ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

こしょこしょ。(ガウリナ)

2017-06-26 00:52:21 | スレイヤーズ二次創作
ぷらいべったーより再掲。
こちらもフォロワー様よりリクエストで「お互いにくすぐり合うガウリナ」で、書かせて頂きました~。
ほんとにかわゆいお題ですよね…!

しかしめっちゃ短いです。

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「隙ありっ!」
 背後で急にそう叫ばれて、オレはその場に硬直した。硬直したのは、聞こえた声がリナの声だったから。そうでなければその場から飛びのいている所なのだが。
 その声とほぼ同時、がっし、とその細くて白い手がオレのわき腹を掴んだ。――なんだなんだ?
「行くわよガウリイ、覚悟っ」
 そう言うなり、リナの指がわしゃわしゃ動き出す。
「えっ、ちょっ」
 驚くオレに構わず、リナは容赦なくその指でオレのわき腹をこちょこちょとくすぐる。そして後ろから響く楽しそうな掛け声。
「それこーしょこしょこしょこしょ…!」
 ――が。
「………………」

 しばしの沈黙。

「……なんで反応ゼロなのよ」
 しばらくオレのわき腹やら首筋やらくすぐっていたリナは、全く反応しないオレにつまらなさそうにその手を止めた。
「……なんでと言われても、なあ」
 戦闘やら何やらで鍛えられ、硬くなった皮膚はちょっとしたくすぐり程度にはびくともしない。別に刺激に鈍くなった、というわけでもないのだが。
「というか、なんで急にこんな事を…」
 なんというか、まるで小さい子供みたいな事を。尋ねれば、リナはむーっと口を尖らせて言い訳するみたいに口を開く。
「アメリアが……」
「アメリア?」
 ――どうやら先ほど、アメリアに不意打ちで嫌と言うほどくすぐられたらしい。仕返ししようにも彼女がいないので、その八つ当たり先にオレが選ばれたというわけか。  
「ふうん」
「はあ、つまんない」
 疲れた、とでも言うように、リナがオレの隣に並んで天を仰ぐ。それを見て、オレの中でも小さな悪戯心が芽生えた。

「隙あり」
「え」

 こしょこしょ。
 素早く彼女の背後に回って、彼女のわき腹に手を回す。目には目を、歯には歯を。なんて、つまりは仕返しである。
「ひゃっ……」
「はっはっはどーだリナ!」
 途端に悲鳴を上げて、身体をくの字に折り曲げるリナ。オレはそれに笑ってもうひとくすぐり浴びせてやる。オレと違ってやわらかい皮膚の上に、指をこしょこしょ滑らせる。
「やっ、ちょっ…ガウリイ…だめっ、ひやっ」
 ――……。
 猛烈にオレの指に反応するリナが、顔を真っ赤にして、涙目でオレを睨む。――いかん。なんだか、このままでは変な気分になりそうである。
「ま、まいったかリナ!」
「う、うう~~。ま、まだだいじょーぶよっ!」
 ――なんでそこで降参しないんだ!
 いつもの負けず嫌いを発揮するリナに、オレは内心頭を抱えた。しかしこうなったら引きさがるわけにはいかない。
「よし、それならこーだっ」
「きゃっ、ちょっ、あひゃひゃっ……っ」
 こしょこしょ。わき腹から、今度は背中の真ん中をなぞって、今度は首筋――……

「何やってるのよ、二人とも」
「「……」」

 呆れた声と視線を浴びて、ようやくオレとリナは顔を見合わせて我に返るのだった。


おしまい。



静かな夜の境界線(ゼルアメ)

2017-06-26 00:49:22 | スレイヤーズ二次創作
どもです。お久しぶりです。
ぷらいべったーより再掲。ツイッターのフォロワー様よりリクエスト「アメリア→ゼルでゼルアメ」ということで。
書かせて頂きました~。原作寄りの二人です。

四人組で旅の途中のひとこま。

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 夜。
 とっくに皆眠りこんでいるであろう深い時間に、わたしは不意に目を覚ました。小さな窓から差し込む月明かりに、眠る前にカーテンを閉め忘れていた事に気付く。昨日の昼間は暖かかったのに、安宿の古い一室は夜の空気に冷たく冷え込んでいた。
 もう一度寝直そうと、さっきよりも毛布をきつく身体に巻きつけて目を閉じる。
「…………ふう」
 眠れない。
 ――仕方が無い。厚手の上着をはおって、わたしは宿の部屋から抜け出した。


 暗く静まった宿の廊下をひたひたと歩けば、並ぶドアの一つから淡く明かりが漏れていた。そのドアの表札には、控えめに手書きされた『談話室』の文字。確か、宿泊客なら誰でも利用出来る部屋だったはずだ。
 ノックして扉を開ける。しかして、そこに居たのは。
 ――……ゼルガディスさん。
 部屋の入り口に背を向けて、ソファに座りこんでいる見慣れた後ろ姿。夜中だというのに、昼間と同じように白いマントを身にまとったまま。魔道書か何か読んでいるのだろう、彼の横のサイドテーブルには、分厚い本がいくつか綺麗に積まれていた。
「……、」
 わたしは知らず小さく息を呑んでいた。急に心臓が音を立てて動きを速める。ぼんやりしていた頭の中がきりりと澄んでいく。
 なんて声を掛けようか。
 その言葉が見つからぬままゆっくりとその背中に近付けば、彼の背中がぴくりと動いた。
 ――あ。
 向こうを向いたまま、彼が顔を上げる。そして振り向きざまに彼は静かに口を開いた。
「なんだ、リナか?」
 
「……残念。わたしでした」
 ぱちん、と胸の中で何かがはじけた音がした。

「……ああ、悪い。こんな時間に出歩くのはアイツくらいかと思って……アメリア、何かあったのか?」
 彼は手に持っていた本をそっと閉じる。それはやはり魔道書だった。

 勝手に膨らんでいた期待が、また勝手にしぼんでいく。ただ、彼があのタイミングで彼女の名前を口にしたという、ただそれだけで。我ながら、なんて打たれ弱いのかしら。

「特になんでもないの。ただ、ちょっと眠れなくて……ここの明かりが付いていたものだから」
 笑ってそう答えれば、彼は小さく頷いた。
「そうか」
「……貴方は?」
「俺は、自分の部屋よりこっちの方が落ちついてな。読書に良い」
 そう言って、彼はまた本を開いた。そのまま視線を本に落とす。短い会話はおしまいだ。
「隣に座っても?」
「……好きにすればいい」
「それじゃあ」
 了承を取って、隣に座る。ソファは確かに部屋のベッドよりも柔らかく、座り心地がよかった。深く沈み込んで、背もたれに寄りかかる。
 ――……。
 彼の隣。
 それでも、背もたれみたいに彼に寄りかかることなんて、今のわたしには出来ない。
 やるせなくて天井を眺めたら、木目の模様に面白い形があって、わたしはそっと笑った。

 黙ったまま、黙々と本を読む彼の横顔を眺めているのは嫌いじゃない。むしろその反対。――だけど。その目がこちらを向くのを……わたしを見るのを期待するのは、希望が薄ければ虚しくて切ない。
 今のわたしには、彼がページを繰る手を邪魔することは出来ない。

 見えない境界線が、静かにわたしを拒絶する。

「……」
 やっぱり冷えている空気の中で、わたしは上着の前をぎゅっと合わせた。
 ――部屋に、戻ろう。
 スリッパを履いた裸足に視線を落とす。立ちあがろうと腰を浮かす。
 その瞬間。
「寒いのか?」
 本に向いていた彼の視線は、いつの間にか至近距離でわたしを見つめていた。
 ――見えない境界線を、彼の方から飛び越えて。

「……へ?」
 思わず、気が抜けた声が出てしまう。
「いや。……違ったか?」
「え、と、あの。ええ、寒い……寒いです!」
 慌てて頷くと、彼はそうか、と小さく一人ごちる。読んでいた本を膝に置いて、彼はおもむろに自分の着ていたマントを脱いだ。そしてそれを、私に差し出した。
「……ゼルガディスさん?」
「あまり変わらんかもしれないが……少しはマシだろう」
 汚れたマントなんて、寝巻きの上から着るのは嫌かもしれないが。ぼそりとそう付け加えられた言葉に、わたしはぶんぶんと首を横に振った。そしてそれを上着の上から身体に巻きつける。いつも彼が身につけている、白くて丈の長い、それ。
 ――凄く、凄く嬉しい。
 表情が緩んでしまうのが、抑えられない。
「さっきよりずっと暖かいわ……ありがとう、ゼルガディスさん」
 心からの笑顔でそう言えば、彼はそっと目を伏せた。その表情は、特に何も思っていないからなのか。それとも照れているからか、一体どっち?
「……そうか」
 その視線がまた、本へと落ちる。
「優しいんですね」
「……」
 彼は返事をしない。視線は本に向いたまま。

 だけど。
 彼の手は止まったまま、しばらく次のページをめくる事はないのだった。