ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

原稿作成中なう。

2018-01-29 01:13:20 | 春コミ参加奮闘記
どもです、あきらです。
春コミ用のガウリナ本、地道に作成しております~。

基本的にはブログに載せている作品の再録にしようと思ってまして、いくつかは新しいモノが書けたら良いなと思っておりますよ。新鮮味があんまりなくてすみません……まあ、記念に本を作ってみたい、っていう気持ちからスタートしたので許して頂きたく。

そんなわけで、A5のオンデマ本を作っているわけですが。
本文はフリーで小説用の原稿テンプレートを配布してくださっているサイト様から、素敵なテンプレをお借りしております。
ありがたい世の中ですなあ……
そんな素敵なサイト様がこちら→楽描堂
お世話になっております~。

★ここで原稿作成メモ。
ルビについて。スレイヤーズの呪文にルビは欠かせない…!
フォロワー様から教えて頂いたのですが、そのままワードでルビを振るとどうしても行間が他とずれて見た目が悪くなります。なので、その行だけ行間を弄る事で整える作戦が有効との事。やってみたら確かに良い感じになったので覚え書き。
行間を固定値にする→数値は適当に弄って都度調整する
→その際、ワード画面上ではルビが切れているように見えるが、PDF化すると切れずにきちんと見えるのでそちらで確認して都度調整すること。

再録だし、気に入ってるSSを詰め込むので50ページは超えたいなあと思いつつ。
どうだろうか。まだ未定です。
今まで作ったコピー本と被った作品も入ってるかもしれませんが、どうかご了承くださいませ。出来るだけそういうのは少なくするつもりですゆえ…!

ではでは。次は脱稿の報告が出来たら良いな…!
写真は進捗です~。





伝説。(ゼロス)

2018-01-27 19:10:15 | スレイヤーズ二次創作
ワンライ参加作品です。
お題「伝説」
スレイヤーズ本編終了後500年後くらいを妄想。

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「――兄ちゃん、聞いてるか?」
「聞いてますよお」
 酒場のカウンターで長々と『500年前の伝説』を語る酔っ払いの中年男に、その青年はにこやかに笑って話の続きを促す。それと同時に、店主にホットミルクの追加を頼んだ。
「あんた、酒飲めないのかい?」
 延々とホットミルクばかり頼む青年に嫌味をちらと投げてみても、彼は小さく肩を竦めて笑うだけで、すぐに話好きの酔っ払いに向き直る。
 店主の男にとっては聞き飽きたその与太話が、青年にとっては余程興味深いらしい。ミルクを火にかけながら、店主の男はその青年を物珍しいものでも見るように眺めた。
 男にしては少し長い黒髪を、肩より少し高い位置で切り揃えたいわゆる「おかっぱ頭」。朗らかな笑顔の似合う男だが、しかし先ほどからの言動を見るに店主の頭にはひとつの単語がちらついている。慇懃無礼。


「……それでな。その『デモンスレイヤー』リナ=インバースは実はとんでもない女だった。魔族共を何匹も倒し、盗賊団を軒並み壊滅させ、時には罪もない村を焼いた事まであるとさ。まるで今『戦女神』扱いなのが笑っちまう程凶暴で災厄のような女だったと」
「ほうほう、それで?」
「対してそのパートナー、ガウリイ=ガブリエフの方はまあ頭の鈍い男だったらしい。リナ=インバースはそれに乗じて他の男とも複数人と関係を持っていた。その中にはあのキメラの魔剣士もいたとか……だからリナ=インバースには20人を超える子供がいたと…」
「ぶふぅッ…」
 突然、話の途中で青年が飲んでいたミルクを噴き出した。
「……あ? 大丈夫か兄ちゃん」
「だ、大丈夫ですお気になさらず」
 そう言いつつも、彼の肩は小刻みに震えている。
「――ええっと、どこまで話したか。そうそう、俺は思うんだ。リナ=インバースは大量に子を成す事で、その子供たちを各国の要職に就けて、最終的には世界の掌握を狙っていたんじゃないかって」
「へええ、なかなか面白い考えですね」
 関心したように何度も頷いて見せる青年に、店主は業を煮やして声をかけた。
「馬鹿な話を真に受けるなよ若いの。そこの親父の与太話は99%妄想だ」
「んだとう!? 客をホラ吹き呼ばわりかマスター!」
 怒りよりもアルコールで顔を真っ赤にした男は、憤慨したようにテーブルの酒を呷って店主を睨む。
「そう呼ばれたくなきゃ溜まってるツケを早く全額払うこった」
 チリが積もって溜まった額は金貨何枚分か。指で数えて見せれば酔っ払いは不貞腐れたように口をつぐんで肩を竦めた。

