前回の続きです!
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魔族は、その場で黒い灰と化し、散り去った。
「....勝った?」
「そのようですね」
「!!」
いつの間にか背後に立っていたゼロスは、何故か満足げな顔をしていた。
「...おいコノヤロウ!」
オレはそのにやけた神官に掴みかかった。
「何が陰ながら応援しますだよっ!何もせずにどっか行きやがって」
「心外ですね。ちゃんと皆さんに有益な情報を得てきたんですよ?」
「?」
思わず手を離した。──どこから?
「...聞かせてもらいましょうか、その情報」
いつの間にか近くに集まっていた皆の中で、ルーナが声をあげた。ゼロスを疑わしげに睨んでいる。気持ちは解らんでもない。
「はい、この建物なんですけど、建物自体が一つの魔方陣みたいになってますね」
「え?」
「なので、この建物全部破壊しないと、デーモンは後から後から量産状態です」
「んなにぃぃぃ!?」
オレは頭を抱えた。
「でも、魔族が倒れたお陰で、厄介な結界がなくなってます。ガードのデーモンも傀儡の術が解けていなくなってますし、是非ぶっ壊しちゃって下さい」
にこにこととんでもない事を言うゼロスである。
「その情報、信じて良いんでしょうね?」
「僕が皆さんを騙す必要性がありませんよ。この仕事頼んだのも僕ですし...」
ゼロスは肩を竦めてみせた。
「しかし、建物全てを破壊って、並みの呪文じゃ無理ですよ...」
フィルが困ったように頭を掻く。
「並みの呪文じゃなければ良いのよね?」
ぽつり、と言ったレオナに、皆の視線が集まった。
結局町の若者たちはどこを捜しても見付からず、人質になっていた老人や働き手の男たちを元の町に避難させてから、再び森に戻った。
「良いのよね?」
「...ああ、いけ」
町の人々には申し訳ないが、背に腹は変えられない。
オレの言葉に、レオナは意識を集中させた。
「──黄昏よりも昏きもの
血の流れより紅きもの
時の流れに埋もれし
偉大な汝の名において」
「この呪文は...!」
ルーナが驚愕の声をあげ、フィルが目を見開いた。
ゼロスが、唇の端を持ち上げる。
「──我ここに、闇に誓わん
我等が前に立ち塞がりし
全ての愚かなるものに
我と汝が力もて
等しく滅びを与えんことを──」
しん、と針積めた空気の中、レオナの声は鬱蒼とした森に響き渡った。
『竜破斬(ドラグ・スレイブ)!』
赤い光が悪の居城に焦点を結び、そして──全てを破壊した。
激しい力に土埃が舞う。木々が揺れ、そして折れた。
──ああ、町の人たち、ごめんなさい。たぶん、しばらく、ペンペン草も生えません。
続く
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次回に続きますー(*´∀`)