頑固な、『弱さ』
Nの家は一見『普通の家庭』。
父親と母親、それと、祖父母、弟という構成で、
旧家が並ぶ一角に、立派な家を持っていた。
が、実際は、父親はほとんど働いたことがなく、
母親も同様。
Nがいうには、支配的な祖父のもと、
皆、逆らうことも出来ず暮らしているのだということで、
深い事情はおそらく、まだ中学生のNにもわからなかったのだろうが、
生活に困る、という様子でもなかったことから、
おそらく祖父母に、余裕があったということだったのだろう。
N自身は親に対してよりも、
威圧的な祖父の存在を忌み嫌って、道をそれた感じだが、
学校でもまた、弱々しく、可愛らしい感じが、
校内の悪い女子勢力に睨まれて、
私やR、Mとつるむようになったのだった。
絵がうまく、ユーモアがあって、新しいものが好き。
内向きのパワーは、他人には理解され難いものだったが、
もしあれが、違う形で放出されたなら、
彼女のその後もまた、違うものになったのだと思う。
しかし、私と同じ高校を受験するも叶わず、
少し離れた学校へ通い始めた頃から、
彼女は自分の居場所に迷い始め、
タチの悪い男の間を幾人も、渡り歩くようになった。
そして事故に巻き込まれ、
大怪我をし、まるで自家中毒のように、
行ってはいけない方向へ、魅入られたように進んでいった...
ある日突然、
「Mと同様、風俗嬢になった」
と、悪びれもせず、
経験談を交えて話してきたNの『ユーモア』は。
かつてのそれとは、ずいぶんと違うものになっていた。
純粋培養の、
怖さを知らない無防備さが。
彼女に、『献身』を誤解させたのだと思う。
ボロボロになれば、『役に立てた』と思えたのか。
私がNと、最後に話した際に聞いたのは、
若いうちに父親が亡くなったこと。
未亡人である母親に、すぐ恋人が出来たこと。
彼女が歳下の男に『尽くし続けている』ということだった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます