ぷらいべったーより再掲。
「つま先へのキスは崇拝のキス」だそうで。短いです。
同棲恋人設定。
------------------------------------------------
「お前さん、何やってんだ?」
お風呂上がり。タオルで長い金髪を拭きながら、ガウリイはラグマットの上に座り込むあたしを見てそう尋ねた。集中していたあたしは、少しだけ間を置いてから顔を上げる。
「見れば分かるでしょー。ネイル塗ってんのよ」
先に手の方を塗り終えてから、同じ色を今度は足の爪に塗っている。先週買ったばかりの、アメリアと色違いでお揃いのネイルラッカー。苺ミルク色のそれは、重ねて塗るとちょっとだけ色が変わるのだ。
手の爪よりも、足の爪に塗る方が数段難しいので、あたしは慎重に慎重に事を進めていた。数十分かけて、ようやっと最後の一本もピンク色に染まる。
隣に置いていたネイルの小瓶を摘まみ上げて、そっと蓋を閉める。そこまでを無事に終えてから、あたしはほっと息を吐いた。――終わった。
そして、そんなあたしをじっと見つめているガウリイに気が付いた。わざわざ、あたしの目の前にしゃがみ込んだりして、彼はしげしげとあたしのつま先を見つめている。
「ふーん……」
「じっと見られてると恥ずかしいんですケド」
思わず口に出して言うと、彼は顔を上げてへらりと笑って見せた。
「すまんすまん。なんか面白いなあ~と思って」
まだ少し濡れている金髪を掻きあげて、ガウリイはそっとあたしの足に手を伸ばす。
「……ってちょっと、何すんのよ!?」
慌てるあたしに構わず、彼は伸ばした手であたしの足先を掴んだ。塗ったばかりでまだ爪が乾いていない方のの足を、ガウリイの目線まで持ち上げられる。急な事に、あたしはバランスを崩しそうになって、咄嗟にマットの上に手を突いて身体を支えた。
「ガウリイ」
名前を呼んで、じとりと睨む。そんなあたしに、彼は無邪気に笑う。
「オレが乾かすの手伝ってやるよ」
そう言って、ふっとつま先に吹きかけられる吐息。
「ひゃっ……っ」
「おいおい、暴れるなって。塗った所触っちまうだろー?」
「誰のせいよっ……!」
ふーふー。ふう。
まるで熱いモノを食べる時に息を吹きかけて冷ますみたいに。彼はあたしの足に熱心に息を吹きかける。その生温かい吐息をつま先に感じて、くすぐったいやら恥ずかしいやら。怒って暴れ出したいのに、そんな事をしたらネイルが取れてさっきまでの努力が無駄になってしまう。……まさか、それを分かってやってる? いやいや、まさかそんな。でも。
――くうう、ガウリイのくせに!
なんだか、してやられているみたいで、悔しい。
「……ん、よし。そろそろ乾いたんじゃないか?」
しばらく経ったら、彼は満足そうにそう言った。だけど、まだその手を離してくれない。
そして。
「……っ、ん、なに」
彼は不意に、あたしのつま先にキスを落とした。ちゅっと軽い音を立てて、その唇はすぐに離れて。
「美味しそうだなー、と思って」
にへら、と笑った彼の顔に、あたしは瞬間的に足を引っこめた。
そのまま自分を守るみたいに膝を抱えて、彼を睨む。――顔を真っ赤にしながら睨んでも、迫力が無いのは分かってるんだけど。
「すけべ!」
渾身の力を込めて叫んだら、ガウリイはちょっとだけ意地悪な顔をする。
「知ってただろ?」
「……しらないっ!」
ぷい、と顔を背けても。彼がどんな顔であたしを見ているかくらいは、分かってしまって頭を抱えそうになるのだった。
おしまい。
「つま先へのキスは崇拝のキス」だそうで。短いです。
同棲恋人設定。
------------------------------------------------
「お前さん、何やってんだ?」
お風呂上がり。タオルで長い金髪を拭きながら、ガウリイはラグマットの上に座り込むあたしを見てそう尋ねた。集中していたあたしは、少しだけ間を置いてから顔を上げる。
「見れば分かるでしょー。ネイル塗ってんのよ」
先に手の方を塗り終えてから、同じ色を今度は足の爪に塗っている。先週買ったばかりの、アメリアと色違いでお揃いのネイルラッカー。苺ミルク色のそれは、重ねて塗るとちょっとだけ色が変わるのだ。
手の爪よりも、足の爪に塗る方が数段難しいので、あたしは慎重に慎重に事を進めていた。数十分かけて、ようやっと最後の一本もピンク色に染まる。
隣に置いていたネイルの小瓶を摘まみ上げて、そっと蓋を閉める。そこまでを無事に終えてから、あたしはほっと息を吐いた。――終わった。
そして、そんなあたしをじっと見つめているガウリイに気が付いた。わざわざ、あたしの目の前にしゃがみ込んだりして、彼はしげしげとあたしのつま先を見つめている。
「ふーん……」
「じっと見られてると恥ずかしいんですケド」
思わず口に出して言うと、彼は顔を上げてへらりと笑って見せた。
「すまんすまん。なんか面白いなあ~と思って」
まだ少し濡れている金髪を掻きあげて、ガウリイはそっとあたしの足に手を伸ばす。
「……ってちょっと、何すんのよ!?」
慌てるあたしに構わず、彼は伸ばした手であたしの足先を掴んだ。塗ったばかりでまだ爪が乾いていない方のの足を、ガウリイの目線まで持ち上げられる。急な事に、あたしはバランスを崩しそうになって、咄嗟にマットの上に手を突いて身体を支えた。
「ガウリイ」
名前を呼んで、じとりと睨む。そんなあたしに、彼は無邪気に笑う。
「オレが乾かすの手伝ってやるよ」
そう言って、ふっとつま先に吹きかけられる吐息。
「ひゃっ……っ」
「おいおい、暴れるなって。塗った所触っちまうだろー?」
「誰のせいよっ……!」
ふーふー。ふう。
まるで熱いモノを食べる時に息を吹きかけて冷ますみたいに。彼はあたしの足に熱心に息を吹きかける。その生温かい吐息をつま先に感じて、くすぐったいやら恥ずかしいやら。怒って暴れ出したいのに、そんな事をしたらネイルが取れてさっきまでの努力が無駄になってしまう。……まさか、それを分かってやってる? いやいや、まさかそんな。でも。
――くうう、ガウリイのくせに!
なんだか、してやられているみたいで、悔しい。
「……ん、よし。そろそろ乾いたんじゃないか?」
しばらく経ったら、彼は満足そうにそう言った。だけど、まだその手を離してくれない。
そして。
「……っ、ん、なに」
彼は不意に、あたしのつま先にキスを落とした。ちゅっと軽い音を立てて、その唇はすぐに離れて。
「美味しそうだなー、と思って」
にへら、と笑った彼の顔に、あたしは瞬間的に足を引っこめた。
そのまま自分を守るみたいに膝を抱えて、彼を睨む。――顔を真っ赤にしながら睨んでも、迫力が無いのは分かってるんだけど。
「すけべ!」
渾身の力を込めて叫んだら、ガウリイはちょっとだけ意地悪な顔をする。
「知ってただろ?」
「……しらないっ!」
ぷい、と顔を背けても。彼がどんな顔であたしを見ているかくらいは、分かってしまって頭を抱えそうになるのだった。
おしまい。