「――それじゃあ。マスターはどうお考えなんですか?」
 ふと、青年はこちらに向き直った。
「どうって、『デモン・スレイヤー』の伝説かい?」
「ええ、そうです」
 興味深げな紫色の視線が店主の男を捉える。――どうしてこの若者は、そこまでその伝説について聞きたがるのか。
「……どうも何も、そんな破天荒な伝説は大体ホラ話じゃないかと思うね。本当の話もあるだろうが、人の口なんてもんは話を盛り上げる為に大げさに話を盛ったりするもんさ」
「現実主義なんですね」
「まあな。第一、確かにリナ=インバースの伝説は有名だが、大体の話が二人目の魔王討伐で終わっちまってる。それ以降の話はみんな曖昧で適当なもんだ。有名な『戦女神』がどこで死んだのか、どんな最期を迎えたのか、なんにも伝わっちゃいない」
「そうなんですか」
「そうなんですかってあんた、なんでそんなに興味津津のくせにこんな有名な話を知らないんだよ……」
「いやあ。『こちら』に来るのは久しぶりなもので……」
「……?」
 にこにこと笑う青年の言葉の意味がさっぱり分からない。が、店主は深く突っ込む事を本能的に控えた。嫌な予感がしたためだ。――知らない方が幸せな事はある。
「最近はリナ=インバースやガウリイ=ガブリエフの子孫について言及する話をよく聞くが、俺なんかは子孫なんて残っちゃいないと思うんだ」
「なぜです?」
「そりゃ、魔族と魔王の討伐の伝説が全部本当だとしたら、その後他の魔族に狙われた可能性が高いと思うからさ。どうせ、殺されたんだよ。二人とも。だからその後の伝説が残っちゃいないのさ」

「相変わらず、マスターは夢がねえな」
 酒がまずくなるぜ。そう言って、酔っ払いは店主に銀貨を三枚投げて寄こした。そのまま席を立つ。
「全然足りてねえぞ……」
 ツケに追加だ。そう言う前に、青年が小さく手を挙げた。
「――ああ、それじゃ僕が代りに払いますよ。色々お話を教えて頂いたお礼に」
「おお、それはありがたい。恩に着るぜ兄ちゃん」
 口笛を吹きながら出て行った酔っ払いを見送ってから、青年は上機嫌にホットミルクをすする。
「良かったのか?」
「ええ。……本当に、今日は面白い話を沢山聞けました」
 満足そうにほほ笑む青年に、店主は不思議な気持ちになった。この青年は一体何者なのだろうか。まるでなんでも聞きたがる子供のようでいて、実はすべてを知っている賢者が自分たちを試しているようでもある。
「……あんたはどう思う」
「僕ですか?」
「ああ。あんたはリナ=インバースは一体どんな女で、どんな生涯を送ったと思ってるんだい?」
「そうですねえ……」
 店主の問いに、青年はしばし考え込むように視線を天井に向けた。そしてこちらに向き直る。

「マスター。良い言葉を教えて差し上げましょう。……事実は小説より奇なり」
 それだけ。それだけを言い残して、青年は席を立った。

手紙(ガウリナ)

2018-01-27 19:09:16 | スレイヤーズ二次創作
ぷらいべったーより再掲。
ガウリイのばあちゃんに宛てた手紙。

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 ばあちゃん
 久しぶりにこの手紙を書いています。ここ2年くらい、色々とあってなかなか手紙を書く暇がなかったんだ。……いや、たまには暇はあったんだが、なんて書いて良いか分からない事ばかりで。
 うん、とりあえず一番最初から書いていこう。長くなると思うけど、ごめんな。

