ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

困惑のサイラーグ【17】(ゼロシル)

2013-10-29 18:16:32 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
注意!こちらはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。妄想とねつ造に溢れていますので、苦手な方はお戻りください。

めちゃくちゃ更新遅くなりました<(_ _)>すみませんんん......!
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「僕と不死の契約をしませんか?」

まるで市場でリンゴを買いませんかとでも言うように、彼はさらりとそれを口にした。
「は......?」
「不死の契約ですよ。そしたら、この街にもう手は出しません。どうです?」
──不死の契約。
契約の石を媒介として魔族と命の契約をすることで、限りなく不死に近付く事が出来る方法。
不老不死を求めた魔道士と力ある人間を見いだした魔族との、禍々しい契約。

──なぜその契約を私と? 

彼の表情からは何も窺いしれない。
「......そんな契約、あなたには何の得も無いでしょう」
そもそも私と取り引きする必要などこの男には無いのだ。私を今ここで殺してしまえば良いのだから。
魔族の力は人間には圧倒的過ぎる。
注意深くそう答えると、彼はくすりと笑った。

「......僕、結構あなたの事気に入ってるんですよ」

──ふざけているんだろうか。
でも、何のために?
「それじゃ、明日の夜までに考えておいて下さいね!」
彼はそう言って手を振ると、瞬時にその場から消えた。
「あっ......!」

残された静寂に、私はただ立ち尽くしたのだった。


翌朝。
私はフラグーンの鉢植えを持ってサリマンさんの家を訪ねた。昨夜起きた事を誰にも話さない訳にはいかなかった。

私が彼との「契約」の事以外を全て話すと、サリマンさんはがっくりと椅子に座り込んだ。
「あの男が......そうじゃったか。しかし、シルフィール殿。この事は他の皆には今は黙っておいてくれまいか」
「勿論ですわ。きっとパニックになります」
皆がショックを受けて打ちのめされる様子が目に浮かぶ。
どうしようもなく哀しい気持ちになるのを、なんとか抑え込む。私にはまだ考えるべき事がある。

「せっかくエルフ族の村にまで赴いてもらったのになあ......」
申し訳なさそうに言うサリマンさんに、私も頭を下げた。
「私が彼を止められていたら...」
「いや、わしら全員が騙されていた上に、相手は魔族じゃ。シルフィール殿が生きているだけ良かった」
「そう、ですわね...」
ため息が口から漏れる。そして、はっとした。

エルフ族。そう、私はエルフの占い師から警告を受けたのだ。

──近いうちにあなたは魔に魅入られる。魔はあなたの心の隙を狙い、揺さぶるだろう......立ち向かいなさい、人間の娘よ。

立ち向かいなさい。彼女はそう言った。私は今まさしく魔族、ゼロスに揺さぶられている。
──でも。
私が彼と契約しなければ、再びサイラーグは壊滅するかもしれない。街の人々を巻き添えにして。
......そんな事は耐えられない。
彼は、そんな私の負の感情を喰らうためにあんな取り引きを提案したのかもしれない。

「どう立ち向かえば良いのかしら......」
思わずつぶやいた私に、サリマンさんは気遣わしげな視線をくれたのだった。


続く
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次回に続く!!
また更新遅くなりそうです(>_<)


はろいん!(オールキャラ/学園パロ)

2013-10-27 17:13:09 | スレイヤーズ二次創作
素敵企画『スレイヤーズ大学園祭』にまたしても便乗!以前とは違った設定で行きます(*´∀`)うふ
オールキャラギャグ、のつもり。
四人組メイン、ガウリナゼルアメ風味です。

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「今日って『はろいん』とか言うお祭りなんだろ?」
名前さえ間違えてる脳みそヨーグルトの発案で、放課後教室で即席パーティーが始まった。

「コンビニでお菓子買って来ました。チョイスは適当だけど」
そう言ってアメリアがコンビニの袋を机の上にどさりと置いた。
隣ではゼルガディスがペットボトルのジュースを抱えている。
「こんなに食べきれるかしら」
「余ったら先生とか他に残ってる生徒にでもあげたらどうだ?」
ガウリイの提案に頷くと、準備完了だ。

「かんぱーい!」

ポテチをかじりながら、いつもの四人でただ喋るだけ。それでもなんだかんだ楽しいから不思議だ。
教室の窓からオレンジ色の夕日が差し込んでくる。
「トリックオアトリートってどういう意味だっけ?」
「お菓子くれなきゃいたずらするぞ!だな」
「ここお菓子いっぱいだから、今言ってもあんまし意味ないわね......」
あたしが呟くと、向かいに座っていたアメリアがにまり、と笑った。
──うん?

「リナ、お菓子くれなくてもいたずらするぞっ」
言って、アメリアがあたしに遅いかかった。
「ちょっ、やめ、ぎゃああ」
「秘技、正義のくすぐり攻撃!」
──全然かっこよくないっ
アメリアの指がこしょこしょとわき腹の辺りをくすぐって、あたしはその攻撃に為すすべもなかった。
「あひゃひゃひゃっあああ」
「ふっふっふっ、日頃の恨み!」
「あああんた達も見てないで助けなさいよーっ」
あたしの叫びに男二人は顔を見合わせた。
「リナよ、それも乗り越えるべき一つの試練だ」
「アメリアがんばれー」
......こひつら。

がらり。
その時教室のドアが音を立てて開いた。
「おやおや、何やら楽しそうな事をやってますね皆さん」
「ゼロス!......先生」
思わず呼び捨てしそうになって慌てて『先生』と付け足す。
「......ちっ」
ゼルガディスが露骨に嫌そうな顔をした。
こらこら、分かりやすすぎるぞゼルガディス君。

ちゃっかり空いた席に座ってお菓子を食べるゼロス先生。通称謎の世界史教師。
──ああ、それはあたしが食べようとしてたチョコレート!......許せん。
「ゼロス先生!トリックオアトリートっ」
「え」
「ここにあるお菓子は駄目よ」
ふふん、どうだ。とばかりに不敵に笑ってやると、ゼロス先生はしばし考えてから、笑った。
「どうぞ。いたずらお願いします」
「えっ……」
あっさり言われてちょっと詰まる。
どうしよう。
「しないんですか?」
「よし、やる」
あたしは一つ頷いて、先生のおかっぱ頭に小さい二つ結びを作った。
「おお、なんか可愛いですゼロス先生!」
「くだらん......」
「似合うんじゃないか?」
──本気かガウリイ。あ、なんか興味なさそうな顔してる。

「なーんか盛り上がらないわねえ」
呟いた瞬間、言い知れない悪寒が走った。思わず隣のガウリイのシャツの裾を握りしめる。
「リナ?」
──こ、この感覚は......!

「おーっほっほっほっほっほ......げほっ」
ひたすら逃げ出したくなるこの高笑い。
「あれ、この笑い声どこかで......」
訝しげな声を上げるアメリアを無視して、あたしは慌てて机の下に隠れた。
「パーティーと聞いて来てやったわよ!リナ=インバースっ」
変な仮面を付けて現れたのは、他校の生徒ナーガ。なんで入れたんだ、そしてどこで聞いたんだっ!
「ひいいっあたしは関係ないっ」
「知り合いか......」
類は友を呼ぶ、とでも言いたげな目で見て来るゼルからあたしは目を逸らした。

「リナの知り合いか?」
「そうよ、そこの男子!あたしこそリナの永遠のライバル!隣の席は渡さないわっ」
びしいっとガウリイに指を突き付けて笑うナーガ。あたしは黙って頭を抱えた。
「......これ、食うか?」
ポッキーを差し出すガウリイ。おい。
「......ふっ、なかなか違いの分かる男じゃない」
そしてそれを思いっきり食べるナーガ。おい。
「......なんっだそりゃあああっ」
「あ、リナ」
思わず机の下から這い出したあたしは、わなわな震えていた。
「あんたらなんでそれで分かち合ってんのよっ!そしてゼルとアメリアは無視して二人で談笑してんじゃないわよっ!......って、なんでゼロスはもう一人連れてきてんのよっ」
「いやあ、なんか出番が欲しかったみたいなので」
「ガウリイ様っ!トリックオアトリートですわっ」
ゼロスの隣にはシルフィールが沢山のお菓子を持って立って、皆にお菓子を配っていた。
──なんか間違ってると思ふ。

「おーっほっほっほ!リナ、ハロウィン仮装対決よっ」
「勘弁してよ......」

──もう『盛り上がらない』なんて絶対言わない。
あたしはそう固く誓ったのだった。


終わり
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凄く無理やりな展開になってしまいましたσ(^_^;


君の傘(ガウリナ/学園パロディ)

