皆さんメリークリスマス~♪もう年末ですね。早いっ!
今回はtwitterでお世話になっているめがちゅうさんとのクリスマスプレゼント交換企画、ということでリクエスト頂いた『まだ想いを伝えあっていないガウリナ』のSSでございます!
両片想いって良いですよね~。好きです!
……と言う事で、続きからどうぞー。原作二部後の時間軸です。
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――……すき、スキ、好き?
彼と目を合わせる度に、頭の中で何度もリフレインするそれ。その短い二文字の言葉に、あたしは振りまわされそうになる。どうして良いのか分からなくなる。
……だから、あたしはそっと彼から目を逸らす。
ガウリイと二人で旅をするようになってから、もう何年経ったのだろう。色々な人と出会って、色々な事件に巻き込まれて。魔族に目を付けられたり、『魔王』と戦ったり。楽しい事もあって、哀しい事もあって。
ルークの事があってから、あたしとガウリイは、あたしの故郷ゼフィーリアへと向かっていた。
「ぶどうが食べたい」
そんな単純過ぎる理由であたしの故郷へ行きたいと言ったガウリイの真意は、本当の所は良く分からない。ルークの件であたしは相当参ってしまっていたから、たぶんそれを気遣ってくれたのだろう、という予測はなんとなく出来るのだけど。――あたしの相棒は、脳ミソはゼリーで出来ているけれども、気遣いはちゃんと出来るヒトだ。
ゼフィーリアへ向かう旅の途中、彼は度々あたしの家族に会ってみたいと笑う。どんな人かと尋ねて来る。だからあたしは、少し恥ずかしくなりながらもとーちゃんやかーちゃんの話をする。ねーちゃんの事は……怖いからあんまし話したくないけど。
「いいなあ、リナの家は。毎日楽しそうだ」
あたしの話を楽しそうに聞きながら、ガウリイは嬉しそうに言った。
「そう?」
「ああ。オレも早く会ってみたい。色々話してみたいな」
「……」
あんまりにも目を輝かせてそんな事を言うものだから、あたしは少し反応に困った。――なんであんたがそんなに嬉しそうなのよ?
「……ねえ」
「ん、どうした?」
「あたしの家族ってもガウリイにとっては他人でしょ? なんでそんな会いたがるのよ」
かねてからの疑問を口にすると、彼は一瞬目を瞬かせてから、それから笑ってあたしの頭に手を置いた。
「リナの家族ってだけで、オレにとっては他人って感じ、しないんだけどな」
言葉と同時に、頭をくしゃりと撫ぜられる。
「……っ」
その、いつもと同じトーンの声と、無邪気な笑顔と。温かい掌の温度に、こんなに動揺させられるなんて。数年前のあたしなら、きっと予想も出来なかった。
もしかして、もしかしたら。
一度、ガウリイが初めてあたしの故郷に行きたいと言いだした日にしたような、恥ずかしい想像をしてしまう。「娘さんをください」なんて、そんな月並みな台詞を吐くガウリイを、頭の中に描いては頭を左右に振った。
――ないない、絶対ないってば!
そう思いながら、あたしは前を歩くガウリイの背中を見上げた。
見慣れた長い金髪と、ブルーの甲冑。腰に差した斬妖剣。彼と一緒の道を行くのが、今や当たり前になっていて。
安心感、落ち着き。あたしの中で、ガウリイという存在はその二文字だった。ずっと。……なのに。
こみ上げるものがあって、あたしは自分で自分の髪をくしゃりと握った。
――……なんでこんなに落ち着かないのよっ!?
どきどきする。隣にいると嬉しいのに、妙に不安になる。どきどきする。なんだか堪らなくなる。
今まで、どんな顔をして彼と一緒にいたのだっけ?
