ゆるい感じで。

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アトラスでひと騒ぎ【10】(子世代)

2014-11-13 16:40:03 | 子世代妄想
お待たせしました(;´Д`)
前回からの続きです。

剣の戦闘描写、難し過ぎました......

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月明かりの下、ゆっくりとした足取りで歩いてきたのはランツだった。
「そういえば、おっさんもこの宿に泊まってるんだったか......」
「おう!最近腕が鈍っちまってるから、少しは勘を取り戻そうと思ってな。どうだ、ちょっと試合しねぇか?」
からからと笑うおっさんの背にあるのはバスタード・ソード。
そちらに視線を向けると、彼は笑って首を振った。
「違う違う、さすがに夜中に剣振り回すのは危ないだろう。使うのは......こっちだ」
言って、ランツがそこらの草村から拾ってきたのは少し太めの木の枝だった。
「これでちょっと遊ぼうぜ」
ひらひら枝を振るランツにちょっとむっとする。──まるで子供扱いだ。......まあ、相手はおっさんだから、オレも子供に見えるのかもしれない。

頷いて枝を受け取ると、相手が構えたのでこちらも渋々枝を構えた。
ふう、と一つ息を吐いて、ランツと対峙する。
「ほう......」
ランツが面白そうに小さな声を上げた。
「それじゃ行くぞっ」
「おうっ!」

ひゅん、ひゅん、ぴしり。
枝が空気を斬り、肌や枝同士ぶつかる音が闇夜に響く。
「よっ、ほっ」
軽く声を上げながら、ランツが身を踊らせる。ひゅんひゅんと唸る枝がこちらに襲いかかってきた。
「はっ!」
こちらも気を吐いて応戦する。ばちり、と音を立てて枝が弾かれた。
弾かれた枝が自分の頬を掠めて、小さく顔をしかめる。

ランツは思った以上に腕があるようだった。ただのおっさんではないらしい。
年齢に見合わぬ身軽な動きで、くるりと身を翻し、こちらの懐に入り込んでくる。
「くっ......!」
思わず後ろに飛んで距離を取れば、相手は迷わず踏み込んで来る。
しかし、こちらも負けてはいられない。
ランツの枝を自分のそれで受け止めてから、すくい上げるように枝を振り上げる。
驚いたようにそれを押さえ込むランツ。オレは咄嗟にその場にしゃがみこんだ。
「!?」
抵抗力がなくなって、ランツはその場でバランスを崩す。
バチィッ!
オレの『突き』の攻撃は、咄嗟に差し出された相手の枝を半ば近くでへし折っていた。

「......やるじゃねぇか」
にやり、と笑ってランツが折れた枝を放り捨てる。
「ハァ......おっさんもな」
「はは、生意気な兄ちゃんだなぁ」
勝負に勝ったのはオレのハズだが、オレの方がおっさんより息を切らしていることが悔しい。
「イイ汗をかいたぜ。付き合ってくれてありがとうよ」
そう言ってさっさと行ってしまいそうになるランツを、オレは思わず呼び止めた。
「なあ......」
「ん?」
「あんた、ガウリイ=ガブリエフと知り合いなんだよな? じゃあ、その剣の腕を間近に見たことあるのか?」
若い頃の父さんの剣技。それが気になった。

オレの問いに、ランツが目を輝かせる。
「おう!そりゃあすげー腕前だったぜ。初めて会ったときにな、あの人は金貨を一枚半分に剣で両断して見せたんだ。それ見ていっぺんで惚れちまった」
「えっ......おっさんソッチの人だったのか?」
思わず一歩後ずさる。ランツは慌てたように首を振った。
「違うわいっ!剣技に惚れたんだよ!......そんで、兄貴って呼ぶようになった」
「へええ」
「すげーだろ?俺も練習してみたんだが、兄貴みたいにすっぱり綺麗に両断は出来ねえもんよ」
言って、ランツはごそごそと胸元を探る。取り出した小さな巾着袋から、金貨らしき物を取り出した。暗闇でよく見えないが、たぶんそれが、父さんが両断した代物なのだろう。
小さなコインを真っ二つに斬るなど、確かに物凄い腕だ。今のオレには、たぶん出来ない。
──だけど......。
「そのとき兄貴から買ったんだ。御守り代わりだ......くくっ」
当時を思い出したのか、小さく笑うランツ。
オレはそんなランツを眺めながら、小さく顔をしかめる。
「......良いけどよ。それで金貨を無駄にすんのは感心しないぜ」
例え銅貨の一枚でも、粗末にしてはバチが当たる。母さんのありがたい教えである。
オレの言葉に、ランツは目を丸くして、それから笑った。
「ははは......!ほんとに、兄ちゃんは面白いな」
「?」
「いや、なんでもねえ。そんじゃ、また明日な」
ひらひらと手を振って、ランツは歩き去る。
オレは、その後ろ姿をぼんやりと眺めていた。


続く

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次回に続きます!