ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

君を守るためなら(禁書/土御門兄妹)

2014-09-24 02:41:40 | その他版権小説
『とある魔術の禁書目録』の二次小説です。
土御門が好き過ぎて書いてしまった……。ピクシブにもいくつか載せてますが、こっちには一遍だけ。
いずれ禁書だけのサイトを作ろうかと画策中です。(土一とか好みなんだよなあ……。

暗部時代の土御門兄妹。兄妹愛。

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「んん……」
 土御門元春は目を覚ました。身体がだるい。背中のあたりが妙に痛かった。昨日の『仕事』の際、怪我を負ったのかもしれない。だが、病院に行くほどのものではないだろう。これくらいなら、自分の貧弱な能力でなんとかなるはずだ。
カーテンの隙間から洩れる朝日がまぶしく、思わず目を細める。
「良い天気ですにゃー」
 うんと伸びをしてから起き上がると、土御門は携帯をチェックした。なんの連絡も入ってはおらず、ほっと息をつく。いつもの自分の部屋には、呆れるほどの平和が満ちていた。

 適当な朝食を口に入れて、日課のジョギングに精を出す。今日は午後から舞夏が来るから、部屋を片付けなくてはならない。主にアダルトな本やらコスプレ用ミニスカメイドさん服の類などなど……。
 考えながら走っていると、自分の寮の方角から聞き覚えのある少年の叫び声と、少女の怒りの声が聞こえて来た。どう考えてもそれはお隣の上条当麻と禁書目録の声で、思わず笑ってしまう。朝から元気な事だ。
――今度は何をやらかしたんだ、上やん……。
「まぶしいぜよ。まったく」
 サングラスをしていても、上条当麻を見ていると時にどうしようもなくまぶしく感じるのは、自分が闇に染まりきっているからかもしれない。

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「兄貴ー! 夕飯作りに来たぞーっ」
 ばーん、と鍵の開いたドアを開けて、愛しい義妹が元気な声で入ってくる。幸せをひしひしと全身で感じながら、土御門は舞夏を迎え入れた。

「兄貴も、少しは家事を覚えたらどうだー?」
 スーパーで買いこんできたらしい食材を大量に冷蔵庫に入れながら、舞夏が何とは無しに言う。
「そんなことしたら、舞夏があんまり来なくなっちまうじゃないかにゃーっ!!」
 そんな恐ろしい事は想像したくもない、とばかりに全身を震わせる土御門に、舞夏は呆れたように肩を竦めて見せた。
「まったく、やれやれなんだな」
「それに、お兄ちゃんは忙しくて家事を覚えてる暇がないんだぜい」
「寝っ転がってゲームしながら言われても、説得力が無いんだぞー」
 じろり、と土御門を睨んでから、舞夏はふっと軽く笑う。
「しょうがない兄貴だなー。私がいなくなったら行き倒れちゃうんじゃないかー?」
「いやあ、しっかりした義妹を持てて、お兄ちゃんは幸せですたい」
 冗談めかして笑いながら、土御門は内心自嘲した。たぶん、舞夏がいなくなったら自分は本当に行き倒れるだろう。いや、それ以上だ。
義妹を失ったら、自分は生きる意味を失う。――義妹を失う事になった原因すべてに報復を、そしてその後は自分に死を。
まあ、万が一にも舞夏を危険な目に遭わせるつもりなどないのだが。

「兄貴、おかわりは?」
「お願いするぜい」
 茶碗を渡せば、舞夏は笑顔でそれを受け取った。二人で囲む食卓に、今自分は幸せだと思う。腹の内の探り合いなど必要のない会話は心地よく、改めて、土御門はこの何気ない日常を守ると決意する。
「しあわせだなあ」
 ぽろり、と聞こえて来た声に驚いた。自分の考えが口から出てしまったのかと思ったが、その声は舞夏のものだった。
「……どうした? 急に」
「いや、やっぱり家族と一緒に食べるご飯は美味しいよなーって。ありがとな、兄貴」
 にこにことそんな事を言う義妹に、胸の奥がぎゅっと音を立てた。不意に涙腺が緩みそうになって、それを押さえつけて笑う。
「礼を言うのはこっちの方なんだぜい」
 思わず義妹の頭を撫でた土御門に、舞夏は照れ笑いしながらその手を退けた。
「小さい子扱いするなよー」
「いやいや、愛しい女の子扱いなんだぜよ」
「それはそれで問題なんだぞ、兄貴」
 この幸せを守るためなら。この少女を守るためなら……。今までに何度だって考えて、揺るぎそうにも無い想いが土御門の胸の内でぐるぐると渦巻いていた。そして、それを顔に出す事は無い。いつものことだ。

