ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

宿の部屋にて。(ガウリナ)

2021-08-28 15:06:47 | スレイヤーズ二次創作
どもです。本日の800字SSです~。

--------------------------------------------------------------------

「おーいリナ、そろそろ飯食いに行こうぜ……って、何やってんだお前さん?」
 数回のノックの後、すぐに開けられた部屋のドア。顔だけ覗かせた自称保護者の旅の連れは、あたしの姿を見るなりげぇっと言って不審そうに顔を顰めてみせた。
「ちょっとガウリイ、ノックしたからって返事する前にドア開けないでよね」
 あたしの抗議を聞き流して、彼は勝手に部屋に入ってドアを閉める。――まあいいけどさ。
「この暑いのになんでそんな恰好してるんだ。具合悪くなっちまうぞ」
 そう、あたしは今マントで身体をすっぽり覆ってベッドの上で膝を抱えて丸まっていたのだった。
 窓から差し込む陽射しの眩しさと、ガウリイの額に浮いた酷い汗を見れば部屋の内外の暑さは一目瞭然であろう。――端的に言うと死ぬほど暑い。死ぬほど暑くて一歩でも外に出れば溶けそうである。
 けれど。
「だーいじょうぶよ。このマントの下、冷え冷えだから」
 あたしはマントにすっぽり包まれたままニヤリと不敵に笑ってみせる。実際、あたしは今快適状態なのでこのまま一歩も動きたくないのであった。
「……??」
「弱冷気の呪文でちょろ~っと空気を冷やしてんのよ。それをマントで密閉してるってわけ」
 極限まで弱めた氷の呪文を大気に放ち、それをマントで包み込む。……我ながら頭が良い。天才かもしんない。
 あたしの説明に納得したのか、ガウリイはポンと手を打って。
「なるほど……って、リナずるいぞっ! そんな事出来るならオレにもやってくれればいいのにっ」
 言って、マントをめくろうとしてくる自称保護者にあたしは慌てた。
「ぎゃっ、ちょっと! マントの裾引っ張んないでよ。冷気が逃げるでしょっ!」
「またやればいいだろ。――ほら飯行くぞリナ」
 聞かないガウリイは無理やりマントを引っぺがして手を取ろうとして。……そして見てしまった。マントの下、暑さのあまり下着一枚になっていたあたしを。
「あ」
「…………」
「…………すまん」
「た、た、黄昏よりも昏き者ぉぉぉおおおお」
「だぁあああ~~~~っ! すまんリナ悪かったぁあ~~っ」
 その後、宿の部屋が大爆発しなかったのはあたしの自制心のたまものであった。


氷(ガウゼロ/現パロ)

2021-08-15 18:37:18 | スレイヤーズ二次創作
どもです。お久しぶりです!
800字チャレンジで書いたSSを投稿です。

人気のかき氷専門店で長時間並ぶ大学生二人。
-------------------------------------------------------------------------------

「ようやく店内に入れましたねえ」
「暑かったなあ~。なんでこんなに並んでるんだ?」
 夏季休暇。大学も長期の休みに入って、暇を持て余して。男二人でかき氷の専門店に並ぶなんて、そんな女子みたいな事に興じている。照りつける太陽の下長時間並ばされて、シャツの背中にびっしょりと汗を掻いたガウリイの呻きに、隣のゼロスは涼しげな顔で返事を返した。
「そりゃ、人気店ですから」
「……とは言ってもなあ」
 かき氷なんて祭りの露店くらいでしか食べた事のないガウリイには、最近人気のかき氷、と言われてもあまりピンと来ていなかった。言うまでもなく、今日ガウリイを誘ったのはゼロスの方だ。
「最近のお洒落かき氷を舐めちゃダメですよガウリイさん。インスタやらで人気の店は、大体三十分は待たされるのが普通ですから」
 ちっちと指を振って、ゼロスは得意げにスマホの画面を見せてくる。誰かが投稿したのであろう、この店のかき氷の写真がずらりと。……どれもこれも派手に盛り付けられた、まるでパフェみたいなかき氷。
「そこまでして食いたかったのか?」
「まあまあ、良いじゃないですか」

   *

「っと、写真?」
 ようやっと運ばれてきたかき氷に手を付ける前に、ふと顔を上げれば目の前でゼロスがスマホを構えている。
「ほらほら、笑ってください。良い感じのポーズもお願いします」
「お、おう……」
 とりあえずのピース。それで満足したらしい、ゼロスはスマホを机の上に置いて目の前のかき氷に手を合わせた。――一体何を考えているのだか。訝しく思いつつも、まあ、別にどうでもいいかとガウリイは思考を投げ出した。せっかくなら、目の前のご馳走を楽しまなければ損である。
「じゃ、溶ける前に頂きまーす」
 
「……む、旨い……!」
 スプーンで一口。氷に掛かるとろりとした苺のシロップには果肉がたっぷりで、その上に乗った練乳クリームは口の中でふわりと溶けた。
 ——確かに、これは旨い。凄く旨い。
 暑さでやられた身体が、心地よい冷たさに癒されていく。なるほど、並んでまで食べたいかき氷、とはこういうものなのか。納得しながら、勢いよく氷を食べ尽くしてしまって。器に残ったシロップも、そのままの勢いで飲み干した。
 と。目の前で同じように氷を食べていたはずのゼロスは、機嫌よくスマホを操っている所だった。
「ふふ、リナさんの羨ましがる顔が浮かぶようですね……」
 どうやらわざわざさっきの写真を送りつけているらしい。――ゼロスには、リナにちょっかいをかける悪癖がある。
「意地が悪いぞお前さん……それに、ここ、一回リナと来たしなあ」
「——え?」
 瞬間、その目を見開いた男に、ガウリイは思わず笑った。
「……ははっ、嘘だよ」
「…………そっちの方がよっぽど意地が悪いですよ、ガウリイさん」
 ジト目で睨んでくるその様子が、ガウリイには新鮮で、そして愉快だ。――いつもいつも自分達を振り回すのだから、これくらいの意地悪は許されるだろう。
「すまんすまん。ほら、まだ底にシロップ残ってるぞ?」
「あげませんからね!」
 唇を尖らせた男の普段感じられない可愛らしさに、ガウリイは頬を緩ませた。