2013-10-27 01:59:29 | スレイヤーズ二次創作
Twitterの素敵過ぎる企画、「スレイヤーズ大学園祭」に参加したくて書いちゃいました(*´∀`)学園モノのガウリナ!ひゃっほう!
(*ナチュラルにゼルアメ設定です)

お題はシチュエーション『06.相合い傘』です♪
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「うわっちゃー......」
放課後、外に出たあたしは思わず呻いていた。
雨である。しかもなかなかのザーザー降り。秋になって、温かかった雨の温度も急に冷たくなった。......なのに。
あたしは傘を持っていなかった。
「さいあく」
ため息をついて空を見上げる。朝まで綺麗に晴れていたのに、空は今や雨雲で薄暗い。
──いつもなら折り畳み傘があるはずなのに。
今日は運悪く家に置いてきてしまった。

頼りの友人アメリアは今日に限って先に帰ってしまったし、便利アイテムこと幼なじみのゼルガディス君は
そのアメリアと一緒だし。
くそう......爆発すれば良いのに。

──仕方ない。走ればいいや。
濡れて帰ろうと覚悟を決めたところで、誰かに肩を叩かれた。
「なあ」
振り返れば、見慣れない顔。
「傘、無いんだろ?」
そう言って折り畳み傘を差し出したのは、知らない男子生徒。背が高くて、金髪碧眼。男の癖に長い髪が、整った顔に妙に似合っていた。

「え?あ、はあ」
間の抜けた返事を返すあたしに、彼は朗らかに微笑んだ。
「これ使えよ」
そう言ってあたしに傘を押し付け走り出そうとする彼に思わず声をかける。
「あ、ちょっと! あなたは傘どうすんのよっ」
「え? ああ、オレん家近いし、オレ風邪引かないから。じゃ、またな」
何故か自信満々に言って、あたしの返事も聞かずに彼は行ってしまった。
雨に濡れながら走って行く彼の背中を、あたしはただ呆然と見つめるしか出来なかったのだった。


「で、その見知らぬ王子様に会いたいわけね?」
翌朝、すっかり晴れた空を窓から眺めながら、あたしから話を聞いたアメリアは訳知り顔で頷いた。
「お、王子様って......そんなんじゃないわよ。ただ、名前も分かんないんじゃ傘返せないから」
あたしのせいで濡れて帰った彼に、一言礼くらい言いたい。
生徒会に入っているアメリアなら何か分かるかと思って話をしたのだが、アメリアは妙にキラキラした目であたしを見つめていた。嫌な予感。
「よし!わたしの情報網を駆使してその王子様を見つけ出して見せるわっ」
むやみにガッツポーズを決めるアメリア。
「......ども」

「で、どんな人なの?」
「えっと......」
彼の特徴をその場でそらんじる。と、聞いていたアメリアはちょっと白けた顔をした。
「なんだ、ガブリエフ先輩じゃない」
「知ってんの?」
あたしの質問にアメリアは目を丸くした。
「知らない方が不思議だわ。ガウリイ=ガブリエフ。二年生で剣道部のエース。学校内の人気者。凄いハンサムなのに誰にでも気さくで、男女問わずファン多し」
つらつらと説明するアメリアにに、あたしは素直に感心した。
「へえー。有名なんだ」
「ゼルガディスさんと仲良いじゃない。知らなかったの?」
「ぅえっ!?」
全然知らなかった。......ゼル友達居たんだ。
「......今物凄く失礼なこと考えたでしょ」
「あはは」
アメリアのじと目にあたしは頭を掻いたのだった。


昼休み、二年生の教室まで行くと、ゼルガディスと彼が廊下で話しているのを発見した。
──あ、ほんとに仲良いんだ。

話しかけようか躊躇していると、他の女子生徒が彼らに声をかける。
「ねえねえガウリイっ」
「なんだ?」
にこり。その笑顔は昨日あたしに向けたものと同じ、優しい笑顔だ。
誰にでも気さくで優しい、というのはどうやら本当らしい。
──ちょっとつまんない。
......って、何考えてんだろ、あたし。

