夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ひとくず』

2020年12月10日 | 映画(は行)
『ひとくず』
監督:上西雄大
出演:上西雄大,小南希良梨,古川藍,徳竹未夏,堀田眞三,
   飯島大介,田中要次,木下ほうか他
 
テアトル梅田へ観に行くかどうか迷っていた本作。
児童虐待をテーマにしているから相当重そう。
耐える自信がなかったのでパスするつもりでいたら、
イオンシネマ茨木で上映中。う~む、終業後に簡単に寄れるとこ。
ここからなら帰りも15分。行っときます。
 
上西雄大監督は、関西を拠点に活動する劇団“10ANTS(テンアンツ)”の主宰者。
自ら主演を務めて撮った本作が海外の映画祭でも高い評価を受けました。
お客さん、よく入っています。ちょっとびっくりするくらいの入り。
 
冒頭はやっぱり観に来たことを後悔するぐらいの辛い映像。
幼い少女がマンションの一室に閉じ込められています。
ゴミだらけの部屋に食べるものは何もなく、電気すら止められている。
外から鍵がかけられて、泣き叫んでも少女は外に出られない。
手の甲には「根性焼き」の跡。辛すぎる。
 
前科者の金田匡郎(上西雄大)は空き巣を生業としている。
ある日、彼が入った部屋の片隅に、怯える幼い少女がいた。
彼女は小学生の北村鞠(小南希良梨)。
母親の凛(古川藍)は一人娘を閉じ込めて、男と旅行。
その男から鞠は日常的に虐待を受けているらしく、
胸元にはアイロンを押しつけられた跡まであった。
 
自身も少年時代に母親の男から虐待を受けていた匡郎は、
鞠のことを放っておけず、食べ物や服を買い与える。
 
凜が男と帰宅。
母親とはおよそ言えない態度にキレた匡郎は男を刺殺。
半狂乱になる凜を脅し、男の死体を埋めさせると、
そのまま凜と鞠のいる部屋に居座るのだが……。
 
『ミッドナイトスワン』のように、虐待された子どもを引き取って
自分で育てる話だろうと思っていたら違いました。
虐待野郎を殺して自分は居座るって、想像できないことでした。
 
匡郎は決して褒められた奴ではありません。
とにかく口が悪いし、誰彼となく喧嘩をふっかける。
粗野そのもので、教養なんてものはどこにもない。
けれど心根は優しくて、だから鞠は彼のことを信頼しきっている。
 
凜も親から虐待を受けていた被害者。
愛されたという記憶がないせいで、自分の子どもをどう愛せばいいのかわかりません。
どうしようもない女だった凜が、鞠に穏やかな表情を見せ始めるときは
鑑賞している私たちも心から安心することができます。
 
このような虐待を本当に受けている子どもが世の中には居るし、
こんな酷いことを平気でする親やその同居人が居る。
でも、そんな酷い奴の中には、接するひと次第で変われる人間も
もしかすると居るかもしれない。
 
Vシネを観ているかのようなどデカい音楽と演出に
ちょっと過剰かなと思わなくはないものの、心に突き刺さる作品でした。

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