『とある魔術の禁書目録』の二次小説です。
土御門が好き過ぎて書いてしまった……。ピクシブにもいくつか載せてますが、こっちには一遍だけ。
いずれ禁書だけのサイトを作ろうかと画策中です。(土一とか好みなんだよなあ……。
暗部時代の土御門兄妹。兄妹愛。
-------------------------------------------------
「んん……」
土御門元春は目を覚ました。身体がだるい。背中のあたりが妙に痛かった。昨日の『仕事』の際、怪我を負ったのかもしれない。だが、病院に行くほどのものではないだろう。これくらいなら、自分の貧弱な能力でなんとかなるはずだ。
カーテンの隙間から洩れる朝日がまぶしく、思わず目を細める。
「良い天気ですにゃー」
うんと伸びをしてから起き上がると、土御門は携帯をチェックした。なんの連絡も入ってはおらず、ほっと息をつく。いつもの自分の部屋には、呆れるほどの平和が満ちていた。
適当な朝食を口に入れて、日課のジョギングに精を出す。今日は午後から舞夏が来るから、部屋を片付けなくてはならない。主にアダルトな本やらコスプレ用ミニスカメイドさん服の類などなど……。
考えながら走っていると、自分の寮の方角から聞き覚えのある少年の叫び声と、少女の怒りの声が聞こえて来た。どう考えてもそれはお隣の上条当麻と禁書目録の声で、思わず笑ってしまう。朝から元気な事だ。
――今度は何をやらかしたんだ、上やん……。
「まぶしいぜよ。まったく」
サングラスをしていても、上条当麻を見ていると時にどうしようもなくまぶしく感じるのは、自分が闇に染まりきっているからかもしれない。
******************
「兄貴ー! 夕飯作りに来たぞーっ」
ばーん、と鍵の開いたドアを開けて、愛しい義妹が元気な声で入ってくる。幸せをひしひしと全身で感じながら、土御門は舞夏を迎え入れた。
「兄貴も、少しは家事を覚えたらどうだー?」
スーパーで買いこんできたらしい食材を大量に冷蔵庫に入れながら、舞夏が何とは無しに言う。
「そんなことしたら、舞夏があんまり来なくなっちまうじゃないかにゃーっ!!」
そんな恐ろしい事は想像したくもない、とばかりに全身を震わせる土御門に、舞夏は呆れたように肩を竦めて見せた。
「まったく、やれやれなんだな」
「それに、お兄ちゃんは忙しくて家事を覚えてる暇がないんだぜい」
「寝っ転がってゲームしながら言われても、説得力が無いんだぞー」
じろり、と土御門を睨んでから、舞夏はふっと軽く笑う。
「しょうがない兄貴だなー。私がいなくなったら行き倒れちゃうんじゃないかー?」
「いやあ、しっかりした義妹を持てて、お兄ちゃんは幸せですたい」
冗談めかして笑いながら、土御門は内心自嘲した。たぶん、舞夏がいなくなったら自分は本当に行き倒れるだろう。いや、それ以上だ。
義妹を失ったら、自分は生きる意味を失う。――義妹を失う事になった原因すべてに報復を、そしてその後は自分に死を。
まあ、万が一にも舞夏を危険な目に遭わせるつもりなどないのだが。
「兄貴、おかわりは?」
「お願いするぜい」
茶碗を渡せば、舞夏は笑顔でそれを受け取った。二人で囲む食卓に、今自分は幸せだと思う。腹の内の探り合いなど必要のない会話は心地よく、改めて、土御門はこの何気ない日常を守ると決意する。
「しあわせだなあ」
ぽろり、と聞こえて来た声に驚いた。自分の考えが口から出てしまったのかと思ったが、その声は舞夏のものだった。
「……どうした? 急に」
「いや、やっぱり家族と一緒に食べるご飯は美味しいよなーって。ありがとな、兄貴」
にこにことそんな事を言う義妹に、胸の奥がぎゅっと音を立てた。不意に涙腺が緩みそうになって、それを押さえつけて笑う。
「礼を言うのはこっちの方なんだぜい」
思わず義妹の頭を撫でた土御門に、舞夏は照れ笑いしながらその手を退けた。
「小さい子扱いするなよー」
「いやいや、愛しい女の子扱いなんだぜよ」
「それはそれで問題なんだぞ、兄貴」