 その時、耳障りな機械音が自分のポケットから聞こえてきて、思わず舌打ちしそうになった。携帯が鳴っている。番号を確認すれば、案の定それは暗部の人間のものだった。
「なんだにゃー。せっかく舞夏との団らんを楽しんでいるというのにーっ!」
 ピリリ、と高い音を鳴らし続ける携帯に文句をつけると舞夏が苦笑する。
「出てあげなよ。急ぎかもしれないぞー?」
「……すまないにゃー」
 内心急ぎの電話では無いことを祈りつつ、立ち上がって電話に出る。
『ようやくつながりましたね』
 出たのは丁寧な男の声だった。『グループ』の「上」の男だ。通称「電話の男」。『グループ』に仕事の指示が下るときは大抵この男から土御門に連絡があった。
「もしもし? 今忙しいから後にしてほしいにゃー」
『……おや、家族団らん中でしたか。これは失礼しました』
 申し訳なさなど微塵も感じていないであろう声で言われて、土御門は肩を竦めた。義妹と一緒だと見抜かれている。それでも、相手は特にためらいなどしない。
『「グループ」に仕事が入りました。今夜9時に集合をかけてください。仕事内容は後で詳しく』
 土御門は部屋の掛け時計に目をやると嘆息した。今午後7時。舞夏との時間はあと二時間も無い。隣人のヒーローよろしく、「不幸だ」と叫びたい衝動に駆られる。

「……了解なんだにゃー」
 あくまでも日常での口調を保ったまま電話を切れば、土御門は舞夏に笑ってみせた。
「今日これから深夜バイトが入っちまったにゃー」
「兄貴、バイトなんか始めたのかー?」
「最近金欠なんですたい。やっぱりあの攻略対象全員メイドさんのギャルゲーを買っちまったのがいけなかったかにゃー」
「私はドン引きなんだぞ兄貴ー……」
 心なしかちょっと自分から離れた義妹に涙しつつ、土御門は『グループ』の他の構成員にメールを回す。
――内容は、後で詳しく……か。
どうせロクでもない内容なのだ。破壊工作、情報操作、……人殺し。
舞夏は知らなくて良い。知る必要もない。
「じゃあ、今日は早めに寮に戻るとするかなー」
「それじゃあ下まで送るぜよ」
 立ち上がりかけた土御門を、しかし舞夏は押しとどめた。
「舞夏?」
「兄貴、背中怪我してるだろー。今見てやるから、ちょっと待ってなー」
 言って、部屋の救急箱を取りに行く。
「よく……分かったな」
 自分でもあまり気にしていなかった怪我を指摘されて、土御門は思わずぽかんとしてしまう。促されてアロハシャツを脱げば、舞夏が後ろに回って土御門の背中をぺたぺた触った。
「ふふふ、私の目はごまかせないからなー……あ、やっぱり切り傷がある!」
 手際良く手当てをしてくれる義妹に感心する。さすがメイドさん見習いエリートである。しかし、せっかく手当てしてもらっても、今日また新たな傷が増えるかもしれない。申し訳ない気分である。そんな土御門の内心を知ってか知らずか、舞夏はガーゼを張り付けた傷の上を優しく撫でた。
「あんまり、無理とかするんじゃないぞー」
 ぽつり、と呟かれた言葉。思わず振り向いて義妹を抱きしめそうになって、土御門は
 そんな自分を無理やり押さえつけた。
「大丈夫ですたい。舞夏は心配性だにゃー」
「兄貴は信用ならないからなー」
「舞夏ひどいにゃー! 舞夏の愛さえあれば俺はいつでも元気百倍ですよ!?」
 軽口を叩きながら、土御門は笑う。義妹に少しでも心配させてしまったことを内心反省しつつ、これからはもっと上手く立ち回らなければと考える。
――舞夏のためなら、どんな闇でも浸かってみせる。その中で立ち回って、誰を裏切ろうが守ってみせる。それが俺の行動指針だ。


「それで、今日のお仕事ってェのは?」
 アジトのドアを開け放ち、開口一番不機嫌そうに言い放った一方通行(アクセラレータ)に、土御門は肩を竦めてみせた。
「いつもと同じだよ。くだらねえ残飯処理だ」
 読んでいた雑誌を机の上に放り、寝転がっていた身体を起こす。土御門はいつもより不敵に笑う。
「テロリストの皆殺し。……な、いつもと同じだろ?」