妙な感情を振り払うように頭を振ったあたしに、ゼルガディスが気付いたようだ。
「リナ? 何やってんだそんなとこで」
「......おっ」
隣の彼もあたしに気付いて、楽しそうな顔をする。
「あ、あの。傘、ありがとうございましたっ」
それだけ言って傘を差し出したあたしに、彼は礼を言ってそれを受け取った。
「どういたしまして」
くしゃり。
「え」
まるで小さい女の子にするように、頭を軽く撫でられて、あたしは思わず頭を手で押さえた。
「な、なにすん...っ」
「あ、すまんすまん。なんか頭の位置が手を置きやすくて......」
心なしか青ざめた顔をするゼルガディスの横で朗らかに笑う先輩に、あたしは思わずインバースストラッシュを食らわせてしまったのだった。


「......で、先輩殴ったの?」
「顔じゃなくてボディだもん」
「位置は関係無いでしょ」
呆れた顔をしたアメリアに、あたしはうなだれた。
......ああ、これで後から取り巻き女子とかにリンチされたらどうしよ。...全員倒すけど。

彼にインバースストラッシュを喰らわせた後、あたしは速攻でその場から逃げだした。
......まあ、何か問題が起きたらゼルがメールとかで教えてくれるだろう。
「まったく、リナは手が早いんだから」
「あれは向こうが急に頭撫でたりするからよっ」
あたしは憤慨した。あんなの反則だ。彼はどんな女子に対してもあんな風なんだろうか......。
腹立たしくて、なんだか悔しい。ちょっとカッコイイだなんて、思ってしまったあたしは何だったのか。

あたしの気持ちのように、からりと晴れていたはずの天気が急に雲っていく。
「......ちょっと待てい」
放課後には、またしても雨が降り出していた。今日こそずっと晴れると思っていたのに。
──天気予報のバカヤロー! 

「傘......無い」
あたしは思わず頭を抱えた。折り畳み傘は彼に返してしまったし、降水確率10パーセントに完全に油断していた。
そして今日もあたしは一人。

「あー......もうヤダ」
「よっ」
「!?」
下駄箱のあたりで、あたしの肩を叩いたのはやっぱり彼だった。
「大丈夫か?」
──それはこっちの台詞ですがっ!

「えっ、あ...っ」
さっきの事を謝った方が良いのか、怒るべきか、それより傘が無いから困ってる、とか思い切り殴ったけど、大丈夫なのか、とか。
色々頭の中でぐるぐる回って何も言えないあたしを見て、彼は思い切り吹き出した。
「面白いな、お前さん」
「え」
あまりにからから笑われて、あたしはぽかんと口を開けた。
「......怒ってないの?」
「え、何が?」
──......。
「いや、もういいや」
色々とつっこみたいが、彼はそういう性格らしい。
なんというか、おおらかにも程があると言うか。

「お前さん、傘また無いんだろ?」
また差し出された折り畳み傘。
「リナよ。......先輩、は他に傘持ってるの?」
「ガウリイで良いよ。持ってないけど」
この人は、また濡れて帰るつもりなんだろうか。
「じゃあ良いです」
返そうとしたら、ひらりと避けられた。
「悪いな。オレのばあちゃんの遺言なんだ。女子供には優しくしろってな」
ウインク一つ。
その瞬間、彼は思い切りくしゃみをした。
「ふえっくしょんっ」
「......ぷふっ」
これにはあたしも吹き出した。
「あー、せっかく我慢してたのに」
「やっぱり風邪、引いたんじゃない」
あたしの言葉に、彼は照れくさそうに笑った。
──あ、今の顔。初めて見た。

雨はまだやみそうにない。だけど、あたしの心は少しだけ晴れ間を見せた。
「......ガウリイ」
「ん?」
「傘、一緒に入って帰りませんかっ」
あたしの提案に、彼が目を見開く。
「良いのか?」
「風邪、それ以上悪くしちゃまずいからね」
「ありがとうな、リナ」
嬉しそうに初めて呼ばれた名前に、あたしは胸が高鳴る音を聞いたのだった。


終わり

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お題にちゃんと沿ってるのかちょっと不安です(´・ω・`)


困惑のサイラーグ【16】(ゼロシル)

2013-10-18 00:28:02 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
注意!こちらはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。妄想とねつ造に溢れていますので、苦手な方はお戻りください。
*今回結構ゼロシル色強いので注意?
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シルフィールさんは膝から崩れ落ち、その場にへたり込んだ。
「あなたは......何を」
目を見開き、震えながら僕に問いかける。
彼女からは今までにない程の負の感情を感じて、僕は思わず唇の端を吊り上げた。