この幸せを守るためなら。この少女を守るためなら……。今までに何度だって考えて、揺るぎそうにも無い想いが土御門の胸の内でぐるぐると渦巻いていた。そして、それを顔に出す事は無い。いつものことだ。
その時、耳障りな機械音が自分のポケットから聞こえてきて、思わず舌打ちしそうになった。携帯が鳴っている。番号を確認すれば、案の定それは暗部の人間のものだった。
「なんだにゃー。せっかく舞夏との団らんを楽しんでいるというのにーっ!」
ピリリ、と高い音を鳴らし続ける携帯に文句をつけると舞夏が苦笑する。
「出てあげなよ。急ぎかもしれないぞー?」
「……すまないにゃー」
内心急ぎの電話では無いことを祈りつつ、立ち上がって電話に出る。
『ようやくつながりましたね』
出たのは丁寧な男の声だった。『グループ』の「上」の男だ。通称「電話の男」。『グループ』に仕事の指示が下るときは大抵この男から土御門に連絡があった。
「もしもし? 今忙しいから後にしてほしいにゃー」
『……おや、家族団らん中でしたか。これは失礼しました』
申し訳なさなど微塵も感じていないであろう声で言われて、土御門は肩を竦めた。義妹と一緒だと見抜かれている。それでも、相手は特にためらいなどしない。
『「グループ」に仕事が入りました。今夜9時に集合をかけてください。仕事内容は後で詳しく』
土御門は部屋の掛け時計に目をやると嘆息した。今午後7時。舞夏との時間はあと二時間も無い。隣人のヒーローよろしく、「不幸だ」と叫びたい衝動に駆られる。
「……了解なんだにゃー」
あくまでも日常での口調を保ったまま電話を切れば、土御門は舞夏に笑ってみせた。
「今日これから深夜バイトが入っちまったにゃー」
「兄貴、バイトなんか始めたのかー?」
「最近金欠なんですたい。やっぱりあの攻略対象全員メイドさんのギャルゲーを買っちまったのがいけなかったかにゃー」
「私はドン引きなんだぞ兄貴ー……」
心なしかちょっと自分から離れた義妹に涙しつつ、土御門は『グループ』の他の構成員にメールを回す。
――内容は、後で詳しく……か。
どうせロクでもない内容なのだ。破壊工作、情報操作、……人殺し。
舞夏は知らなくて良い。知る必要もない。
「じゃあ、今日は早めに寮に戻るとするかなー」
「それじゃあ下まで送るぜよ」
立ち上がりかけた土御門を、しかし舞夏は押しとどめた。
「舞夏?」
「兄貴、背中怪我してるだろー。今見てやるから、ちょっと待ってなー」
言って、部屋の救急箱を取りに行く。
「よく……分かったな」
自分でもあまり気にしていなかった怪我を指摘されて、土御門は思わずぽかんとしてしまう。促されてアロハシャツを脱げば、舞夏が後ろに回って土御門の背中をぺたぺた触った。
「ふふふ、私の目はごまかせないからなー……あ、やっぱり切り傷がある!」
手際良く手当てをしてくれる義妹に感心する。さすがメイドさん見習いエリートである。しかし、せっかく手当てしてもらっても、今日また新たな傷が増えるかもしれない。申し訳ない気分である。そんな土御門の内心を知ってか知らずか、舞夏はガーゼを張り付けた傷の上を優しく撫でた。
「あんまり、無理とかするんじゃないぞー」
ぽつり、と呟かれた言葉。思わず振り向いて義妹を抱きしめそうになって、土御門は
そんな自分を無理やり押さえつけた。
「大丈夫ですたい。舞夏は心配性だにゃー」
「兄貴は信用ならないからなー」
「舞夏ひどいにゃー! 舞夏の愛さえあれば俺はいつでも元気百倍ですよ!?」
軽口を叩きながら、土御門は笑う。義妹に少しでも心配させてしまったことを内心反省しつつ、これからはもっと上手く立ち回らなければと考える。
――舞夏のためなら、どんな闇でも浸かってみせる。その中で立ち回って、誰を裏切ろうが守ってみせる。それが俺の行動指針だ。
「それで、今日のお仕事ってェのは?」
アジトのドアを開け放ち、開口一番不機嫌そうに言い放った一方通行(アクセラレータ)に、土御門は肩を竦めてみせた。
「いつもと同じだよ。くだらねえ残飯処理だ」
読んでいた雑誌を机の上に放り、寝転がっていた身体を起こす。土御門はいつもより不敵に笑う。
「テロリストの皆殺し。……な、いつもと同じだろ?」
