不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Comprensione

2010-07-29 19:19:24 | 日記・エッセイ・コラム

郵便局に行くと
いろいろなドラマを垣間見ることができて楽しいです。

イタリアは郵便局だけじゃなくて、
公務員がいるところに行くと結構笑えます。
実際は腹立つことのほうが多いのですが、
怒っても仕方ないので
個人的に笑うようにしているだけなのですけど。

仕事に差し障りがあってはいけないと気を利かせて
出勤前に郵便局に行くようにしていたんだけれど
朝行くと、必ず「コンピューターの具合が悪い」ので
すごく待たされて
朝から精神的によくないので
最近は朝出勤前に行くのはやめました。
私がイライラしなくても
同じように出勤前に来ているのだろうなという
ほかのお客さんのイライラが
こっちにまで影響しそうなので。

仕事の一部で郵便局に行かざるを得ないわけだし、
勤務時間中に時間見つけていけばいいやと。
だって会社の口座に
売上金を入金するだけ、それだけなのですから
日本だったら郵便局に着いてから
ものの5分も経たずに終わりそうな作業です。

でも、ここはイタリア。
オフィスからは徒歩5分圏内に2軒の郵便局がありますが
駅前のはいつも混んでいるので
もう一軒のほうへ行くようにしています。
空いているからと思っていくのに、
これが罠だったりすることがしばしば。
この単純な作業を済ませるまでに
30-50分は普通に費やすことになります。

まず、番号札を引いておとなしく待っていても
自分の前に
とんでもない爆弾を抱えたお客さんが3人もいれば
6つある窓口のうち3つも開いている窓口だって
どこも塞がってしまって完全に業務ストップ。

何のために6つも窓口があるのかわからないくらい
いつも、どんなときも2-3の窓口しか開いてません。
混み合ってきたら奥から別のスタッフが出てきて
「こちらへどうぞぉ」なんてサービスは
日本じゃないのでありません。

で、今日も待合室には私のほかに1人しかいないのに、
辛うじて開いていた窓口3つは
既に十数分は格闘しているであろうと思われる
外国人のお客さん3人が占拠しています。

ひとつは滞在許可証の申請の中国人。
ここ2週間ほど
フィレンツェ市内のどの郵便局でも起きている事態なのですが
郵便局で申請しなくてはいけない滞在許可証の申し込み、
そのときに発券しなくちゃいけない
キラキラした領収証が在庫切れ。
滞在許可証の申請手続きは
この領収証がないと始まらないので
郵便局側は「領収証がないから受付しません」と
素っ気ない対応を続けています。
まず、そんなに大事な領収証の在庫を切らすなよといいたいし
内務省の印刷が間に合ってないらしいのですが、
その時点でおかしいと思ってほしいよ、イタリア政府。
ということでこの窓口のおばさまは
比較的丁寧に「領収証がないから受付できない。
来週には届く予定なので来週来て。」と伝えたのですが
相手はイタリア語が不自由な外国人。
意図が伝わらずに悪戦苦闘。
こちらは10分ほど格闘してわかってもらえたようでなにより。
で、私の前に待っていた方の番となりました、めでたし。

二つ目の窓口には
アフリカ系の肉体労働者のお兄ちゃんが
祖国へ出稼ぎの一部送金手続き中。
でもこのおにいちゃんもイタリア語が不自由な上に
どうもアルファベットの読み書きができないらしい。
持ってきていた送金フォームは
同僚か誰かに書き込んでもらったのか
必要事項だけは書けるのか不明ですが
とにかくフォームに記載しなくちゃいけない
送金金額の数字とEUROが書き込めないで悪戦苦闘。
そんなの窓口のおばちゃんが代理で書き込んでやれよぉと
思っていたら
お兄ちゃんも同じことをたどたどしいイタリア語で言っていた。
しかし、おばちゃんは
「あぁ、だめなのよ。
後で問題になるから申込人本人が書かないとだめなの!」
ということで
いちぃ、はちぃ、ぜろぉ、ぜろぉ、かんま、ぜろぉ、ぜろぉ
それから
えぇ、うぅぅ、えっれぇぇ、おぉぉぉ。
と必死に兄ちゃんに書かせようとしてます。
この戦いも約10分。
私はアカノタニンなのに、
お兄ちゃんが祖国で待つ家族に
1800ユーロも送金していることを知ってしまい
ドンだけ稼いでいるんだよ、
とひとり突っ込んでしまいました。