アトラスでひと騒ぎ【8】(子世代)

2014-09-20 13:36:12 | 子世代妄想
前回の続きです(´▽`)

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オレたち兄妹は、母さんから一つ言い含められている事がある。
いわく、『復活(リザレクション)』の呪文を使える魔道士に出会ったら、大金を払ってでもその呪文を教えて貰え。
母さんが昔旅をした時、『復活(リザレクション)』の呪文を学んでおけば、と後悔した事があるんだそうな。その話をする時、いつも明るくうるさい母さんが珍しく哀しい目をする。

ルシウスに『復活(リザレクション)』の教えを乞えば、彼は快く承諾してくれた。
「お金なんていりませんよ。......あ、でもサイラーグ復興の為に少しばかり援助して頂けると嬉しいですけど」
「それくらいならお安いご用だ」
ぽん、と胸を叩いて請け合えば、ルシウスはにっこり頷いた。
「じゃあ、この事件が解決したら......」
「おう!」

それから何軒か被害に遭った店を当たったが、大抵は最初に行った店と同じような感じだった。酷い所では、店主自体が殺されていて、店が閉まってしまっている。
仕方がないので、その日はとりあえず調査を切り上げた。

「新しい発見は特に無さそうだなぁ」
はあ、と大きなため息を付きながらシチューの皿にスプーンをつっこむ。
レオナとルシウスも疲れた様子で食堂のテーブルを囲む。昨日と同じメシ屋は、昨日と同じように混んでいた。

本日三杯目のシチューに舌鼓を打っていると、突然後ろから誰かに肩を叩かれた。
「兄ちゃん、また会ったな!」
「あんたは昨日の......」
背に負ったバスタード・ソード、人懐こい笑顔、中年だががっしりとした体つき。
昨日、オレに散々母さんの都市伝説を語って聞かせたおっさんである。
「今日は一人増えてるな」
チラッとルシウスに視線をやると、オレたちの後ろのカウンター席に腰掛ける。
「ああ、一応今の仕事仲間だ」
「仕事?」
「......『リナ=インバース討伐』だ」
苦々しげに呟く。口にするのも嫌な仕事名だ。

「ああ、あの偽者の話か?」
おっさんは酒を頼みながら、事も無げに返事を返した。
──......!
「偽者だって分かるのか!?」
思わず大声を上げてしまい、周りの客から睨まれる。オレだけでなく、レオナやルシウスも腰を浮かせていた。
「分かるさ、オレは本人と会った事があるからな。お前さんには昨日話したろうが......さては聞き流してやがったな?」
にやり、と笑うおっさんに、オレたちは呆気に取られた。
「あの『嬢ちゃん』が意味もなく強盗なんかすると思えねぇし、何より『兄貴』の話が出て来ねえし」
「『兄貴』......?」
レオナが目を見開く。
「まあ、兄貴の方はあんまり有名じゃねえからな。リナ=インバースと旅をした傭兵っつーか剣士だな。腕は超一流だったぜ。ガウリイ=ガブリエフって、聞いた事ねえか?」
「......!」
絶句するオレたちの横で、ルシウスが目を輝かせたのだった。


続く
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次回に続きます!
おっさんの正体、もうバレバレですよねー( ̄∇ ̄)


アトラスでひと騒ぎ【7】(子世代)

2014-09-14 20:35:06 | 子世代妄想
前回の続きですー♪

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マジックショップは酷い有り様になっていた。無惨に壊れ散らばった商品、憔悴しきった店主。
「金だけでなく、金目の商品も根こそぎ持ってかれちまった......オレぁこれからどう生活してけば良いんだ」
青い顔をした店主のおっさんを気の毒に思いながらも、オレたちは店の中を調べ始めた。

普通マジックショップには安い物から、とんでもなく高価な物まで置いてある。それを高価な物ばかり素早く選別して持って行くというのは、魔道に詳しい者でなければ出来ない芸当だ。ただのならず者には出来ない。それに......。
「雇ってた用心棒もやられちまった......死んでなかったのが救いだが、ありゃ重傷だ」
そうため息をつく店主も、マジックショップを営むくらいだから魔道には長けている筈なのだ。だから、普通はマジックショップに強盗を働こうとする輩は少ない。すぐに叩き出されるのがオチだ。
──それが、こんな風になるなんて......。
本当に、店には安物の防具や武器しか残っていなかった。高価なドラゴン皮のローブや、宝珠のついた剣など、普段店で良く目にする物がほとんど消えている。

