ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

困惑のサイラーグ【番外編】(ゼロシル)

2013-12-02 00:39:37 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
こちらはゼロシル長編小説『困惑のサイラーグ』の番外編です。本編は読んでいてもいなくてもあまり関係ありません......(`・ω・´)<たぶん!

『if~ゼロスが魔族とバレた上でなんだかんだシルフィールと一緒にいたら』
短いです。
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彼は、どこからともなく現れる。

「どーも!シルフィールさん」
突如私の隣に出現したゼロスさんは、いつものように朗らかな挨拶をよこした。
「......どーも」
「あれ?テンション低くありません?」
冷めた目をした私を見て、彼は可愛らしく小首を傾げて見せた。
──そのポーズを男がやる意味があるのかしら......?

「もっと驚いたりしてくれないとつまらないじゃないですかあー」
不満げに言う彼に、私はため息をついた。
「何度もそうやって登場されたら嫌でも慣れますわ...」
そう。彼は突然私の前に現れて、私を驚かせては去っていくという子供じみた真似を、ここ最近繰り返していた。
正直なところ面倒くさいことこの上ないのだが......彼は魔族で、何を考えているのか分からない以上、気を抜いてはならない。

「今日は何かご用がおありで?」
「そうですねぇ......」
彼は手を顎に当ててふむ、と唸った。
「今考えちゃってるじゃないですかっ!」
「まあまあ、良いじゃないですか。急にあなたに会いたくなったんですよー」
さらりと甘い言葉を吐いて、彼は不敵に微笑んだ。
「......」

はあ。
私は盛大にため息をついた。
女の子が言われてみたい甘い台詞。
でも、それは相手によるのだ。ゼロスさんに言われても正直あんまり嬉しくない。
「......シルフィールさん、今凄く失礼な事考えてません?」
「そ、そんなことありませんわ」
──もし、これがガウリイ様だったら......!
考えただけで赤面してしまいそうである。思わず口元がにやける。

そんな私の顔を、ゼロスさんがのぞき込んできた。
「......今の台詞、ガウリイさんが言ってくれたら良かったのにー、とか、思ってたでしょう」
ぎくり。
「僕だって魔族界では結構人気なんですよー?抱かれたい魔族ナンバーワンの座を欲しいままにしてますし......」
よく分からない事を言いながら、しゃがみ込んで地面にのの字を書くゼロスさん。
「なんと言おうと、何を考えてるか分からない魔族より、ガウリイ様の方が何倍も素敵ですっ!」
金色の輝く髪に青色の晴れやかな瞳。まるで王子様。彼の優しさを思うと、胸が暖かい気持ちに満たされる。

......と、目の前に突然影が差した。
ゼロスさんが私の真ん前に立ったのだ。
「わ...」
紫色の瞳が、意地悪な光を灯していた。
「ガウリイさんは、リナさんしか見ていないのに?」
わざとゆっくりと、彼はそう言った。労るような優しい声で。
「......っ」
──そう、こうやって彼は、私から負の感情を引きずり出すのだ。
胸が苦しくなって、こみ上げてくるものを必死で抑えつける。
唇を噛んで睨みつけると、ゼロスさんは満足げに笑った。
紫色の瞳も、髪も、私の心をいたずらにかき乱すだけ。

「あなたなんか嫌いです......っ」
「僕はあなたが好きですよ」

私の髪を一房手に取って、彼はそっと口づけた。
──嗚呼、あなたはまたそうやって......。
私をこんなに酷く困惑させるのは、ゼロスさんしかいないかもしれない。


おわり

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......あれ?ギャグ風味で書くつもりだったのに(´・ω・`)?おかしいなあ。


あとがき。

2013-11-26 01:56:08 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
どうもこんにちは。
こちらの記事は『困惑のサイラーグ(ゼロシル)』のあとがきです。
ねたばれ、解説などあるため未読の方はお戻りくださいませ。

追記からどうぞ。
……やっ……と、終わりましたorz

色々と思うところはあるのですが、とりあえずこの勢いのみで書いた誰得シリーズを終わらせることが出来てよかったです。ふう。
ここまで読んでくださった奇特な方がいらっしゃいましたら、本当にどうもありがとうございました!
いつも更新遅くて本当に申し訳ありません。