 まず、旅の連れが出来たんだ。相棒だ。
 オレなんかよりずっと小さくて、子供だったんだ。なのにオレよりもずっと肝も太くて大胆で、びっくりするほど強かった。そのくせ、情に厚くて絆されやすくて。初めて会った時から、なんだか放っておけなくて、一緒に旅する事になって。
 気が付いたら「自称保護者」なんて名乗っちまってた。このオレが女の子の保護者だなんて、笑っちまうだろ? でもさ、ばあちゃんの遺言だからさ。ちゃんと守ってる。嘘じゃない。

 それから、魔王のシャブなんとかって奴を一緒に倒した。死ぬかと思ったんだけど、なんとかなったんだ。その時、オレはリナに助けられたんだ。…ああ、そうだ「リナ」って言うんだ。名前。
 オレと、もう一人。大の男が二人、女の子に説教されちまった。どんなに勝てる確率が低くても、負けると思って戦ったら負けるってさ。その通りだよな。まったく、たいした嬢ちゃんだよ。……こんな事言うとリナに怒られるかな。嬢ちゃんって言うと怒るんだ。

 ああ、それから。ばあちゃんに報告したかったんだ。
 光の剣、失くしちまった。家宝だったのにな。……でも、家から持ち出した事も、失くした事も後悔はしてない。家の中をめちゃくちゃにした剣を、やっと大事な相棒みたいに思えるようになったんだ。仲間を、リナを守れる剣だったから。前に知らないおっさんに「売ってくれ」って言われたんだけど、その時売らなくてよかったな~。

 ばあちゃん。いろんな事があった。サイラーグが壊滅するのを見た。心臓の奥がきゅっと縮むような気がしたんだ。ヒトの技術で、魔族の力で、操られた奴とか、キメラにされた奴とも会った。……それなりに仲良くなった奴らが、死ぬのを見た。復讐心でおかしくなっちまった奴を、リナと一緒に止めた。
 本当に、色々あったんだ。リナと一緒に旅して、でも、辛い事よりも楽しい事の方が多かった気がする。本当だ。
 なんだか、何を書けばいいのか分からなくなってきちまった。こんな手紙読みにくいよな、ごめんばあちゃん。

 今度、墓参りに行こうと思う。ばあちゃん、ちゃんと会いに行くよ。リナと一緒に。家族に会うのはやっぱりちょっと怖いんだけどな。情けないよな。ばあちゃん怒る?
 全部、ケリをつけに行く。そんで、リナと話そうと思うんだ。もっと一緒に居たいって。……なんだか恥ずかしいな。なんて言おうか昨日からずっと考えてるんだけど、良い台詞が思い浮かばなくてさ。ばあちゃん、良かったら応援しててください。

 愛をこめて。
 ガウリイ 

続・とある青年について(ガウリナ風味)

2018-01-27 19:07:26 | スレイヤーズ二次創作
ワンライ参加作品です。
お題「このキャラのここが好き!」
スレイヤーズキャラにガウリイの好きな所を言ってもらいました。
前に書いた『とある青年について』を踏襲してます。

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「ガウリイさんの好きな所?」
 唐突な質問に、少女はきょとんとした顔をした。肩の辺りで切りそろえられた黒い髪が揺れている。黒目がちな瞳がくるくると動いて、彼女なりに質問への答えを探しているようだ。
「そうですねえ。それは……優しい所、ですかね? なんだかんだ、彼って面倒見が良いと思うんですよ。リナの相棒として、甘やかすだけじゃなくて、きちんと窘めたりすることもあるし」
 そう言いながら、彼女は自分で自分の言葉に相槌を打つようにうんうんと頷いて見せる。
「本当に優しい人って、駄目な事には駄目って言える人だと思うんです」
 ――だから、彼は優しい。少女はそう結論付けた。
「大らかで、細かい事を気にしない所も、良いなあと思います。ちょっと忘れっぽいのはザンネンですけど」
 最後にそう付け加えて、彼女はくしゃりと悪戯っぽい笑みを見せる。
「それじゃ、もうわたし行きますから」
 ひらひらと手を振って、彼女はマントを翻した。


