不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Le due anime della diaspora ebraica

2010-07-06 14:02:30 | アート・文化

イタリアにはユダヤ系の方もかなり多く暮らしており、
フィレンツェをはじめ
各地に立派なユダヤ教寺院も建てられています。

ヨーロッパ全土にユダヤ民族が四散していますが
大きく分けると2つの系列になります。
一つはAshkenaziti(ユダヤ語を解すドイツ系ユダヤ人)で
北部、ロシアを含む東部ヨーロッパに広がり
ユダヤ文化の創設にも深くかかわりがあるとされています。
彼らは9世紀ころからドイツ周辺で共同体を形成し拡張、
そしてその約1000年後にドイツ・ナチスによって迫害され
逃げ逃れた彼らの多くはアメリカにわたったり
イスラエルに戻ったりしています。
もう一つは南ヨーロッパに広がった
Sefarditi(スペイン系ユダヤ人)で
スペイン、ポルトガル、フランス辺りに暮らしています。
彼らは1492年にスペインから、
1497年にはポルトガルから追放され
オスマントルコ支配下の中東諸国に戻ったり
一部オランダや北部アフリカに逃れたりしています。
そして、その二つの系統とは別にイタリア系ユダヤ人が
イタリア国内に暮らしています。
彼らも第二次世界大戦中には
ドイツ・ナチスによる迫害を受け
アメリカに渡った人もかなりいるといわれています。

それぞれの土地に落ち着いて以来、
各国の人々と交わり、
まったく異なる歴史と
文化を積み重ねてきたそれぞれの系統は
いまや既に共通点を持ち得ないであろうというのが
これまでのユダヤ研究の主幹でした。
しかし、この二つの系統の人々の染色体調査の結果、
どちらもその出発地点が同じであることがほぼ確認され、
その出発地点がイタリアであることがわかりました。

今回の調査結果を元に、
彼らはともに
紀元70年にVespasiano(ヴェスパジアーノ帝)時代に
エルサレム侵攻が行われたときに、
かの地からイタリアに渡り、
そこを起点にして
ヨーロッパに分散していったという説が確立されました。
つまりイタリア系ユダヤ人が他2系統の大元であり、
その期限は古代ローマ時代の
エルサレムからのユダヤ民族流入である
という考え方の裏づけができたのです。

2系統に属する人々の30%はヨーロッパ民族の血を分け、
かつ60%は中東諸国出身の祖先を持つことが
染色体の調査で明らかになり、
彼らはお互いに4親等5親等程度の従兄弟関係にあり、
非常に近い親戚関係であることもわかりました。

未だに暗い歴史を背負うイメージの強いユダヤ民族で、
まだまだ謎のヴェールに包まれた部分も多いようですが
こうして少しづつ彼らの歴史が明らかになり
理解されていくことを願って。