「――リナ、どうした?」
ふと気が付くと、彼があたしの顔を覗き込んでいた。その心配そうな青い目を見て、あたしの中の温度が一度上昇した。
「ん、なんでもない」
「ほんとかー?」
「うん」
なんでもない。なんでも。……たぶん、これは。
***
リナと一緒に、彼女の故郷へと向かっている。
ルークの件があってから、たぶんそれが彼女にとって最善だろうと思ったから、オレはそれを提案した。ぶどうが食べたいから、なんてとっさにごまかしてしまったが、きっとリナは聡いからそれくらい分かっているだろう。……それくらい、リナは本当に憔悴していたから。
――まったく、ルークという奴は。向こうでミリーナに怒られていれば良い。
だが、それだけが理由でゼフィーリアに行きたいと言ったのではなかった。純粋に、リナの故郷を見てみたかったし、それにリナの家族にも会ってみたかった。
それから、これからもリナと一緒に居る事に、許しを得たかった。これからも彼女を護ると、誓ってみせようと思った。リナの家族にも、勿論リナ本人にも。――リナを無事に、彼女の家へと送り届ける事が出来たら。
リナと旅して、どれくらい経ったのだろう。もう、忘れてしまった。彼女と旅した時間は、それ以前とはまるで違って、鮮烈で強烈で、凄い勢いで過ぎ去っていくから。
最初は、とんでもない奴と出会ってしまったと思った。でも、強い癖に危なっかしくて放っておけなくて、強引について行って。だんだん、オレ自身が護ってやりたいと思うようになって。
――オレは、リナとずっと一緒にいたい。これからも、ずっと。
泣いているリナを、躊躇いなく抱きしめてやれるようになりたい。ま、リナはそんな簡単に泣くような奴ではないのだが。
「――ねえ、ガウリイ」
急に名前を呼ばれてハッとした。声の方へと視線を向ければ、後ろを歩いていたはずのリナが、いつの間にやら隣でオレを見上げている。……その目に見つめられると、考えてる事全部、白状したくなるんだよなあ。
「珍しく難しい顔して、何考えてんの?」
珍しいは余計だ、と言うのをやめて、オレは苦笑いしてリナの頭に手を乗せた。柔らかい栗色の髪をわしゃわしゃ撫でる。
「ちょ、ちょっとそれやめてってば」
少しだけ赤い顔をするリナに、胸がきゅっとする。それを隠して、いつものように笑ってみせた。
「昨日の夕飯のメニュー、なんだったか思いだそうとしてたんだ」
「……心配してソンした」
途端に呆れた目をするリナは、マントを翻して先を歩きだす。その背中を追いながら、俺は晴れた空を見上げた。
――まだ、もう少しだけ。このままで。
オレの気持ちを、本心を見せるのには……まだ少し、早過ぎる。
今回はtwitterでお世話になっているめがちゅうさんとのクリスマスプレゼント交換企画、ということでリクエスト頂いた『まだ想いを伝えあっていないガウリナ』のSSでございます!
両片想いって良いですよね~。好きです!
……と言う事で、続きからどうぞー。原作二部後の時間軸です。
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――……すき、スキ、好き?
彼と目を合わせる度に、頭の中で何度もリフレインするそれ。その短い二文字の言葉に、あたしは振りまわされそうになる。どうして良いのか分からなくなる。
……だから、あたしはそっと彼から目を逸らす。
ガウリイと二人で旅をするようになってから、もう何年経ったのだろう。色々な人と出会って、色々な事件に巻き込まれて。魔族に目を付けられたり、『魔王』と戦ったり。楽しい事もあって、哀しい事もあって。
ルークの事があってから、あたしとガウリイは、あたしの故郷ゼフィーリアへと向かっていた。
「ぶどうが食べたい」
そんな単純過ぎる理由であたしの故郷へ行きたいと言ったガウリイの真意は、本当の所は良く分からない。ルークの件であたしは相当参ってしまっていたから、たぶんそれを気遣ってくれたのだろう、という予測はなんとなく出来るのだけど。――あたしの相棒は、脳ミソはゼリーで出来ているけれども、気遣いはちゃんと出来るヒトだ。
ゼフィーリアへ向かう旅の途中、彼は度々あたしの家族に会ってみたいと笑う。どんな人かと尋ねて来る。だからあたしは、少し恥ずかしくなりながらもとーちゃんやかーちゃんの話をする。ねーちゃんの事は……怖いからあんまし話したくないけど。
「いいなあ、リナの家は。毎日楽しそうだ」
あたしの話を楽しそうに聞きながら、ガウリイは嬉しそうに言った。
「そう?」
「ああ。オレも早く会ってみたい。色々話してみたいな」
「……」
あんまりにも目を輝かせてそんな事を言うものだから、あたしは少し反応に困った。――なんであんたがそんなに嬉しそうなのよ?