土御門が好き過ぎて書いてしまった……。ピクシブにもいくつか載せてますが、こっちには一遍だけ。
いずれ禁書だけのサイトを作ろうかと画策中です。(土一とか好みなんだよなあ……。
暗部時代の土御門兄妹。兄妹愛。
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「んん……」
土御門元春は目を覚ました。身体がだるい。背中のあたりが妙に痛かった。昨日の『仕事』の際、怪我を負ったのかもしれない。だが、病院に行くほどのものではないだろう。これくらいなら、自分の貧弱な能力でなんとかなるはずだ。
カーテンの隙間から洩れる朝日がまぶしく、思わず目を細める。
「良い天気ですにゃー」
うんと伸びをしてから起き上がると、土御門は携帯をチェックした。なんの連絡も入ってはおらず、ほっと息をつく。いつもの自分の部屋には、呆れるほどの平和が満ちていた。
適当な朝食を口に入れて、日課のジョギングに精を出す。今日は午後から舞夏が来るから、部屋を片付けなくてはならない。主にアダルトな本やらコスプレ用ミニスカメイドさん服の類などなど……。
考えながら走っていると、自分の寮の方角から聞き覚えのある少年の叫び声と、少女の怒りの声が聞こえて来た。どう考えてもそれはお隣の上条当麻と禁書目録の声で、思わず笑ってしまう。朝から元気な事だ。
――今度は何をやらかしたんだ、上やん……。
「まぶしいぜよ。まったく」
サングラスをしていても、上条当麻を見ていると時にどうしようもなくまぶしく感じるのは、自分が闇に染まりきっているからかもしれない。
******************
「兄貴ー! 夕飯作りに来たぞーっ」
ばーん、と鍵の開いたドアを開けて、愛しい義妹が元気な声で入ってくる。幸せをひしひしと全身で感じながら、土御門は舞夏を迎え入れた。
「兄貴も、少しは家事を覚えたらどうだー?」
スーパーで買いこんできたらしい食材を大量に冷蔵庫に入れながら、舞夏が何とは無しに言う。
「そんなことしたら、舞夏があんまり来なくなっちまうじゃないかにゃーっ!!」
そんな恐ろしい事は想像したくもない、とばかりに全身を震わせる土御門に、舞夏は呆れたように肩を竦めて見せた。
「まったく、やれやれなんだな」
「それに、お兄ちゃんは忙しくて家事を覚えてる暇がないんだぜい」
「寝っ転がってゲームしながら言われても、説得力が無いんだぞー」
じろり、と土御門を睨んでから、舞夏はふっと軽く笑う。
「しょうがない兄貴だなー。私がいなくなったら行き倒れちゃうんじゃないかー?」
「いやあ、しっかりした義妹を持てて、お兄ちゃんは幸せですたい」
冗談めかして笑いながら、土御門は内心自嘲した。たぶん、舞夏がいなくなったら自分は本当に行き倒れるだろう。いや、それ以上だ。
義妹を失ったら、自分は生きる意味を失う。――義妹を失う事になった原因すべてに報復を、そしてその後は自分に死を。
まあ、万が一にも舞夏を危険な目に遭わせるつもりなどないのだが。
「兄貴、おかわりは?」
「お願いするぜい」
茶碗を渡せば、舞夏は笑顔でそれを受け取った。二人で囲む食卓に、今自分は幸せだと思う。腹の内の探り合いなど必要のない会話は心地よく、改めて、土御門はこの何気ない日常を守ると決意する。
「しあわせだなあ」
ぽろり、と聞こえて来た声に驚いた。自分の考えが口から出てしまったのかと思ったが、その声は舞夏のものだった。
「……どうした? 急に」
「いや、やっぱり家族と一緒に食べるご飯は美味しいよなーって。ありがとな、兄貴」
にこにことそんな事を言う義妹に、胸の奥がぎゅっと音を立てた。不意に涙腺が緩みそうになって、それを押さえつけて笑う。
「礼を言うのはこっちの方なんだぜい」
思わず義妹の頭を撫でた土御門に、舞夏は照れ笑いしながらその手を退けた。
「小さい子扱いするなよー」
「いやいや、愛しい女の子扱いなんだぜよ」
「それはそれで問題なんだぞ、兄貴」