もうひとつの窓口にも
送金手続きらしき中国人のおばちゃん。
1500ユーロ以上の送金をするには
Codice Fiscaleが必要なのですが
ってその窓口で係りのおばちゃんが説明しているのを聞いて
私も今日初めて知りましたけどね。
まぁ私は祖国で待つ家族に送金できるほど稼いでなくて
郵便局から海外送金なんかしないから、普段。
で、そのCodice Fiscaleを持ってないと
中国人のおばちゃんが言ったものだから、さぁ大変。
窓口のおばちゃんは
「あなた毎回同じこといわれて、毎回知らないっていうけど
持っているじゃないCodice Fiscale。
覚えてないならどこかにメモしてくるか
カード持ってくるか、もう誰か家族に電話しなさいよ!」
かなり怒り心頭。
毎回のことなんだろうなぁと想像がつきますが
この中国人のおばちゃんもイタリア語がかなり不自由なので
ぜんぜん分かり合えない二人。
会話が平行線のまま5分経過。
ようやくCodice Fiscaleが必要なのだということが伝わったのに
中国人のおばちゃんは
「今回だけそれはなしでお願い」と
無理なお願い攻撃に移りました。
窓口のおばちゃんはおとなしく静かに切れまくり!!
そして
「もう仕方ないからリクエストキャンセルにするわよ」
と最後通牒。
そのキャンセル手続きをしている最中に
中国人のおばちゃんがかばんの中から
Codice Fiscaleを取り出して
「あ、ここにあったみたいなの」って。
見ていた私は思わず笑ってしまいましたよ。
まじですかぁ?
あれだけ持ってない、知らない、
今回はなしでお願いって駄々こねてたじゃないか!
窓口のおばちゃんも深いため息をついて
「でももうキャンセルしてしまったから
もう一度同じフォームを書き直して新規リクエストして」
ご尤もです。
しかし、中国人のおばちゃん
これまた読み書きが不自由!!
もういつになったらフォーム書き込めるのか
神様にもわかりません。

私は自分の番が回ってくるまで
毎回こうした意味不明な
終わりなき闘いの一部始終を見せられているわけです。
で、おわかりかと思いますが
みんなそれぞれ結構プライベートな手続きをしているのに
みんな声がでかいので
何もかも待合室中に筒抜けなのですよ。

まったくどんなもんだい!

で、私の手続きはというと
3分もかからないはずなのに
のろのろおばさんに当たってしまったばっかりに
入力に2分、紙幣数えるのに3分、
領収証を印刷して私が受け取るまでに2分。
その途中に大雨になり
こののろのろおばさんったら
「あら、すごい雨ねぇ」と暢気に
私に世間話をふってきた。
私も仕方ないので「通り雨でしょうけどねぇ」と答えるや
「あ、置き傘あったかしら」と
おもむろに窓口を立ちスタッフルームに行ってしまいました。
私の手続き完了してからでも
傘の確認はできるでしょうに・・・。
素敵すぎ。

結局12:10にオフィスを出て
戻ったのは12:57でした。
徒歩5分のところにある郵便局での出来事。

毎回思うけど、
移民が増えてきて
こうしたイタリア語が不自由な外国人も多くなってきました。
中には識字率の低い国からやってくる方もいるし
窓口のおばちゃんたちも大変だとは思うよ。

でもねイタリアのすごいのは
イタリア語のできるイタリア人でも
同じくらい窓口で時間がかかっているってことなのよねぇ。
もう窓口でどんな小難しい取引が繰り広げられているのかと
興味津々にならざるを得ないくらい。
それに比べると私のお願いしている作業って
なんかちっぽけなもののような気がするのですわ。