「あの、強盗に遭った時の事を詳しく聞かせて頂けませんか?」
遠慮がちに尋ねたルシウスに、店主はゆるゆると頷いた。
「ああ。今朝方、店を開けた途端、明らかに賊らしい男たちが数人入って来てよ......こちらも警戒してたんだが、急に暴れ出して、慌てて用心棒のジャックを呼んだんだが、後から入って来た女魔道士にやられちまって......それからはもうオレも『影縛り(シャドウ・スナップ)』で動けなくされてる間に、金も何も全部持ってかれたよ」
「その、女魔道士と言うのは一体......?」
「やけに派手な格好した若い女だったな。仲間からは『リナ』と呼ばれてたよ」
「リナ......か」
──ありえない。そう言いたくなるのをぐっと飲み込んだ。
「その女自身の外見は?髪の色とか、目の色とか」
「そうだな......栗色の長い髪、赤みがかった茶色い目だ......それに」
「それに......?」
ごくり、と唾を飲み込む。
「凄い胸がでかかったな……スタイル抜群の女だった」

顔を見合わせたオレとレオナは、小さく息を吐いた。
「偽物だな......」
「そうね......」
「え!?なんでですっ!?」
確信するオレたちに、ルシウスが驚いた顔をする。そんなルシウスに、オレは顔を近づけた。
「良いかルシウス、良く聞けよ......リナ=インバースはチビな上にペチャパイだ!!だからそいつは偽物だ!」
何の迷いもなく断言する。ルシウスと、店主も一緒にぽかんとした顔をした。

「兄さん......聞かれてたら殺されるわよ」
レオナにジト目で言われて、オレは腰に手を当てて胸を張った。
「今はいないから大丈夫だ!......たぶん」
言いつつ、冷や汗が止まらないが、それは無視する事にする。
「と、とにかくその女魔道士がリナ=インバースの偽物だとはっきりした。そいつの足取りを追うぞ!」
「どうやって?」
「とりあえず、他の店にも行ってみようぜ。どうだ、ルシウス?」
「......そ、そうですね、分かりました!」

一つ頷いて、ルシウスは店主に向き直った。
「調査にご協力ありがとうございました。......その腕の怪我、治療しても?」
「えっ」
店主が驚いた顔をする。同時にオレも驚いた。
「隠していたみたいですが、ずっと腕を気にしてましたし、右と左で腕の太さが微妙に違いましたし」
「良くわかったな......」
店主が右腕のシャツを捲り上げると、一部包帯で不器用にぐるぐる巻きにされていた。ルシウスが包帯を解くと、酷い切り傷がある。
「女が行った後、残った賊にやられてな......不甲斐ねぇ」
「そうなんですか......」
オレとレオナが見守る中、ルシウスが呪文を唱え始める。てっきり『治癒(リカバリィ)』の呪文かと思ったが、それよりもより強い術だと気がついた。
「これは『復活(リザレクション)』......!」
周囲に存在する生命から少しずつ気を分けて貰い、それをエネルギー源に怪我を治療する術。瀕死の怪我を負った時など、リカバリィではどうにもならない時にも有用な呪文。白魔法でも上級の呪文だ。オレもレオナもまだ使うことが出来ない。
「これでも神官見習いですからね」
微笑み、長い詠唱呪文を呟きながら、徐々に店主の腕の傷を塞いでいく。
「......ありがとうよ」
「僕たちが、必ず犯人を捕まえてみせます......!」
その少年の決意に、オレもレオナも気合いを入れ直したのだった。


続く
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次回につづきます!

アトラスでひと騒ぎ【6】(子世代)

2014-09-14 12:43:52 | 子世代妄想
お待たせしてすみません(>_<)子世代小説続きです!