この幸せを守るためなら。この少女を守るためなら……。今までに何度だって考えて、揺るぎそうにも無い想いが土御門の胸の内でぐるぐると渦巻いていた。そして、それを顔に出す事は無い。いつものことだ。
その時、耳障りな機械音が自分のポケットから聞こえてきて、思わず舌打ちしそうになった。携帯が鳴っている。番号を確認すれば、案の定それは暗部の人間のものだった。
「なんだにゃー。せっかく舞夏との団らんを楽しんでいるというのにーっ!」
ピリリ、と高い音を鳴らし続ける携帯に文句をつけると舞夏が苦笑する。
「出てあげなよ。急ぎかもしれないぞー?」
「……すまないにゃー」
内心急ぎの電話では無いことを祈りつつ、立ち上がって電話に出る。
『ようやくつながりましたね』
出たのは丁寧な男の声だった。『グループ』の「上」の男だ。通称「電話の男」。『グループ』に仕事の指示が下るときは大抵この男から土御門に連絡があった。
「もしもし? 今忙しいから後にしてほしいにゃー」
『……おや、家族団らん中でしたか。これは失礼しました』
申し訳なさなど微塵も感じていないであろう声で言われて、土御門は肩を竦めた。義妹と一緒だと見抜かれている。それでも、相手は特にためらいなどしない。
『「グループ」に仕事が入りました。今夜9時に集合をかけてください。仕事内容は後で詳しく』
土御門は部屋の掛け時計に目をやると嘆息した。今午後7時。舞夏との時間はあと二時間も無い。隣人のヒーローよろしく、「不幸だ」と叫びたい衝動に駆られる。
「……了解なんだにゃー」
あくまでも日常での口調を保ったまま電話を切れば、土御門は舞夏に笑ってみせた。
「今日これから深夜バイトが入っちまったにゃー」
「兄貴、バイトなんか始めたのかー?」
「最近金欠なんですたい。やっぱりあの攻略対象全員メイドさんのギャルゲーを買っちまったのがいけなかったかにゃー」
「私はドン引きなんだぞ兄貴ー……」
心なしかちょっと自分から離れた義妹に涙しつつ、土御門は『グループ』の他の構成員にメールを回す。
――内容は、後で詳しく……か。
どうせロクでもない内容なのだ。破壊工作、情報操作、……人殺し。
舞夏は知らなくて良い。知る必要もない。
「じゃあ、今日は早めに寮に戻るとするかなー」
「それじゃあ下まで送るぜよ」
立ち上がりかけた土御門を、しかし舞夏は押しとどめた。
「舞夏?」
「兄貴、背中怪我してるだろー。今見てやるから、ちょっと待ってなー」
言って、部屋の救急箱を取りに行く。
「よく……分かったな」
自分でもあまり気にしていなかった怪我を指摘されて、土御門は思わずぽかんとしてしまう。促されてアロハシャツを脱げば、舞夏が後ろに回って土御門の背中をぺたぺた触った。
「ふふふ、私の目はごまかせないからなー……あ、やっぱり切り傷がある!」
手際良く手当てをしてくれる義妹に感心する。さすがメイドさん見習いエリートである。しかし、せっかく手当てしてもらっても、今日また新たな傷が増えるかもしれない。申し訳ない気分である。そんな土御門の内心を知ってか知らずか、舞夏はガーゼを張り付けた傷の上を優しく撫でた。
「あんまり、無理とかするんじゃないぞー」
ぽつり、と呟かれた言葉。思わず振り向いて義妹を抱きしめそうになって、土御門は
そんな自分を無理やり押さえつけた。
「大丈夫ですたい。舞夏は心配性だにゃー」
「兄貴は信用ならないからなー」
「舞夏ひどいにゃー! 舞夏の愛さえあれば俺はいつでも元気百倍ですよ!?」
軽口を叩きながら、土御門は笑う。義妹に少しでも心配させてしまったことを内心反省しつつ、これからはもっと上手く立ち回らなければと考える。
――舞夏のためなら、どんな闇でも浸かってみせる。その中で立ち回って、誰を裏切ろうが守ってみせる。それが俺の行動指針だ。
「それで、今日のお仕事ってェのは?」
アジトのドアを開け放ち、開口一番不機嫌そうに言い放った一方通行(アクセラレータ)に、土御門は肩を竦めてみせた。
「いつもと同じだよ。くだらねえ残飯処理だ」
読んでいた雑誌を机の上に放り、寝転がっていた身体を起こす。土御門はいつもより不敵に笑う。
「テロリストの皆殺し。……な、いつもと同じだろ?」