ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

最期の願い。(ルクミリ)

2020-10-28 23:14:47 | スレイヤーズ二次創作
どもです。本日の800字!
ルクミリで14巻ネタです。死ネタ注意…

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 魔族から受けた傷に毒があった。そして、すぐに適切な解毒の処置を受けられなかった。……それだけ。たったそれだけで、私の命はもう長くはないだろうと分かってしまった。
 徐々に力が失われていく身体。目が霞み、思考がぼやける。ずっと、水際で溺れかけているように苦しい呼吸を、しかし今やめてしまったらそれきり、私は目覚める事はないだろう。――だから、まだ。あと少しだけ。
「……ミリーナ……、ッ」
 噛みしめすぎて唇から血を流すルークの、その私を呼ぶ声に応えるまでは。
「ルー……ク」
 なんとか吐き出した声は、思った以上に弱々しく響く。それに、私の手を握るルークの手にぐっと力が籠った。温かい。まだ、私はルークの体温を感じていられる。
「人を嫌いにならないで」
 どうか。どうか私の為に世界を、人を呪わないで。私の事など忘れてしまっても構わないから。
 必死に私の手を握る、その顔がまるで途方に暮れ、今にも泣き出しそうな幼子のようで。どうして私は今、彼に手を伸ばす事すら、微笑んであげる事すらできないのか。
 ――笑って欲しい。最期に一番欲しいのは、いつも私にめいっぱいの言葉を、気持ちを伝えてくれた彼の笑顔。……ああ、そうか。こんな死の間際に、私が求めるのはルークの安らぎだったのか。
 それに気が付くのがこんなに遅くなるなんて。最後の最後まで。私は、本当に不器用だ。
 ――ルーク、ごめんなさい。……本当にありがとう。
 唇だけ動かして、伝えたかった言葉はついぞ声に乗せる事は出来なかった。


嵐の日。(ガウリナ)

2020-10-11 18:48:02 | スレイヤーズ二次創作
どもです。本日の800字です~。
ていうか竜斬破の香水が出たの知ってます…!?
とんでもないグッズが出ましたね~~。待ってました……買います…

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「はぁー、ほんと嫌になっちゃうわね」
 慌ただしく宿の部屋に足を踏み入れながら、あたしとガウリイは背負っていた荷物を絨毯の上に放り出す。重みから解放された肩を回して、濡れて額に張り付いた前髪を掻き上げた。その拍子に、ぽたぽたと水滴が床に滴る。
 ――突然の雨。それも、大嵐。
 急なそれに慌てたあたし達は、とりあえず近くにあった宿に駆け込んだのだ。この嵐の中、森を抜けて次の街を目指すのは流石に無理というものであった。
「しっかし、一つでも部屋が空いてて良かったなあ」
「まあ、こんな雨の中野宿するのに比べたら、二部屋取れなくても文句は言えないわね」
 やれやれと首を振るあたしに、旅の連れはにっと笑う。
「この宿、下に広い大浴場があるんだろ? 落ち着いたら後で行ってみようぜ」

 暖炉に魔法の火を付ける。徐々に部屋の温度が上がっていくのに合わせて、身に着けていたモノを一つ一つ脱いでいく。濡れて張り付いて気持ちの悪かった手袋に、水の入ってしまったブーツに、マントに……。と、その横で、ガウリイががばりと上着を脱いで上半身裸になってしまう。
 ――……。
「ん、どうした?」
 あたしの視線に気づいたのか、小首を傾げるガウリイ君である。
「……貴方よく普通に脱げるわね」
「オレの裸なんて見慣れてるだろ?」
 さらり。まるで何てことないようにそう言い放った彼に、あたしはカッと顔を赤くした。
「誤解を招く発言をするなっ!!」
「ええ~? だって……」
 確かに。確かに一緒に旅をしているのだから、やむを得ず海に飛び込んだりとか、野宿の時に川で身体を清めたりとか。そういう時に見てしまった事があるのは否定しないけど!
「リナも脱がないと、その濡れた服ずっと着てたら風邪引くぞ」
 のほほんとそう言い放つガウリイには、デリカシーというものが無い。くうう、この唐変木。
「分かってるわよ」
「ほら、あっち向いててやるから」
 さっさとふんどし一丁になってしまって、暖炉の前に身を寄せる彼をジト目で睨む。
「……見たら殴るわよ」
「安心しろって。オレはリナの『自称保護者』だぞ?」
「『自称』ってとこが問題なのよ」
 実際、本当にガウリイを怪しんでなんていないけど。――けど、恥ずかしいもんは恥ずかしいっての。
 ため息一つ。観念して脱ぎ始めたのは、それから暫く経ってからだった。