「……ねえ」
「ん、どうした?」
「あたしの家族ってもガウリイにとっては他人でしょ? なんでそんな会いたがるのよ」
かねてからの疑問を口にすると、彼は一瞬目を瞬かせてから、それから笑ってあたしの頭に手を置いた。
「リナの家族ってだけで、オレにとっては他人って感じ、しないんだけどな」
言葉と同時に、頭をくしゃりと撫ぜられる。
「……っ」
その、いつもと同じトーンの声と、無邪気な笑顔と。温かい掌の温度に、こんなに動揺させられるなんて。数年前のあたしなら、きっと予想も出来なかった。
もしかして、もしかしたら。
一度、ガウリイが初めてあたしの故郷に行きたいと言いだした日にしたような、恥ずかしい想像をしてしまう。「娘さんをください」なんて、そんな月並みな台詞を吐くガウリイを、頭の中に描いては頭を左右に振った。
――ないない、絶対ないってば!
そう思いながら、あたしは前を歩くガウリイの背中を見上げた。
見慣れた長い金髪と、ブルーの甲冑。腰に差した斬妖剣。彼と一緒の道を行くのが、今や当たり前になっていて。
安心感、落ち着き。あたしの中で、ガウリイという存在はその二文字だった。ずっと。……なのに。
こみ上げるものがあって、あたしは自分で自分の髪をくしゃりと握った。
――……なんでこんなに落ち着かないのよっ!?
どきどきする。隣にいると嬉しいのに、妙に不安になる。どきどきする。なんだか堪らなくなる。
今まで、どんな顔をして彼と一緒にいたのだっけ?
「――リナ、どうした?」
ふと気が付くと、彼があたしの顔を覗き込んでいた。その心配そうな青い目を見て、あたしの中の温度が一度上昇した。
「ん、なんでもない」
「ほんとかー?」
「うん」
なんでもない。なんでも。……たぶん、これは。
***
リナと一緒に、彼女の故郷へと向かっている。
ルークの件があってから、たぶんそれが彼女にとって最善だろうと思ったから、オレはそれを提案した。ぶどうが食べたいから、なんてとっさにごまかしてしまったが、きっとリナは聡いからそれくらい分かっているだろう。……それくらい、リナは本当に憔悴していたから。
――まったく、ルークという奴は。向こうでミリーナに怒られていれば良い。
だが、それだけが理由でゼフィーリアに行きたいと言ったのではなかった。純粋に、リナの故郷を見てみたかったし、それにリナの家族にも会ってみたかった。
それから、これからもリナと一緒に居る事に、許しを得たかった。これからも彼女を護ると、誓ってみせようと思った。リナの家族にも、勿論リナ本人にも。――リナを無事に、彼女の家へと送り届ける事が出来たら。
リナと旅して、どれくらい経ったのだろう。もう、忘れてしまった。彼女と旅した時間は、それ以前とはまるで違って、鮮烈で強烈で、凄い勢いで過ぎ去っていくから。
最初は、とんでもない奴と出会ってしまったと思った。でも、強い癖に危なっかしくて放っておけなくて、強引について行って。だんだん、オレ自身が護ってやりたいと思うようになって。
――オレは、リナとずっと一緒にいたい。これからも、ずっと。
泣いているリナを、躊躇いなく抱きしめてやれるようになりたい。ま、リナはそんな簡単に泣くような奴ではないのだが。
「――ねえ、ガウリイ」
急に名前を呼ばれてハッとした。声の方へと視線を向ければ、後ろを歩いていたはずのリナが、いつの間にやら隣でオレを見上げている。……その目に見つめられると、考えてる事全部、白状したくなるんだよなあ。
「珍しく難しい顔して、何考えてんの?」
珍しいは余計だ、と言うのをやめて、オレは苦笑いしてリナの頭に手を乗せた。柔らかい栗色の髪をわしゃわしゃ撫でる。
「ちょ、ちょっとそれやめてってば」
少しだけ赤い顔をするリナに、胸がきゅっとする。それを隠して、いつものように笑ってみせた。
「昨日の夕飯のメニュー、なんだったか思いだそうとしてたんだ」
「……心配してソンした」
途端に呆れた目をするリナは、マントを翻して先を歩きだす。その背中を追いながら、俺は晴れた空を見上げた。
――まだ、もう少しだけ。このままで。
オレの気持ちを、本心を見せるのには……まだ少し、早過ぎる。