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詠う鯨 - Whale that sings -
ニッサンがルマンを制覇する時 (高齋 正)
2007-05-29 / 読書
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70年代中盤の排ガス規制対策のためレース活動を中断していた日産が,フェアレディZのフルモデルチェンジにあわせてレースを再開する。
チャレンジするのはルマン24時間レース。ドライバーは一般公募。
マシンはZのシルエットに似せたR384。栃木にサルトサーキットそっくりのテストコースを造り,マシンを仕上げ,ドライバーを鍛える。
レース本番,3台エントリーしたマシンのうち,2台が予選中に大破。残る1台と予備車の2台で24時間後のゴールを目指す。
結果は本タイトル参照。
レース開始まで,トラブルらしいトラブルが無い,が,かえってテンポよくレース編に入れる。
レース編では,まあ,お約束っぽく初っぱなにトラブル。しかし,走り出してしまえば,これまたテンポよくゴール。
本書は、Zとしては2代目のS130が登場した78年が初版。
日産のルマン参戦は,86~90,95~99年。本書が書かれた当時は,日産がルマンを走るのは夢のまた夢だったと思われる。
フィクションではあるが、当時の筆者の願望も含めて、良く書けているし、読んでいて燃える。
「新型Zは途中までリトラクタブルライトで設計していたそうですよ」
「初めから固定式で設計されている。スタイルを読めばわかる」
S130はS120からキープコンセプトのFMCだ。ロングノーズ,ショートデッキ,丸目2灯。
3代目のZ31は,奇しくも(ハーフ)リトラクタブルになってしまったが。
個人的には2代目が「Fairlady」が最もよく似合うと思っている。
「形こそZに似ているが、中身はR383系のものだ」
現在のGTカーのように,市販車を改造して(と言っても現実には全く別物)レースカーにしているのではなく,最初からレース用として制作されたR384。
その後にデチューンしたロードバージョンが発売される。
現在ではあり得ない販売手法だな。あえて言うなら,ランエボとインプSTIか。
マクラーレンF1もそうだったけかな。
「ニッサンの自動車は、人間優先の思想でつくられている。マシンに人間が合わせるのではなく、人間に合わせてマシンを作っている」
R384は2ペダル3速AT、ABS、エアコン付きなのだ。
スプリントではなく、24時間の耐久レースに勝つには必要な装備と判断したからだ。
『技術の日産』、あながち想像だけではないような気がする。
しかし、現在の日産は、レースと言えばスーパーGTとパリダカくらいか。
ルマンとラリーフィールドに戻ってきてくれることを期待している。
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