【解説と感想】
勢いで書き始めたは良いものの、凄く難産でした。
ゼロスの視点で物語を書くことがぜんぜん無いので、すっごく難しかったです。
シルフィールさんがまじめすぎてギャグがあんまし入らなかったのも痛かった……。うう
ハイテンションでごまかすことが出来なかったので、無駄にシリアスになりましたね><

フラグーンについては、最後復活させようか、というご都合主義展開を考えてたんですが、蛇足っぽくなるかなーと思ってやめました。シルフィールさん完全に無駄足……ごめんよ。

ゼロシル、というのもちょっと難しくて、凄い注意書きした割りにあんまりカップリングっぽくなかったですかね?
ゼロスのシルフィールへの気持ちはなんというか甘いものではなくて、無意識な執着心と独占欲なイメージで書いてました。
シルフィールの「絶望が見たい」というのはなんというかヤンデレくさいですが、ゼロス的な好奇心です。
魔族の行動原理って分かんないんですけど、きっと気に入ったら死なない程度にいぢめ尽くしたいんじゃないかなあ(どえす。
本編中でシルさんがゼロスを拒否して「ガウリイ様っ」ってなるシーンがありましたが、ゼロス的にはそれにものすごくいらっとしてれば良いなと思います。
「……気に入りませんね。あなたは僕のことだけ考えて絶望しててくれればいいんですよ」的な。

シルさんは、魔族と知らないうちは「怪しいけど、頼りになるかも……」っていう感じでだんだん信頼してって、最終的に裏切られる直前は結構好意を持ってたんじゃないかなあ?でも、やっぱりぬぐえない不安と違和感は持ってたはず。それはやっぱり巫女さんなので。
ガウリイの事は、吹っ切れたつもりだけどやっぱりまだ好き……みたいな感じで。乙女心難しいっすね。

個人的に番外編として「魔族と知りつつ漫才なやりとりをするゼロシル」を書きたいので、次回できたらそんな感じで更新したいと思います。

そんなわけで長々とすみませんです。
それではさらばっ!

困惑のサイラーグ【21】(ゼロシル)

2013-11-24 15:58:52 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
注意!こちらはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。妄想と捏造に溢れておりますので、苦手な方はお戻りください。
(`・ω・´)<最終回です!!
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──気付いた時には、全てが終わっていた。
魔族はいなくなり、荒野に一人残された私は、どくどくと鳴る心臓の音に、命が助かったことをぼんやりと実感していた。

「これで......終わりなのかしら?」
あまりにもあっさりと、彼は行ってしまった。最後まで飄々と。
──またどこかで。

「会いたくなんて、無いですわ......」
ふう。ため息が自然に漏れる。

座り込んでいた私は、土埃を足やお尻から払って立ち上がった。
街の方へ行かなくては。もしかしたら、人々が危険な目に遭っているかもしれない。

何年か前にコピーレゾと戦い、その後冥王フィブリゾによって占拠されたグラウンド・ゼロ地点。
気が付けば私はその中心に立っていた。
......この地はもう、魔族によって呪われてしまったのかもしれない。
──でも。
「サイラーグは、私がいる限り必ず守ります......お父様」
殺風景な荒野に呟くように誓うと、私は足早にその場を立った。

****************

「シルフィール殿っ!ご無事だったか」
魔道士協会に顔を出すと、サリマンさんが慌てた様子で出迎えてくれた。
「サリマンさん、何かあったのですか?」
「野盗じゃ。ここ最近街を荒らす輩が増えておる......今夜もまた何組か。腕に覚えのある者が迎え撃ちに行ったのじゃが...」
心配げに顔を曇らせたサリマンさんに、嫌な予感がした。
「それじゃあ早く私も行かないと......っ」
ゼロスとの話は後回しだ。街へ駆け出そうとした私を、サリマンさんが引き留めた。
「待つんじゃ。わしはそれよりも、もう一つ心配な事があるんじゃ」
「?」
サリマンさんに向き合うと、彼はさっきよりさらに深刻な顔をした。

