不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

La caduta della Manna

2008-01-08 07:23:51 | アート・文化

モーゼに率いられてエジプトでの奴隷生活から脱出、
永住の地を求めてカナンへの旅を続ける
ユダヤ人たちの砂漠放浪の旅の間の
彼らの飢えを救ったとされる食べ物がマンナ。

旧約聖書「出エジプト記」に書かれたエピソードで
「La caduta della Manna(空より降るマンナ)」もしくは
「La raccolta della Manna(マンナの収集)」と呼ばれます。
宗教絵画としても描かれるテーマのひとつ。

エジプトを後にして砂漠の旅の間、
途中で食料が不足してくると
ユダヤ人たちは口々に
引率者であるモーゼに愚痴をこぼし始めます。
ちょうどシナイ半島の南にある
シンの砂漠を歩いていたときのことです。
それを受けてモーゼは祈りを捧げ、
その結果神から与えられた食べ物がマンナ。
夜の間に降りた露が溶けていくと、
そこに小さな粒状の物がびっしりと敷き詰められ
白く薄い層を成していて、
それを見て人々は「これはなんだろう」と首を傾げます。
モーゼはそれに対して
「神が我々に与えてくれた食べ物です」と答え
収集の規則を指導します。

それぞれが一日に必要な分だけ収集することができ、
必要以上に収集した者の壷やかごの中では
マンナは虫に姿を変えてしまうといわれます。
ユダヤ教での安息日である土曜日には収集をしないため
神は金曜日には普段の二倍の量を与え、
二日分の収集が許されました。
露が溶けていくようにマンナも溶けてしまうので
急いで規定量を収集しなくてはいけませんでした。

実際の自然界に存在する食べ物としては
コリアンドロという説もありますし
昆虫の排泄物であるという説もありますが
40年にも渡る砂漠の放浪の旅の間、
欠かすことなく与えられたということもあり
超自然のものと考える説もあります。
いずれにしても神から与えられるものということで
「Pane degli Angeli(天使のパン)」とも呼ばれます。
蜜を多く含む食べ物で水に溶かして
甘い飲み物とすることもあったようです。
口にする人によって、その味は異なり、
それぞれの感想が異なります。

Jt_manna
1564年から1587年にかけて
ヴェネツィアのサン・ロッコ大学校のために
ティントレットが描いた「空より降るマンナ」では
オスティア(ミサの際に信者が受け取る聖体、
白いオブラート)のような
白い丸いものがまるで雪のように空から降り注いでいます。
神から与えられたものであることを示すように
天空には明るい光が差し込み
偉大なる神の姿が光の中に描かれています。
画面右側に後ろ向きに描かれているのがモーゼで、
画面中央に向けて腕を差し出し
驚嘆しているユダヤ人に指導をしています。
驚きの表情の人々の上に翻る布は幕屋。
旧約聖書の中ではよく記述されるもので
必要に応じて神が降りてくるときに現れるテントのことで
後のエルサレム神殿の原型とされています。
また最後の晩餐のときに使われる
テーブルクロスの暗示であるとも言われています。

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