Magic Hour(ガウリナ)

2020-10-03 15:00:20 | スレイヤーズ二次創作
どもです。あきらです。
2019年8月25日のスレイヤーズプチオンリー『ドラスレ警報発令中!』にて【みけねこ本舗】様より頒布されたガウリナアンソロジー、『にこいち。』に寄稿させて頂いた作品を、この度掲載許可頂いたので、掲載しちゃいます…!
(説明が長くてすみません…笑)
こちら豪華作家陣の小説あり、漫画あり、美麗イラストあり、で最高のアンソロ本になっております。まだお買い求め頂けるようなので、気になる方はぜひ~!というわけで通販ページのリンクを貼るわよ!!→ガウリナアンソロジー『にこいち。』
素敵な企画に参加させて頂いてありがとうございました(∩´∀`)∩

ではでは、以下寄稿させて頂いた私の拙作です~。
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 夜明けが近い。
 まだ宵闇に染まる海沿いの街道を、あたしとガウリイは並んで歩いていた。活気のある昼間とは違って、ひとけのない道はしんと静かで、少しだけ肌寒い空気は澄んでいて綺麗だ。
こんな夜中なのにベッドに身を預けていないのは、少し前まで森の中を彷徨っていたからだった。
 ――勘違いしないで欲しいのは、別に森の中を彷徨っていたからと言って迷子になっていたわけでは無い。
決して、ちょーっと盗賊いぢめに精を出したら森の一部を丸焦げにして近隣住民から追い掛け回されたとか、あたしの鋭すぎる勘によって選ばれた分かれ道の一方が盛大に間違っていたとか、そんなことはない。……ないったら。

 ……まあ良い。そんなわけで、あたしたちはようやっと暗くてじめじめした森を抜けて、目的地へと向かう街道に出られたのである。さっきまでとっぷりと深い闇に沈んでいた道行きも、あと少しすれば朝日に照らされるだろう。うっすらと夜の闇が端からオレンジ色に溶け始めていた。
「……はぁー、腹減った」
「おなじく。あとお風呂入りたい。ふかふかのベッドで寝たい」
「右に同じだな……」
 歩き通しでくたくたなあたしたちは、ぶつくさと現状への不満を口にしながら、重い足取りを一歩一歩前へと
動かしていく。――まあ、旅というものは大体こんなもんである。
「次の街まであとどれくらいだ?」
「そうね。森は出られたんだし、あと半日も歩けば街の港が見えてくるはずよ」
「半日……」
 遠い目をする相棒の背中を無言でぱしりと叩いてやる。彼のぼさぼさと乱れた金髪は、なんだか雨に濡れた犬みたいな臭いがした。……あたしもきっと似たような物だろう。一晩森の中を歩き通しだったのだから仕方がない。
 ――ああ、早くお風呂で身体を清めたい。携帯食料は底をついてしまったし。路銀だけは、盗賊たちからたっぷり頂いたから困っていないけれど。ついでに徴収したクズ宝石の類は、重いから早く加工して売り捌いてしまいたいし。あ、そろそろマントも新調したいかもしれない。それから、それから……。
 そうしてつらつらと思い浮かぶ考えに耽っていたあたしは、不意に、隣を歩いていた相棒がいない事に気が付いた。
「っ、ガウ……」
 慌てて振り返れば、少し後ろで立ち止まって、海を眺める相棒の姿がちゃんとあって。あたしはそれにホッとする。そしてその横顔が、金色に照らされている事に気が付いた。
 夜が明けたのだ。

