不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il finto Botticelli e altri falsi

2010-07-14 19:11:50 | アート・文化

本物と区別ができないくらいの贋作だったら
それはそれで価値もあるんじゃないかと思ったりもしますけど
ニセモノはやっぱりニセモノだったりします。

作家だっていつも完璧な作品が作れるわけじゃないだろうし
ここは弟子が描いただろうとか言ってみたものの
本当は本人の筆によるものだったりするかもしれない。
そんなの専門家がじっくり腰据えて
綿密にチェックしなくちゃわからない。

だから絵画の楽しみ方は
もっと自由であっていいと思うのだけど。
本物じゃないと評価してもらえなかったり、
展示もしてもらえなかったり。

イギリスのナショナルギャラリーだって
贋作買っちゃうんですから。
1874年のこと。
当時のナショナル・ギャラリーの責任者は
個人コレクターから2枚の「ボッティチェッリ」の作品を購入。
このうち1枚は本物のボッティチェッリ作(Venere e Marte)、
もう1枚は贋作(Una Allegoria)。
もちろん当時贋作だなんて夢にも思わず
なんと贋作に本物の2倍の金額払ったらしいですよ。

Allegoria_2
ニセモノ
女性の足が不自然だったり
お腹のぽっこりが「え?」ってところにあったり
髪型が手抜きだったり。
そういわれればって気はしますけど、
「いや、ボッティチェッリだよ」といわれれば
そう信じたくもなるほど画風は良く似ているよね。

Venere_marte
本物。
確かに安心して見られる気はするよ(笑)。
でもさマースの下からひょっこり覗いている
サティロが変だっていえば変じゃない?

だから本物かどうかなんてやっぱり素人にはわからないのだ。

1800年代終わりから19世紀にかけて
ナショナル・ギャラリーが購入した作品には
いくつかの贋作が含まれていることが
後の研究調査で明らかになったのです。
で、上記のボッティチェッリをはじめ
レンブラント、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、
アンドレア・デル・ヴェロッキオなどの作品とされていた
ニセモノを集めて9月末まで展示しています。
実に6部屋分にものぼる作品群は
それはそれで見応えがあるんじゃないかと思います。

もちろんその逆もありうるわけで
ずっと贋作だといわれてきたものが研究の結果
本物だったよ、という作品を展示する部屋も1部屋。
2年にわたる研究の末、
本物であると確定された
ラファエロの「Madonna dei garofani」とかね。

Madonna_dei_garofani
ま、ラファエロといわれればラファエロだよね。
ラファエロです。

ちょっと休みもらって見に行こうかな、ロンドンまで。
面白そうだよ。