2020-03-21 | 日記・エッセイ・コラム

少しずつ本を整理しようと考えていますが、なかなか始末に負えません。


1984年頃の文芸誌
桐山襲の何番目かの小説を目にしたのは、この時がたぶん初めてだったかもしれません。疾風怒濤のようだった60年代後半から70年代初頭、そこから離れた80年代の中ごろ、まだバブルに突入する前。文体、語り口が好きだった。

「そしてきみは・・・・・・・中略・・・・・・・、《語れない石》とでも呼ぶべき惨憺たる姿となって、上京した母に車椅子を押されながら、故郷であるK半島のT村へ帰って行った。そのとき僕は、まだ春の浅いプラットホームに立って、きみときみの母を見送ったのだが、列車の窓の向こうの二つのきみの眼が、まるで木で出来た義眼のように光を失なっていたのを忘れることが出来ない。」(桐山襲『風のクロニクル』)


庭の梅がやっと咲き始めた。