「僕は信用しちゃいけないヒトだった、って事ですね」
座ったままの彼女を見下ろして言う。
シルフィールさんは青ざめた顔で視線を僕から鉢植えに移した。
「よく燃えましたねえ、フラグーン」
「......!」
僕の言葉に、彼女は初めて激しい怒りの表情を浮かべた。鋭い視線を浴びて、僕は笑いながら肩を竦めて見せる。
「何が、目的なんですか」
「それは......」
ゆっくり彼女に近寄りながら、僕は人差し指を立てた。
「秘密です」
「!」
「分かってたでしょう?僕がそう答えることくらい」
やれやれ、と肩を竦めて見せると、彼女は唇を噛んだ。

「......ここ数日盗賊が増えていると言うのも、あなたの仕業ですか」
「鋭いですねシルフィールさん。僕はちょっと彼らを刺激しただけですけどね」
「......あの、火事で焼けてしまった村は...」
僕は何も言わずに笑った。それだけで充分だった。
「......」
シルフィールさんは無言で立ち上がり、至近距離から僕を睨みつける。
その怒りの感情に、僕はぞくぞくしてしまう。

「許しませんわ......!」
「どうやって?」
彼女は僕から距離を取り、身構える。どうやら戦うつもりのようだ。僕の強さは分かっているだろうに、それでもか。

──彼女には、まだ絶望が足りない。
それならば。

シルフィールさんが何か攻撃呪文を唱え始めたのを、僕は真正面から黙って見ていた。
彼女はそれに少し驚いたようだが、気にせず詠唱を続ける。
『炎の(フレア)......』
彼女が術を発動させる直前、僕は空間を渡ってシルフィールさんの目の前に出現する。

「!?」

目を見開く彼女の腕を掴んで、それでも呪文の続きを紡ごうとする唇を、僕は自分のそれで塞いだ。
「ん......っ」
彼女は一瞬身体を硬直させたが、それからすぐに僕から逃れようともがく。
「んっ、いやっ......ガウリイ様っ!」
目を閉じたまま叫んだ彼女に、僕は目を細めた。

──気に入らない。
抵抗されるのは分かっていたが、今あの剣士の名が出たことが、何故だか酷く気に障った。
「......こういう場面で他のヒトの名前を出すのはマナー違反ですよ?シルフィールさん」
「誰がっ...!」
彼女は僕の腕を振り払った。......というより、僕が彼女から手を離した。

「ゼロスさ......いえ、ゼロス!」
彼女の目に怒りだけでなく恐怖の色が灯った。目に涙を溜めた赤い顔は、僕の嗜虐心をそそる。
「あなたは魔族だったんですねっ」
「ご名答」
じりじりと後ろに下がる彼女を、一歩ずつ追い詰めていく。
「これ以上、サイラーグに何をするつもりですか!?」
「......それより、あなたの身の安全を心配した方がよろしいんじゃないですか?」
「......っ」
返す言葉がないのか、彼女はまた唇を噛んだ。

圧倒的に僕の有利。彼女には為すすべもない。このまま始末することも出来る。
......だが。物足りなかった。今のままではつまらない。
──シルフィールさんは、まだ完全に絶望してはいないらしい。

「ねえ、一つ取り引きしませんか?」
僕の言葉に、彼女は驚いた顔をしたのだった。


続く

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次回に続きますー!


困惑のサイラーグ【15】(ゼロシル)

2013-10-13 01:32:16 | 困惑のサイラーグ(ゼロシル/完)
注意!こちらはゼロス×シルフィールのカップリング小説です。妄想とねつ造に溢れていますので、苦手な方はお戻りください。
(´▽`)b<ようやくここまで来たぜい!
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行きの半分近い早さでサイラーグへ戻ると、街は不穏な空気に包まれていた。

「おお、戻りなさったか!」
魔道士協会で私達を見つけたサリマンさんは、希望の光を見つけたような声を上げた。しかし、彼は明らかにやつれている。
嫌な予感に内心おののいた。
「良かった!無事だったか」
「どうしたのです。何かあったのですか?」
いつもなら元気に外を走り回る子ども達が見当たらない。街には人気がなく、皆ぴりぴりしている。
「......盗賊じゃよ」
「盗賊?」
「シルフィール殿とゼロス殿が街を発ってから、急に盗賊のやからが街を襲う頻度が増した。この街に繋がる街道でも襲われるケースが増えている。おかしいんじゃよ」
聞けばこの街に入って来る商人や裕福な人間ばかりでなく、老人や子どもまで襲われているという。
「......何故?」
「分からない。だが、あんた方二人が居てくれれば心強い」
ゼロスさんと顔を見合わせる。彼はいつも通りのポーカーフェイスだった。

