どもです(´ω`)
ガウリナです!短め。
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静かな夜。
あたしは宿の窓から身を乗り出して外を見つめていた。
──今夜は月が明るい。そして真ん丸。
「月が綺麗、だな」
聞き慣れた声がして、あたしは辺りを見回した。
「ガウリイ?」
「こっちだよ」
見れば、ガウリイは窓の下で剣を片手に立っていた。こんな夜に剣の練習だろうか。
「ねえ知ってた?」
「あん?」
「『月が綺麗ですね』って、どこかの国では昔口説き文句だったらしいわ」
「...ほおー、そりゃ奥ゆかしいなあ」
宿のおばちゃんから聞いた話に、ガウリイは感心したように笑った。
「──そう?わっかりづらいと思わない?」
「ははは。お前さん的には、そうかもしれないな」
しばらく話したあと、ガウリイはあたしに背を向けて剣を構え、一人練習を始めた。
ひゅん、と風を切る音が断続的に響く。
相変わらず凄い腕前だ。あたしと旅する中で、彼の腕前は以前よりさらに上がっていると思う。
やっぱり今のあたしには目で追うだけで精一杯だ。
また剣の稽古、つけて貰わねば。
敵の剣が振り下ろされる音には肝が冷えるのに、ガウリイの剣の音はなぜか心地よい。
あたしはしばらく彼の剣の練習を見つめていた。
今夜は月が明るいから、ガウリイの姿がよく見える。散る金色の髪も、背中に浮かぶ汗も。
──って、どこ見てんのよあたし。
ふるふると頭を振ると、剣の音が止まった。
「リナ...恥ずかしいからあんまり見てくれるな」
背中を向けたまま、ちょっと照れたように頬を掻く。
「...はいはい。──おやすみ、ガウリイ」
「──ああ、おやすみ」
あたしは静かに窓の扉を閉めた。
暗い部屋も、月明かりが差し込んで寂しくない。
再び聞こえてきたひゅん、という音を耳にしながら、あたしはベッドで目を閉じた。
翌朝。
早く起きて食堂に降りたあたしに、宿のおばちゃんはにこにこ近づいてきた。
「おはようお嬢ちゃん。昨夜は月が綺麗だったね」
「え?ええ、そうね」
「連れの兄さんから、気の利いた口説き文句でも貰えたかい?」
「はあ...!?」
あたしがすっとんきょうな声を上げると、おばちゃんは何故か残念そうな顔をした。
「...そうかい。いや、残念だったね」
何だか勝手に凄くがっかりされている。何故だ。
「あのぅ、おばちゃん?」
「いやー、昨日兄さんの方にも教えてやったんだけどね。『月が綺麗』の口説き文句」
「...え」
「いやー、残念。きっといいことあるよ」
言うだけ言ってさっさと行ってしまうおばちゃん。
あたしはしばらくその場に突っ立っていた。
──月が綺麗、だな。
昨日の夜。
ガウリイの声で、その台詞が確かに思い出される。
──その意味は、もしかして。やっぱり?
朝食のメニューに目を通しながらも、あたしの頭には同じ台詞がリフレインされていた。
「...ガウリイの、たぬき」
くらげの癖に、たぬきだった?
あたしは思わず朝食の席に突っ伏したのだった。
終わり
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くらげのたぬきって、どんなだよ!って感じですね(笑)
ガウリナです!短め。
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静かな夜。
あたしは宿の窓から身を乗り出して外を見つめていた。
──今夜は月が明るい。そして真ん丸。
「月が綺麗、だな」
聞き慣れた声がして、あたしは辺りを見回した。
「ガウリイ?」
「こっちだよ」
見れば、ガウリイは窓の下で剣を片手に立っていた。こんな夜に剣の練習だろうか。
「ねえ知ってた?」
「あん?」
「『月が綺麗ですね』って、どこかの国では昔口説き文句だったらしいわ」
「...ほおー、そりゃ奥ゆかしいなあ」
宿のおばちゃんから聞いた話に、ガウリイは感心したように笑った。
「──そう?わっかりづらいと思わない?」
「ははは。お前さん的には、そうかもしれないな」
しばらく話したあと、ガウリイはあたしに背を向けて剣を構え、一人練習を始めた。
ひゅん、と風を切る音が断続的に響く。
相変わらず凄い腕前だ。あたしと旅する中で、彼の腕前は以前よりさらに上がっていると思う。
やっぱり今のあたしには目で追うだけで精一杯だ。
また剣の稽古、つけて貰わねば。
敵の剣が振り下ろされる音には肝が冷えるのに、ガウリイの剣の音はなぜか心地よい。
あたしはしばらく彼の剣の練習を見つめていた。
今夜は月が明るいから、ガウリイの姿がよく見える。散る金色の髪も、背中に浮かぶ汗も。
──って、どこ見てんのよあたし。
ふるふると頭を振ると、剣の音が止まった。
「リナ...恥ずかしいからあんまり見てくれるな」
背中を向けたまま、ちょっと照れたように頬を掻く。
「...はいはい。──おやすみ、ガウリイ」
「──ああ、おやすみ」
あたしは静かに窓の扉を閉めた。
暗い部屋も、月明かりが差し込んで寂しくない。
再び聞こえてきたひゅん、という音を耳にしながら、あたしはベッドで目を閉じた。
翌朝。
早く起きて食堂に降りたあたしに、宿のおばちゃんはにこにこ近づいてきた。
「おはようお嬢ちゃん。昨夜は月が綺麗だったね」
「え?ええ、そうね」
「連れの兄さんから、気の利いた口説き文句でも貰えたかい?」
「はあ...!?」
あたしがすっとんきょうな声を上げると、おばちゃんは何故か残念そうな顔をした。
「...そうかい。いや、残念だったね」
何だか勝手に凄くがっかりされている。何故だ。
「あのぅ、おばちゃん?」
「いやー、昨日兄さんの方にも教えてやったんだけどね。『月が綺麗』の口説き文句」
「...え」
「いやー、残念。きっといいことあるよ」
言うだけ言ってさっさと行ってしまうおばちゃん。
あたしはしばらくその場に突っ立っていた。
──月が綺麗、だな。
昨日の夜。
ガウリイの声で、その台詞が確かに思い出される。
──その意味は、もしかして。やっぱり?
朝食のメニューに目を通しながらも、あたしの頭には同じ台詞がリフレインされていた。
「...ガウリイの、たぬき」
くらげの癖に、たぬきだった?
あたしは思わず朝食の席に突っ伏したのだった。
終わり
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くらげのたぬきって、どんなだよ!って感じですね(笑)