「リナ」
 海の方を向いたまま、彼があたしの名前を呼んだ。
「見ろよ、日が昇ってる」
 眩しいくらいに輝く世界の中で、ガウリイがそんな当たり前の事を言う。彼が指さした方に目を向ければ、確かに今この瞬間、水平線から丸い光が徐々に浮かび上がる。深い紫色と金色のグラデーション。

 ――まるで、世界の始まりを見ているみたいだ。
なんとなく、そんな事を思った。

 今、そんな静かで幻想的な空間に、二人ぼっち。
「綺麗だなあ」
「……そうね」
 なんだか胸がざわざわして落ち着かなくて、あたしは苦笑する。雰囲気に呑まれるとはこういうことか。
――ロマンチック! なんてキャーキャー騒ぐのは柄じゃない。けれども、あたしだって乙女なのだから、仕方がない。うん。

「なあ、リナ」
 昇っていく太陽を眺めていたガウリイが、不意にこちらを向いた。
「何?」
 そのアイスブルーの瞳が、朝日を受けていつもより淡い色に輝いている。
「……愛してる」
 いつもと同じ優しい声。そして柔らかい笑みにどきりとする。

「――はは、なんてな。急に恥ずかしい事言っちまった。柄じゃないな」
 すぐにそう照れたように笑って、彼は片手でがしがしと自分の頭を掻いた。その困ったような笑顔に、あたしは胸がぎゅっとする。
 嬉しい気持ちと、照れくささと、そしてほんの少しだけ切ないような、泣きたくなるような、そんな不思議な気持ち。
なんだかたまらなくなって、あたしは目の前の自称保護者に飛びついた。
「うわっ」
 間の抜けた声を上げる相棒の腕に思い切り抱き着いて、彼の顔を見上げる。
「ほんと、なーに気障な事言っちゃってんのよ、ガウリイってば!」
「はは、ほんとにな。なんか、この景色があんまり綺麗だったからさ。雰囲気に流されちまったかな……」
 苦笑する彼は、どうやらあたしと同じく、この雰囲気に呑まれてしまったようで。

 ――日の出。『マジックアワー』なんて言われるくらい、世界が美しく黄金色に輝く十数分。海までが光を反射して金色に揺蕩っている。それを眺めて、あたしは何か懐かしい光景を思い出しそうになって、頭を振る。今は、それはどうでもいい。

「なによう、じゃ、今の言葉は雰囲気に流されて出た嘘なわけ?」
 口を尖らせたあたしの軽口に、彼は慌てたように首を横に振った。
「そんなわけないだろっ!」
 その思いのほか必死な否定に思わず笑ってしまう。
――そっかそっか、そんなにガウリイ君はあたしの事が大好きか。そんなに言われちゃあ仕方がない。
「……へへ。じゃ、許す」
 背伸びして、あたしは彼の頬に軽く触れるだけのキスをした。チュッと小さな音がして、少しだけこそばゆい。呆けたような顔をするガウリイに、あたしはにっと微笑んでみせる。

「あたしも。大好き」

 言って、その瞬間あたしは彼の腕から手を離して駆けだした。

「あ、ちょっと、待てよリナっ」
「待たないーっ!」
 彼の顔が見られない。一瞬前の自分の出来心に顔が熱くなって、気恥ずかしさに爆発しそうで、全速力でその場から逃走を図る。
 金色に輝くマジックアワーの世界で鬼ごっこ。ロマンチックが台無しである。
 でも、それでも良いのだ。
 ――だって、彼ならば、あたしを追いかけて来てくれると、信じているから。

 走って、走って、時に歩いて、しんどくたって、ずっと傍にいる。
 あたしたちの旅は、ずっとそうやって、これからも続くのだから。それで良い。

「ガウリイー!」
「なんだあーっ!?」
「先に街に着いた方が勝ち、ね!」
「急にそれはずるいぞリナっ」
 後ろから聞こえる彼の情けない声に笑い声を上げる。
上がっていく息も、早くなる鼓動も。身体をなぶる冷たい風さえも、なんだか心地が良くて。あたしは緩んでしまう頬を抑えられずに、二人分の足音を耳にしながら
世界を駆けていくのだった。