「ところで、エルフ族の村ではどうだったですかな? フラグーンの種は...」
サリマンさんの一言で、その場が静まり返った。その場にいた皆が振り向き、固唾をのんで私の返事を待っている。
「......本物でした。これで、サイラーグに新しい夜明けが来ます!」
その瞬間、歓声が爆発した。



小さな鉢に種を植え、私達はそれにそれぞれ祈った。──サイラーグの希望となってくれるよう。
芽が出て、大きくなったらこの街の中心に直接植えることになるだろう。
どれくらいのスピードで成長するのだろうか。昔のように、街を覆う森のよいになるまでに、私は生きていることが出来るだろうか。
以前レゾコピーがこの街に現れた時、その障気によってフラグーンは物凄い勢いで成長していた。そんな事がまた起きたら、と思うと恐ろしかったが、昔のようにまたフラグーンの中の迷宮に入ってみたい、とも思ってしまうのだった。

夜。魔道士協会は街の人々を呼んで宴のようなものを開いていた。
依然として盗賊団の脅威はあったが、今日は皆浮かれても仕方がないだろう。
「皆さん、楽しそうですわね...」
私は、そんな中で一緒に騒ぐ気分になれなくて、一人外でフラグーンの鉢植えを眺めていた。

フラグーンは生き物の障気を糧とする為、様々な人が通り過ぎる魔道士協会の玄関に安置される事が決まったのだ。
何重にもシールドが張られ、まだ芽も出ていないのにその存在感を主張している。
私はそんなフラグーンを見つめながら、お父様の事を考えていた。フラグーンはサイラーグの象徴であり、また私にとってはお父様との思い出でもあるのだ。
「お父様......どうか、このフラグーンが立派に育ちますよう、お守り下さい」
目を閉じ、手を合わせる。

その時、誰かに肩を叩かれた。
「こんな所に居たんですか、シルフィールさん」
「ゼロスさん」
彼はしっかり宴を楽しんだようで、右手にフライドチキンを持ってひらひらしていた。
「私、あんまり騒ぐ気分になれなくて...」
「へえ」
言い訳を話す私に、彼は特に何もいわずに隣に並んだ。
しばらく黙って鉢植えを見詰める。

「......ゼロスさん、ありがとうございます」
「?」
「あなたのおかげで、サイラーグの復興もきっと早まります」
頭を下げた私に、彼はいつものように微笑んだ。
「私の亡き父も喜びますわ、この街の神官長だったんです......」
「シルフィールさん」
話を遮って、彼が鉢植えを指差した。
「え?...あ」

「芽、出ましたね。さすがフラグーン、早い早い」
彼の言葉が耳に入らない程、私は鉢植えを凝視していた。
土の上から、緑色の芽が伸びていた。みるみるうちに小さな葉をつけていく。
「......フラグーンが!」
奇跡のような光景に、目が奪われる。
次いで、胸から何かが込み上げてきて、気がついたら涙を流していた。
「お父様......!」
目頭が熱い。涙腺が決壊したように、涙が止まらない。

「良かったですね。でも」
ゼロスさんは優しく笑う。
彼は私の涙をそっと指で拭った。
「まだ泣くのは早いですよ。シルフィールさん」
どきり、と胸が高鳴った。今まで意識していなかった心臓の音が、不意に大きく聞こえてくる。
「......そうですわねっ」
顔が赤くなるのを感じて、目を伏せた。
──なんでそんなっ!私にはガウリイ様がっ......なんて。

「ほんとに、早いですよ。シルフィールさん」
そのとき耳元で囁かれた声に、私は何か不穏なものを感じて顔を上げた。
「ゼロス、さん?」
彼はいつものように笑顔だった。

ぱちり、と音がして、何かが燃えた。
......いや、何かじゃない。
今出たばかりのフラグーンの芽が、音を立てて燃え上がり、消えた。
「あ......ああ」
「ほら、絶望で涙するのは、今からでしょ?」
彼の顔はあくまでも笑顔だった。


続く

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ようやく、ようやく...!書きたかった場面が書けました(>_<)