前回の続きです。
-----------------------------
ルーナとフィルに抱き抱えられて現れたのは、町長の息子ゼノンだった。ボロボロの服に傷だらけで、デーモンに手酷く痛め付けられたようだ。
「ゼノン!なんでここに...!?」
オレの言葉に、ゼノンが身を震わせた。
「すみません...!どうしても皆さんが気になって。思わず着いてきてしまったのです」
「なんて危ない事を...」
ルーナが声を荒げる。
「姉さん、今は依頼人を説教してる暇は無いよ」
「分かってる!」
フィルの言葉にルーナがイライラと髪を掻き上げる。
「ゼノン」
オレはある種の期待を持って、ゼノンに声をかけた。
「なんでしょう?」
ゼノンは恐縮したようにオレに顔を向けた。
「ゼノンは魔導をかじっているか?」
「ええ...まぁ、少しは」
「じゃあ、ちょっと協力してくれないか?この結界を解きたい」
オレは目の前の見えない壁を叩いて見せる。
「...分かりました!」
ゼノンはオレの横に来て、結界を睨んだ。
いくつか精霊呪文や僧侶が使うような破邪の法を使ってみるが、結界は解けそうにない。
「ラウディ」
ルーナに呼ばれて結界の側を離れ近くに行けば、彼女は小声で不平を漏らした。
「あの人が結界を解けると思うの?」
「...まぁ、見とけよ」
フィルが風の結界を張り、レオナが時折呪文で攻撃して背後を守っているが、デーモンがこちらに襲いかかって来るのは時間の問題だ。
「兄さん、ルーナ!こっちもフォローして!」
「おう!」
二人で駆け寄り近くのデーモンと応戦していると、背後で破裂音が響いた。
ぱん!
それに続いてゼノンの嬉しそうな声。
「やりました!皆さん早くこちらへ!!」
驚愕する三人を尻目に、オレは内心笑いながら駆け出した。
*************************
建物内は明らかに外観よりも広かった。
小屋のような見た目に対して、中身は壮大な洋館のようだ。石畳に埃だらけのシャンデリア。しかし灯りは無く、薄暗い。
「なんなんだここは...」
呟く声が建物内に反響する。
「中の空間も歪んでるみたいですね...」
フィルの険しい声にオレは頷いた。
やはりこれは魔族の仕業に違いない。これほどまでに空間をねじ曲げられる人間をオレは知らない。
何が目的なのかはさっぱり分からないが、そんなもん分かる必要も無い。
「ここに町の人々が捕らえられているかもしれません...しかし声を上げれば敵に見付かってしまうかも」
ゼノンの言葉にオレたちは走りながら頷いた。
「もうみんな死んでいるという可能性は?」
「...考えたくありませんね」
ルーナの言葉にゼノンはギュッと拳を握りしめた。
広間の中央辺りまでたどり着くと、外がにわかに静かになった。
「デーモンの気配が...消えた?」
しかし禍々しい空気はより濃くなっている。
オレたちは走るのをやめ、ゆっくりと歩きだした。
「...それにしても、ゼノンさんはどうやってあの結界を解いたの?」
レオナの問いかけに、ゼノンが困ったような顔をした。
「さあ、とにかく無我夢中で色々な呪文を唱えていたら、突然解けたのですよ...」
「へぇー...」
レオナが不思議そうな顔をしてゼノンを見つめるのを、オレは黙って聞いているのだった。
続く
-------------------------
久しぶりに連続更新です(笑)
次回に続く!
-----------------------------
ルーナとフィルに抱き抱えられて現れたのは、町長の息子ゼノンだった。ボロボロの服に傷だらけで、デーモンに手酷く痛め付けられたようだ。
「ゼノン!なんでここに...!?」
オレの言葉に、ゼノンが身を震わせた。
「すみません...!どうしても皆さんが気になって。思わず着いてきてしまったのです」
「なんて危ない事を...」
ルーナが声を荒げる。
「姉さん、今は依頼人を説教してる暇は無いよ」
「分かってる!」
フィルの言葉にルーナがイライラと髪を掻き上げる。
「ゼノン」
オレはある種の期待を持って、ゼノンに声をかけた。
「なんでしょう?」
ゼノンは恐縮したようにオレに顔を向けた。
「ゼノンは魔導をかじっているか?」
「ええ...まぁ、少しは」
「じゃあ、ちょっと協力してくれないか?この結界を解きたい」
オレは目の前の見えない壁を叩いて見せる。
「...分かりました!」
ゼノンはオレの横に来て、結界を睨んだ。
いくつか精霊呪文や僧侶が使うような破邪の法を使ってみるが、結界は解けそうにない。
「ラウディ」
ルーナに呼ばれて結界の側を離れ近くに行けば、彼女は小声で不平を漏らした。
「あの人が結界を解けると思うの?」
「...まぁ、見とけよ」
フィルが風の結界を張り、レオナが時折呪文で攻撃して背後を守っているが、デーモンがこちらに襲いかかって来るのは時間の問題だ。
「兄さん、ルーナ!こっちもフォローして!」
「おう!」
二人で駆け寄り近くのデーモンと応戦していると、背後で破裂音が響いた。
ぱん!
それに続いてゼノンの嬉しそうな声。
「やりました!皆さん早くこちらへ!!」
驚愕する三人を尻目に、オレは内心笑いながら駆け出した。
*************************
建物内は明らかに外観よりも広かった。
小屋のような見た目に対して、中身は壮大な洋館のようだ。石畳に埃だらけのシャンデリア。しかし灯りは無く、薄暗い。
「なんなんだここは...」
呟く声が建物内に反響する。
「中の空間も歪んでるみたいですね...」
フィルの険しい声にオレは頷いた。
やはりこれは魔族の仕業に違いない。これほどまでに空間をねじ曲げられる人間をオレは知らない。
何が目的なのかはさっぱり分からないが、そんなもん分かる必要も無い。
「ここに町の人々が捕らえられているかもしれません...しかし声を上げれば敵に見付かってしまうかも」
ゼノンの言葉にオレたちは走りながら頷いた。
「もうみんな死んでいるという可能性は?」
「...考えたくありませんね」
ルーナの言葉にゼノンはギュッと拳を握りしめた。
広間の中央辺りまでたどり着くと、外がにわかに静かになった。
「デーモンの気配が...消えた?」
しかし禍々しい空気はより濃くなっている。
オレたちは走るのをやめ、ゆっくりと歩きだした。
「...それにしても、ゼノンさんはどうやってあの結界を解いたの?」
レオナの問いかけに、ゼノンが困ったような顔をした。
「さあ、とにかく無我夢中で色々な呪文を唱えていたら、突然解けたのですよ...」
「へぇー...」
レオナが不思議そうな顔をしてゼノンを見つめるのを、オレは黙って聞いているのだった。
続く
-------------------------
久しぶりに連続更新です(笑)
次回に続く!