夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ホテルローヤル』

2020年12月03日 | 映画(は行)
『ホテルローヤル』
監督:武正晴
出演:波瑠,松山ケンイチ,余貴美子,原扶貴子,伊藤沙莉,岡山天音,
   正名僕蔵,内田慈,冨手麻妙,丞威,稲葉友,夏川結衣,安田顕他
 
109シネマズ箕面にて。
 
原作は桜木紫乃直木賞受賞作。
読んだのは3年以上前。そのときのレビューはこちら
凍てつくような寒さを感じたのは覚えていますが、
映画版は武正晴監督だから、笑えるシーンもあります。
 
北海道。釧路湿原を眺めるラブホテル“ホテルローヤル”。
経営者・大吉(安田顕)は毎日酒浸りで、切り盛りするのは妻・るり子(夏川結衣)。
一人娘の雅代(波瑠)はここを出て行くべく札幌の美大を受験するが不合格。
そんな折、ダメ夫に業を煮やしたか、るり子が出入り業者の若い男と駆け落ち。
致し方なく雅代は家業を継ぐことにする。
 
原作はオムニバス形式になっていました。
映画版も導入部は原作と同じ。
すでに廃業して今は廃墟と化したローヤルに忍び込むカップル。
男性のほうはカメラマン志望で、ここで女性をモデルに撮影するつもり。
ファインダー越しに在りし日のローヤルの姿が映し出され、
ちょっとファンタジーのような作り。
 
そこからローヤル営業時へと時代が戻ります。
中年から熟年に差しかかろうかという夫婦(正名僕蔵内田慈)、
自称ホームレス女子高生(伊藤沙莉)とその教師(岡山天音)など、さまざまなカップル。
ネタバレになりますが、そのうちのあるカップルがローヤルで心中し、
客が寄りつかなくなって廃業に至る日までの様子が描かれています。
 
原作者の桜木紫乃の父親が実際に同名のラブホを経営していたことがあり、
掃除などを手伝わざるをえなかった彼女の実体験に基づいているそうです。
 
確か原作ではどのカップルが心中したのかはっきり書かれておらず、
最後にそうだったのかとわかるひと言があったような。
ものすごく凹まされたのですけれど、映画版は幸せな最期だったように思えなくもない。
 
家業を継いで経営者となったものの、
いつまで経ってもラブホを外側から見る部外者の意識があった雅代が、
松山ケンイチ演じるアダルトグッズの営業マンに恋心をを打ち明けたとき、
傷ついて胸の痛みを感じたことで当事者になれたと言う台詞が好きです。
 
エンディング曲は、ヤマハのポプコン出身、
柴田まゆみの1978年のヒット曲“白いページの中に”のカバー。
これが映画の雰囲気とドンピシャで素晴らしい。
 
冷たいけれど温もりも感じられる作品。
きちんと傷つくことで、生きていることを実感できる。

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