「旦那の良い所? ――は、好きな所?」
 フードを目深に被った青年は、そう言ってその目を丸くする。硬質な光がその瞳の奥で煌めいた。
「……そんな事、急に言われてもだな……」
 困ったように腕組みをして、彼は少しの間黙りこんでいた。
 ――……。
「あいつは強い」
 それから、ぽつりとそれだけ呟いて、青年は目を伏せる。
「あいつの強さの裏には、それだけの努力の跡が見える。その上で、敵に情けを掛けられるだけの余裕がある」
 それは奴の美点だ、と彼は言った。
「その甘さは敵の付け入るスキになるかもしれないが……」
 そこまで言って、彼はふっと笑った。
「まあ、リナが居るから、その点は大丈夫じゃないか」 
 何が大丈夫なのか。それを尋ねる前に、青年はもうこちらに背を向けている。
「それと。あいつの天然ボケは、まあ、場を和ませるのには役に立つんじゃないか」
 そのまま去っていく青年の、白いマントが風にはためいた。


「ガウリイ様の好きな所……?」
 その名を聞いた途端に目を輝かせて、彼女は声を弾ませた。長い黒髪がさらりと肩を流れて、淑やかな空気を纏う美女は口元を緩ませる。
「それはもう、沢山ありますわ! 優しい所、強い所。かつて私の故郷を救ってくださった事は、感謝してもしきれません。たくましい身体も、甘いマスクも、まるで……」
 そこまで言葉を継いでから、彼女はハッとしたように手で口元を覆った。
「まあ、私ったらつい興奮してしまって……」
 こほん、と一つ咳払いをする。
「ガウリイ様の好きな所なんて、沢山あり過ぎて、こんな所で語りきれませんわ。……彼は、私の“憧れ”なんです。今までも、これからもきっと、ずっと」
 そう言って、微笑する。その笑みは、少し切なげだ。しかし、その言葉の意味を、それ以上は追及出来なかった。
「……これ以上は、ノーコメントですわ」
 先手を打って、彼女はこちらに向かって人差し指を振って見せる。
 ――それでは。
 そう言って小さく頭を下げて、彼女は踵を返した。


「ガウリイさんの好きな所ですかあ」
 ふーむ。と、軽く声を上げて、その青年は首を捻った。黒いマントをなびかせて、短く切りそろえられた髪を彼はかきあげる。
「やっぱりあの天然さ加減ですかね。面白いですよね、彼」
 そう言って青年は微笑んだ。
「”あの剣”を持っていたというだけで、なかなか驚きなんですけど。それだけじゃなくて」
 何か思案するように、青年はトントンと手にした錫杖で地面をつつく。
「まあ、”ヒト”という存在の中では、それなりに面白い人じゃないですかね。あのお方と正面から切り結んだり、巻き込まれてとはいえ、あのお方と二度も戦って生き残っているわけですから」
 ……何の事を話しているのか、こちらには良く分からない。
「……まあ、これはアナタに言っても分かりませんよね」
 くすりと笑って、彼は人差し指で自分の唇に触れる。
「何の話か知りたいですか? 残念、秘密です」
 気が付くと、彼はいつの間にか目の前から消えていた。


「……ガウリイさんの?」
「好きな所?」
 その男女はそれだけ言って、しばらく顔を見合わせて首を傾げた。
 銀色の髪の女性は、そのつり目気味の瞳をゆっくりと細める。黒髪の青年は、胡散臭そうな目をこちらに向けている。
「そんな事聞いてどうするってんだ、アンタ? 何をたくらんでる?」
「ルーク。……それくらい、答えてあげてもいいんじゃないかしら」
「……まあ、ミリーナがそう言うなら」
 ――……。
 どうやらこの青年は彼女に頭が上がらないらしい。
「まあ、あいつはイイ奴だと思うぜ。嘘とか、つけなさそうな顔してるよな」
「そうね。貴方よりは」
「ミリーナァ!?」
「冗談よ」
 ――……。
「あの人は、私に似ている気がする。……なんとなくだけど」
「あの兄ちゃんと、ミリーナがあ?」
「感情を表に出すのが、そんなに得意じゃなさそう」
 だけど、と彼女は言葉を繋いだ。
「彼は優しい。人の気持ちを、汲んでやろうと思える人。”汲んでやっている”、と思うような傲慢ではない」
「……ああ。そーだな。だから、俺は……感謝してるよ。あいつにも、あの嬢ちゃんにも、な」
 最後の言葉は、どこか感慨深げにそう言って。青年は手を振ってこちらから背を向ける。それに続いて、銀髪の女性も会釈をしてから彼に続いた。
 彼らもまた、いつの間にか目の前から消えていた。