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事件の解決は、何事もまず情報収集から始まる。これはオレの持論だ。
仕事として「リナ=インバース(仮)」の討伐の任を請け負ったからには、なんとしても捕まえねばなるまい。
ちなみに、今回の仕事はなかなか好条件で、良い稼ぎになりそうだった。街の金持ちが報酬を出してくれるらしい。期待大だ。

「ところでルシウス、お前リナ=インバースをよく知ってるのか?」
被害を受けたというマジック・ショップに向かう道すがら、ルシウスに尋ねると彼は表情を明るくした。
「直接会った事はありません。でも、母からよく彼女の話を寝物語に聞かせてもらったんです」
「お母さんから......?」
ずい、と後ろからレオナが顔を出してくる。
「え、ええ。昔、母はリナ=インバースと共に旅をした事があると言ってました。確かに破天荒な人だったらしいですが、決して悪人ではなかったと......。母の昔話は本当に面白くて、わくわくしながら聞いていたのを覚えています」
「へええ」
興味津々で相槌を打つレオナに、ルシウスは顔を赤くした。
──確かに、この少年の母親くらいの年齢なら、母さんと一緒に旅した事があってもおかしくないかもしれない。まだ本当かどうかは分からないが......。

「あ、あの。お二人はどうなんですか?」
「まあ、オレたちも似たようなもんだ。だから、ルシウスの意見に同意するよ」
敢えて言葉を濁した。とりあえず、オレたちがリナ=インバースの子供だという事は、黙っていた方が良さそうである。
「ありがとうございます......!」
嬉しそうにはにかむルシウスの笑顔には幼さが垣間見えた。こいつは、見た目よりもっと若いのかもしれない。神官見習いで、出身はサイラーグと聞いた。アトラスにはどんな理由で来ているのだろうか......。

しばらく考えていると、ルシウスがオレの肩をちょんちょんとつついた。
「ん?」
「あの......」
後ろのレオナに聞こえないような、囁くような声で話し掛けてくる。
真剣な表情に、思わず姿勢を正した。
「ええっと、その、お二人は......どういった関係なんですか?」
「はぁ?」
拍子抜けして、ずっこけそうになる。
「お二人で旅してるんですから、やっぱり恋人......?」
「い、いやいや、オレたち兄妹だから!兄妹!」
慌てて否定すると、ルシウスは目を見開いた。
「御兄妹ですかっ!......あんまり似てないんですね」
──ほっとけ。
「でも、なんでそんな事を?」
「い、いえ、少し気になって......すみません」
突っ込むと赤くなって俯くルシウスに、オレはにやにやしてしまう。

──分かりやすい奴め。

ちらりとレオナを見れば、妹は街を眺めて歩きながら、鼻歌を歌っていた。いつもながら呑気な事だ。
「......あいつはたぶん一筋縄じゃあ行かないと思うぜ」
肩を竦めて言えば、ルシウスはびっくりしたように顔を上げた。
「え......っ」
──気付いてないとでも思っていたのだろうか。バレバレだっつうの。
「まあ、頑張ってみてくれ。簡単には行かないと思うが」
レオナの外見に釣られて、後に撃沈した数多くの男たちを思い出しながら言えば、少年は目を輝かせた。
「ラウディさん......!」
「ん?」
ガシィッと両手を取られる。
「お義兄様とお呼びしても?」
「ヤメテクダサイ」


続く
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次回に続きます~!


君が足りない(ガウリナ)

2014-09-03 00:37:26 | スレイヤーズ二次創作
子世代小説が途中ですが、ここでガウリナSSです。
いつになく乙女なリナちん。

慢性的ガウリナ不足(´・ω・`)

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人気の無い森の道を、いつものように二人で歩く。
ぽかぽか陽気で絶好の散歩日和。ついでに、道を点々と照らす木漏れ日が美しい。

最近、ガウリイとの関係が少し変わった。
今までもガウリイはあたしにとって大切な相棒だったのだけれど、それに「恋人」という要素が加わったのだ。

隣に居るのは当たり前だったし、お互いなんでも知っていると思っていた。
あたしの中で、ガウリイという存在はもう100パーセント満ち足りていた。......そのつもりだった。

「......足りない」
「ん?」
ぽそり、と呟いた独り言に、隣に居るガウリイが返事を返した。
「ん、なんでもない」
笑って言えば、ガウリイも微笑み返した。
なんでもないやり取りに、じり、と胸の奥が焦げ付く音がする。

隣に居るのに、もっと近づきたくなる。隣にいない時間がやけに長く感じる。手を繋いでいてももっと触れて欲しいと思う。けど、そんな事言えない。

──日に日に、あたしの中でガウリイが足りなくなって来ている気がする。

四六時中一緒にいるんだから、そんなはずはないのだ。
あたしは欲張りなのだろうか。
よく分からなくて、最近もやもやしっぱなしだ。

そんなあたしに気付いていないだろうガウリイは、今日も機嫌良く隣を歩いている。それがなんだか腹立たしくて、あたしはガウリイの腕をちょっとつねった。
「いでっ、何すんだよリナ」
「べっつにぃ~」
ぷい、とそっぽを向いてみせれば、ほっぺたを指でつつかれた。
「腹でも減ってるのか?」
「......」
「リナぁ~」
──別にお腹が減ってるわけではない。けど、なんて言えば良いか分からない。