「今日街の飯屋が商品全部食い尽くされる事があってな......見た目にも実に怪しい二人組が相手というので、戒厳令が出たのじゃ。魔族の仲間ではないかとな」
「魔族の、仲間...?」
ゼロスの仲間だろうか。しかし、彼はいつも一人で行動していたはず...。
「どんな二人組なんですか?」
「みょーちきりんな装束を着た背の低い魔道士の娘と、金髪の剣士の二人組じゃ。特に娘の方の人相が悪くて......シルフィール殿もお気をつけなされ」
冷や汗をかきながらそう続けたサリマンさんに、私は言葉を失った。

そして。
「......うふっ」
思わず笑い出しそうになって、私は口元を手で隠した。
笑いがこみ上げてくる。その中に、鼻の奥がつんとするような、熱い何かが混じっている。

「シルフィール殿?」
訝しげに尋ねてくるサリマンさんに、微笑みかけた。
「......その二人なら、たぶん大丈夫ですわ。それに、野盗の事も」

──リナさん、ガウリイ様。

彼らが来たのなら、きっと大丈夫。
そんな風に思えてしまうのが、自分でも不思議だ。

「何か知って......?」
彼の質問に答える前に、魔道士協会に若い男が飛び込んで来た。
「大変ですっ!野盗相手に若い娘と男が大立ち回りしてますっ」
「なんじゃとっ」
「それが昼間のあの二人組で......娘が火炎球やら魔法使って、色々壊れて大変なんです!」
「......」
私はサリマンさんと目を見合わせた。──ほら、言った通りでしょう?

話の続きを聞かずに、私は走り出していた。

希望が胸に溢れ出す。
「......当分、絶望なんてしませんわ」
──魔族、ゼロス。次会った時には覚悟してなさい!

きっと二人がいるであろう、街の騒ぎの中心に向かって、私は全速力で走ったのだった。


終わり

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更新ほんと遅くてすみませんでした<(_ _)>
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!
もし少しでも面白いと思って頂けたら幸いです。
ではではまた次回!

次回はあとがき的なものか番外編が書けたらいいかな……?


困惑のサイラーグ【20】(ゼロシル)

2013-11-20 18:47:05 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
ついに20話!そろそろ終わります(`・ω・´)
注意!こちらはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。妄想と捏造が溢れておりますので、苦手な方はお戻りください。
*今回ちょっと短め。
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──またどこかで。
そう言った僕に、彼女はぽかんとした顔をしていた。
その表情を思い出しながら手にした宝珠を弄ぶと、それはきらりと輝いた。
彼女の神官服についていたそれはたぶん魔除けの意味もあったのだろうが、こんなものにどうにかされる僕らではない。
力を入れて握れば、ぱきりと崩れてしまうだろう。彼女も同じだ。

だが、結局僕はそうしなかった。

宝珠をポケットにしまうと、僕は海王様の元へ報告に向かう。
──海王様はお怒りだろうか。いや、彼女なら面白がるだろう。

結局サイラーグは僕が来る前とさして変わっていない。ただ、不安と疑念の種を蒔いてきた。──突然火の海と化した小さな村。そして執拗に野盗に襲われるサイラーグ。これは僕の仕事の結果によるものだ。
それが育つ時、魔王様が再び降臨なさるに相応しい場所となれば良い。
それが今回の仕事の意義なのだ。

神聖樹については正直なところどうでも良かった。ただ、サイラーグ市民の心の支えになると言うなら、それは排除しておく方が賢明だ。

......だが。
目の前でその希望の種を燃やされても、シルフィールさんは絶望に呑まれることはなかった。
激しい負の感情は感じたが、それだけだ。

人は本当の絶望に呑み込まれると、一瞬だけ極上な負の感情を放ち、そして抜け殻のような状態になる。
──彼女のそんな状態を見てみたかった。
普段からシルフィールさんの負の感情は複雑で美味だったから、絶望に堕ちたそれはきっと素晴らしいもの
になったと思うのに。

ただ、残念だと思うと同時に、少し嬉しい気持ちもある。
──それでこそシルフィールさんですねえ。

彼女は最後まで諦めていなかった。目を見れば分かる。
むしろ、僕に勝つ気でいるようにさえ見えた。
──全く面白い人間だ。
さすが、あのリナ=インバースの「知り合い」とでも言うべきか。
知らず唇の端が上がる。
簡単に堕ちてしまうようではつまらないのだ。

彼女は最後まで諦めない。何度でも立ち上がる。悲しみに満ちた瞳の奥に、熱い何かを抱いて。

「──ああ、その芯の強さが......まったく、へし折りたい程愛しいですよ。シルフィールさん」
呟いた言葉は、思った以上に甘い響きがあった。


続く

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次回、たぶん最終話!