「は、ガウリイの好きな所…!?」
 問いを投げた途端に、その少女は顔を赤く染めた。
「な、急に何聞いてんのよっ」
 ぱたぱたと手を振って、彼女は周りをきょろきょろと見まわした。その拍子に、長い栗色の髪がぱさりと揺れる。
「……す、好きな所かあ……急に言われても分かんないわよ、そんなの」
 分からない、とは。そう尋ねれば、彼女は頭をかきながら、困ったような顔をする。
「だって、そりゃ、長い事一緒に旅してるわけだし、色々、良い所も悪い所も見て来たつもりだけど……」
 ――”好きな所”、なんて。
「言葉になんないっていうか、説明出来ないっていうか……」
 それだけ呟くように言ってから、彼女はこちらをジト目で睨んだ。
「なんでそんな事聞くのよ……」
 そう言われても。こちらも聞かないワケにはいかないわけで。

「…………あいつの、好きなとこ。まだ、あたしに愛想尽かさないで一緒に居てくれるとこ。それと、馬鹿みたいに、お人よしなとこ。……じゃあねっ!」
 少女はそれだけ早口に言うと、マントを翻してさっさと走って行ってしまった。そんな彼女の背中を眺めていれば、とんとんと後ろから肩を叩かれる。
 デジャヴである。

「――それで、なんで今回もオレの事聞きまわってるのか、教えて貰っていいか?」 
 振り向けば、今回も。
 ちょっと照れたみたいに、頬を人差し指で掻く、金髪の青年が立っていた。


おしまい!

夜なのに眩しい。(ガウリナ/現代パラレル)

2018-01-27 19:05:58 | スレイヤーズ二次創作
ぷらいべったーより再掲。
お祭り。夜店を冷やかす高校生二人。

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 甘い匂いがする。それに、ソースの匂いも。
 もわりと籠る蒸し暑い空気に、少し歩けば誰かとぶつかってしまいそうな人混み。――そんな中をリナと二人で歩くのは、今日が初めてだった。

「ガウリイ、あんず飴あった、あんず飴!」
 目をきらきらさせて、オレを振り返るリナの顔が熱気と興奮でか少し上気している。オレはそんなリナを見るのが楽しくて、ただそんな彼女に促されるままに歩く。
 初めて見る浴衣姿。結いあげた髪には小さな花の髪飾りが付いている。横から、後ろから見るだけでもなんだか眩しいのに、そんな彼女が何かを見つける度に振り向いてオレを呼ぶから、その度にオレはどきりとするのだ。

「あんず飴、ガウリイも買う?」
「うーん、オレはいいや」
 既にチョコバナナもかき氷も食べている。甘い物はもう間に合っていた。
「そっか。じゃ、買ってくるからちょっと待ってて」
 そう言って、リナは小走りに駆けだしていく。そんなリナの背中を見送りながら、オレは妙にそわそわした気持を持て余している。空を見上げたら、さっきまでオレンジ色だった空は完全に夜の色に染まっていた。
 花火の時間までは、あと30分。