ガウリイが、足りないのだ。

そのまま黙っていると、彼はあたしの頭をくしゃりと撫でた。
「リナ、黙ってちゃオレには分からんぞ。頭の方にはあんまり自信無いからな」
「自分で認めちゃうのね......」
ちょっと呆れてから、あたしは笑った。
「別に、ちょっとちょっかいかけたくなっただけよ」
我ながら子供みたいである。
いたたまれない気持ちになっていると、とーとつにあたしはガウリイに持ち上げられた。
「え?」
ぐるっと一回転してあたしを降ろす。次いで、あたしをぎゅっと抱きしめ......ってちょっと待て。
「ちょっとガウリイ!き、急に何しちゃってんのよ!?」
慌てて押しのけると、ガウリイは笑ってあたしの頭をぐりぐりした。
「いや、オレは急にリナを構い倒したくなっただけだ」
──なんだそれは!
「なんだか寂しそうな顔してたからな、リナ。オレはお前さんにそんな顔をさせるのは本意ではない」
ニコニコしながらそう言われて、あたしは言葉に詰まった。顔もたぶんちょっと赤い。
──だけど。
頭を乱暴になでたり、あたしを持ち上げて振り回したり。まるで小さい子を可愛がるみたいな構い方である。
そーゆーのは望んでないやいっ!
「だからって子供扱いしないでよねっ!」
抗議の声を上げれば、彼はしばらくきょとんとしてから、ニヤリと笑った。
「じゃ、思いっきり恋人扱いして良いか?」
「え......?」

その瞬間、空気ががらりと変わった。
ガウリイのあたしを見る視線も、あたしの頭を撫でる手つきも。
優しいのに、それだけじゃない何かがあって、急に怖くなる。
頭に載せていた彼の手が滑り落ちて来て、髪を弄ばれる。それだけで、もう苦しい。

ガウリイの指が、ゆっくりあたしの唇をなぞった。
「......っ!」
「リナ、キスして良いか?」
──なんで、そういう事を、口に出すかなこひつはっ!
あたしの反応に、ガウリイはくすくす笑う。
「面白いなー、リナは」
笑い方までさっきと違う。
心臓がばくばく音を立て始めて、頭がくらくらして来た。なんだか溺れてるみたい。

ふいにガウリイの顔が近づいてきて、あたしは慌てて目を閉じた。
──キス、される?
まだ数える程しかしていないキスを待つ。
だけど、なかなか来ない。
じれて薄目を開けたら、至近距離に碧い瞳があって、思わず飛び退きそうになった。
「ひやぁっ」
「あ、こらっ」
ぐい、と肩を掴まれて、そのままキスされる。
触れるだけのキスなのに、なんだか、もう......っ

さっきまで、ガウリイが足りなくてたまらなかったのに、今は。

ガウリイで溢れて、溺れそう。


「おい、リナ大丈夫か?」
本格的にくらくら来てしまったあたしに、ガウリイが慌てた顔をした。
「だ、大丈夫。ちょっとまだこーゆーの慣れないから......」
はうっ、と息を吐いて呼吸を整える。
触れるだけのキスで倒れそうになるなんて、我ながら情けないったら。
「あー、悪かったな。調子乗っちまった」
面目なさそうに頭をかくガウリイは、もういつもの彼で。ほっとした。......と、同時にちょっと残念な気にもなる。
また、いつもの空気に戻って行く。

「ちょっと休んでから行くか?」
「いや、良いわよ。歩ける」
「そうかあ?」
心配げなガウリイは、もう保護者な顔をしている。
それが気に入らなくて。
「......じゃあ、手、つないでよ。今だけ」
差し出した手を、彼は迷わず取って、指を絡めた。──恋人つなぎ。
それだけで気をよくして、あたしは自分でも足取りが軽くなるのを感じていた。
......我ながら単純だ。

けど、これがあたしの恋心って奴なのかもしれない。
──なんちゃって。


終わり

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甘々を目指してみました!恥ずかしい!!(笑)