ぷらいべったーより再掲。
小悪魔リナさんを目指してみました。
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*
「……ねむい」
心底眠そうな声と顔で、リナがそう呟いた。言った傍から、くああと小さな口を大きく開いて欠伸する。そのまま彼女はオレの腕にしがみついて、うりうりと頭を擦りつけてくる。――なんとまあ、無防備な事で。
「リナ。寝るんなら、ちゃんと寝まきに着替えないと」
「んー……」
一応、ここは宿の部屋なわけで。そのままベッドで寝入ってもそんなに問題はないかもしれないが。
とはいえ、それでも夜は冷えるし。厚着したままで寝ては汗をかいて、それが冷えたら風邪をひく。そんなオレの忠告も、リナにはほとんど届いていないらしい。片方の腕でオレにしがみついたまま、リナはその小さな手で自分の目元を擦った。
「んんー。めんどくさい……ガウリイ、着替えさせてよ」
「おいおい」
「じょーだん。へへ」
へへへ、と笑うリナの笑みは、いつもの元気の半分以下。というか、今にも寝入ってしまいそうなほど、とろんとしている。
どうやら、珍しく夕食時に酒を飲んだのがいけなかったらしい。――お湯で割ったはちみつ酒。呂律が回らなくなる程酔ってはいないようだが、彼女は今なんだかとてもふにゃふにゃしていた。
「んん。眠い……」
「なら早く寝る支度しろってば……」
言ったところで響かない。自称保護者の自信を無くしそうである。まったく。
そんなリナの淡くピンク色に染まった横顔を眺めていたら、不意にその顔がこちらを向いた。
「……がうりい」
ひらがなの響きで呼ばれる名前。そしてふわりと漂うはちみつの匂い。潤んだ瞳がオレを映して、ピンク色の唇がゆっくりと緩んで。
――……。
思わずぐらつきそうになった理性を、どうにかして保って顔を顰めた。――据え膳食わぬはなんとやら。ふと頭に思い浮かんだ言葉を脳内で慌てて消しにかかる。今はその場面じゃないだろう。今は。
だが。
「……わざとじゃないだろうな」
思わずそう呟いてしまって、オレは頭を振った。まだ彼女にしがみつかれたままの片腕が、じわじわと熱を帯びている。否応なしに意識する、リナの体温。
――わざとでも無意識でも、性質が悪いぞリナよ。
「ねえ、ガウリイ」
ふと、リナがオレの手をするりと離した。そのまま、大の字でベッドに仰向けに転がって、オレを見上げてふにゃりと笑う。
――ああほら、やっぱり。酔っ払って子供みたいな事を――……。
「わざとだったら、どうする?」
オレの思考を遮って。
思いのほかハッキリと、彼女はそう言った。
「……は」
「どうする? がうりい」
蕩けた笑みと、声が。はちみつみたいで、オレは思考を放棄した。
小悪魔リナさんを目指してみました。
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「……ねむい」
心底眠そうな声と顔で、リナがそう呟いた。言った傍から、くああと小さな口を大きく開いて欠伸する。そのまま彼女はオレの腕にしがみついて、うりうりと頭を擦りつけてくる。――なんとまあ、無防備な事で。
「リナ。寝るんなら、ちゃんと寝まきに着替えないと」
「んー……」
一応、ここは宿の部屋なわけで。そのままベッドで寝入ってもそんなに問題はないかもしれないが。
とはいえ、それでも夜は冷えるし。厚着したままで寝ては汗をかいて、それが冷えたら風邪をひく。そんなオレの忠告も、リナにはほとんど届いていないらしい。片方の腕でオレにしがみついたまま、リナはその小さな手で自分の目元を擦った。
「んんー。めんどくさい……ガウリイ、着替えさせてよ」
「おいおい」
「じょーだん。へへ」
へへへ、と笑うリナの笑みは、いつもの元気の半分以下。というか、今にも寝入ってしまいそうなほど、とろんとしている。
どうやら、珍しく夕食時に酒を飲んだのがいけなかったらしい。――お湯で割ったはちみつ酒。呂律が回らなくなる程酔ってはいないようだが、彼女は今なんだかとてもふにゃふにゃしていた。
「んん。眠い……」
「なら早く寝る支度しろってば……」
言ったところで響かない。自称保護者の自信を無くしそうである。まったく。
そんなリナの淡くピンク色に染まった横顔を眺めていたら、不意にその顔がこちらを向いた。
「……がうりい」
ひらがなの響きで呼ばれる名前。そしてふわりと漂うはちみつの匂い。潤んだ瞳がオレを映して、ピンク色の唇がゆっくりと緩んで。
――……。
思わずぐらつきそうになった理性を、どうにかして保って顔を顰めた。――据え膳食わぬはなんとやら。ふと頭に思い浮かんだ言葉を脳内で慌てて消しにかかる。今はその場面じゃないだろう。今は。
だが。
「……わざとじゃないだろうな」
思わずそう呟いてしまって、オレは頭を振った。まだ彼女にしがみつかれたままの片腕が、じわじわと熱を帯びている。否応なしに意識する、リナの体温。
――わざとでも無意識でも、性質が悪いぞリナよ。
「ねえ、ガウリイ」
ふと、リナがオレの手をするりと離した。そのまま、大の字でベッドに仰向けに転がって、オレを見上げてふにゃりと笑う。
――ああほら、やっぱり。酔っ払って子供みたいな事を――……。
「わざとだったら、どうする?」
オレの思考を遮って。
思いのほかハッキリと、彼女はそう言った。
「……は」
「どうする? がうりい」
蕩けた笑みと、声が。はちみつみたいで、オレは思考を放棄した。