「お待たせ」
 あんず飴を手に、満足気に戻ってきたリナの笑顔は、いつも教室で見る笑顔と同じはずなのに、なんで今日はこんなに眩しいのだろう。
 ――どうしちまったのかな、オレ。
「ガウリイ、あとなんかやりたいことある?」
「あー、たこ焼き食いたい。あと、焼きそば」
 甘い物だけでは、やはり腹は満たされない。さっきから、色んな所でソースの匂いが充満しているし。
「食べ物ばっかりじゃない」
「それ、お前さんが言うかあ?」
 既にベビーカステラも綿あめも食べているリナにジト目で返せば、リナはむっとした顔でオレの腕をちょっとつねった。
「あたしはさっき射的やりましたあ~」
「はいはい。……あ、それじゃあクジ!」
 たまたま目に留った屋台ののれんには、大きく『くじびき』と書いてあった。
「ええー、やめときなさいよ。大したもの当たらないわよ」
 目立つ所に積まれているゲーム機やら、大型液晶テレビの看板。どこまでが本当に当たるのか分からない、とばかりにリナは胡散臭そうにそれらを眺める。
「まあまあ、ここはちょっと夢を買うってことで……」
 笑って、オレは屋台へと足を運んだ。

「はい、じゃあ500円ね」
 言われるままに小銭入れから小銭を一枚、屋台のおやじさんに渡す。差し出された箱から、紙きれを一枚取り出して。
「はい、残念賞」
「……」
 なんとなく、そんな予感はしたけれど。何か良い物があたるんじゃないか、という淡い期待はあっさり破れてがっくりする。
「そこの緑のカゴから好きなの一個持ってっていいから」
 指差された先には、ゴムのボールやら、玩具で出来た剣やらが無造作に放られていた。さてどうするか。考えていたら、カゴの底の方に何やら光るモノが目についた。
 ――……。
「おやじさん、じゃあ、これ」
「おう、持ってきな!」
 オレが手にしたそれを見て、おやじさんは威勢の良い声とサムズアップをオレに贈ってくれた。少し、面白がっているような顔で。
 たぶんきっと元は500円もしないであろうそれを、オレはジーンズのポケットに突っ込んだ。リナの元へと歩き出しながら、腕時計に視線を落とす。
 花火の時間まで、あと15分。

「ガウリイ、そろそろ花火始まっちゃう」
 いつの間にやら、リナは新しくピンク色のカチワリを買っていた。それを片手にぶら下げて、もう片方の手がオレの腕を引く。
「行くわよ」
 ――アメリア達が、花火が良く見えそうなとこ見つけたって。
 そう言いながら、人の波を掻き分けて歩く。何気なく掴まれた腕の辺りが、妙に熱くてどきどきする。
「あのさ……」
「――あ、焼きそば。ガウリイ、買ってく?」
「え、いや、いいや」
 ふるふると首を横に振れば、リナは小さく首を傾げた。
「いいの?」
「ああ。どうせ、花火見た後でも食べれるだろ」 
 それよりも。
 オレの腕を掴んだリナの手。その指先が、淡くピンク色に染まっている事に、オレはこのときようやく気付いた。
 そんなオレの視線に何を思ったのか、リナが慌てたようにぱっとオレの腕から手を離した。
「あ、その……えっと」
 さっきまで平気な顔でオレの腕を引いていたのに、今になって顔を赤くするリナに、オレはちょっとおかしくなった。
 ――なんだ。妙に浮ついてたのは、オレだけじゃなかったのか。
「ごめん。やだった?」
 恐る恐る、そんな事を聞いて来るリナにオレはまた首を振って、笑う。
「そんなことない」
 今度は並んで歩き出しながら、少しずつ人の波から離れて行く。オレはポケットからさっき引き当てたくじの景品を取り出した。
「リナ、あのさ」
「なに?」
「……これ。さっきくじで当てたんだ」
 手の平に置いた、プラスチックで出来た安っぽい指輪。夜店の灯りを反射する赤い石は、たぶんガラス玉。
「リナにやる。明日になったら捨てても良いから、今夜だけ、つけててくれよ」
 そう言って渡す。
 今夜だけ、その浴衣姿に、オレからの贈り物を付け足させて欲しい。

「……捨てたりなんか、しないわよ」
 しばらくしてから、それだけぼそりと呟いたリナは。受け取ったそれをぎゅっと握って、うつむいたつむじまで真っ赤だった。
 花火が始まるまで、あと……――もう、いつでもいいや。