困惑のサイラーグ【19】(ゼロシル)

2013-11-18 19:46:56 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
注意!こちらはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。妄想とねつ造に溢れていますので、苦手な方はお戻り下さい。

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どごおおおん。

轟音とともに、赫い光が乱反射する爆発が起きた。
──至近距離からの竜破斬(ドラグスレイブ)。
これが私の秘策だった。彼は私がこの術を使えることは知らなかったはずだから。

爆発による衝撃で、魔法障壁で守られていた私も突き飛ばされるように尻餅をついた。
まともに喰らったら、下級魔族なら一溜まりもない術。純魔族でもただではすまないはず......。

しかし、そんな私の希望的観測をあざ笑うように、彼は私の前に立っていた。何事も無かったように。
「......!」
「いやあ、驚きましたよ。まさか、シャブラニグドゥ様の術を使うとは。...しかもあなたが」

いつものように淡々と、ゼロスは話す。
「僕もまともに喰らうのはちょっと痛いので、避けさせて頂きましたよ」
にこり。その笑顔が恐ろしくて、ぞわりと鳥肌が立つ。

「で、どうなんです? 僕と不死の契約しないんですか?」
「......っ!」
ぎり、と奥歯を噛み締めた。

不死の契約など、するものか。
そんな契約をしたとして、サイラーグが護られる保証は何もない。そして、私は彼と同じ側に堕ちるのだ。
──そんなの......耐えられるはずが、ない。

「お断りしますわ!」
きっ、と睨み付けると、ゼロスは肩をすくめた。
「おお怖い。強情ですねえシルフィールさん。......サイラーグがどうなっても良いって言うんですか?」
「逆です」
「?」
「サイラーグは、私が死んでも必ず守る!そのために、信用出来ない魔族との契約など出来ません」

彼はしばし黙ると、笑った。
「......愛してるんですねえ、サイラーグを」
鼻で笑うように、理解出来ないとでも言うように彼は言う。
「当然です。それを分からないなら
、あなたは可哀想だわ」

「......僕と戦うんですか?勝つ見込みも無いのに?」
魔族と人間の力の差。それは猛獣と虫けらぐらい違う。
──でも、だからどうしたと言うのだ。
「ええ、あなたが私の前に立ちふさがると言うのなら」
勝つつもりで戦う。そのつもりで、私は彼を睨んだ。

「......面白い。あなたは本当に面白い」
嬉しそうに笑いながら、ゼロスは目を見開いた。

少しばかりの沈黙。私は彼から走って距離を取り、その場で身構えた。
口の中で防御呪文をつぶやく。頭の中で戦術を組み立てる。どうやって不意をつくか。それが勝負を決する。
いや、いざとなったら隙を見て......

その時。
ゼロスは私の目の前にいた。空間を渡ったのだろう、至近距離から私を見下ろす。
──速い!

「......っ」
目前に迫る濃厚な死の臭い。
その場から逃げ出そうと咄嗟に動いた足を、彼は掴んでいた。
「あっ......」
勢いよく転んでしまう。
「はい、捕まえた♪」
思いの外強い力に、足はびくともしない。私はその場に座ったまま縫いつけられてしまった。

「......ねえ、シルフィールさん」
彼は空いている方の手をひらひらさせてから、私の唇に人差し指を押しつけた。
「......?」
「僕、結構本気であなたの事気に入ってるんですよね。だから、このままさっさと殺してしまうのは勿体無くて」
「......」
さらりと物騒な言葉を口にして、彼は微笑む。

「......こちら側に、堕ちるあなたを見たい」
「そんなの、嫌、ですわ」
知らず声が震える。
「堕として差し上げましょう。必ず」

にこり。
そう笑って、彼は私の神官服の胸元から、宝珠を一つむしり取った。
「っ!?」
「サイラーグ土産に、これ貰っておきますね」
「......は?」

「それじゃ、またどこかで」

ぱちり。
まばたき一つ分の間に、彼は消えていた。

その場に残された私は、ただ座っていることしか出来なかった。


続く

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次回に続きますっ!